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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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塾の開始

 この前はクルーズンの司教に会ってきた。


セレル村の教会の長のロレンスもクラープ町のサミュエルも司祭であり、つまりそれほど出世しているわけではない。


ところがクルーズンとなると大都市であり、その教会の長は司教であり、かなり位階が高い。


ロレンスもサミュエルも世間ずれ(世間にもまれてずる賢くなっていること、世間からずれているは誤用)していないが、司教となるとそうもいかない。


だいたい有象無象の有力者たちと付き合わなくてはならないのだ。2人のような気軽に接しやすい人物ではない。




 教会の外見も内装も司教の法服もこの時代としては立派なものだが、俺はもっと豪華なものを見たことがいくらでもある。


宗教でそんな豪華さが必要なのかどうかはわからないが。もちろん多くの信者に手早く宗教のありがたみを見せるには必要なのだろう。


ああいう職人仕事は、時代が進んだことに伴う技術がかなりものをいうところがあって、技術があれば誰でも何かよさそうなものを作ることができる。


俺の場合は前世の方がよりその技術が進んでいたためか、それほどすごいものには見えなかった。


芸術品として見るならば作者がそれに込めた「何か」があれば心を打つのかもしれないが、そういうものは素人にはなかなかわかりにくい。





 会見については短い時間、儀礼的な話をしただけだが、いちいち疲れた。要するに塾をするのに司祭のバイトを認めてくれと言いたかっただけなのに、とにかく話が回りくどい。


助祭は金がないから仕事があればうれしいでしょとか、どうせ暇なんだし金出すからこちらの仕事を手伝ってくれとかいうわけにはいかない。


それでもとりあえずは当初の目的の助祭を教師に使うことは認められたようだ。


商人相手なら直接的なやり取りができるが、聖職者相手だとそうもいかない。その辺の機微は俺自身が教会育ちのためか人よりは少し知っている。


ただそういうやり方は場合によっては聖職者の側が損をしてしまう気もする。何とかならないものか。


寄付することについてもいちおう「可能な」寄付はすると言っておいたが、それはおいおいしていけばよいだろう。可能でないこともあるだろうし。まだこちらでは大して儲けている商会というわけでもない。




 別に教会の教えを広めたいわけでもない。あの神がありがたくないことは身にしみてわかっている。


いやもし万が一間違って、そんなことは到底あり得ないと思うが、針穴にクジラを通すような困難が起こってあの神がありがたかったとしても、教会がありがたいかどうかは別問題だ。


それはともかく俺が欲しいのは聖職者の読み書きの能力だ。あれは活用しないと損だ。



 だいたいあの神ときたらこの前も

「ここかゆいの? うん? ここかくの?」

「にゃんっ!」

クロの教育的指導が入る。


「そうでした。首ですよね」

とまあ、こんな調子だ。


猫なんていつもかいて欲しいところは異なる。威厳の点では例の司教の方があるんじゃないかと思う。




 塾については各家庭の小さい子を預かる需要がある。昔の日本もそうだが専業主婦がいない。女性でも家内で労働に従事している。


そうすると子どもがある意味邪魔なのだ。教会があればそこにやることもできるが、そういう場所ばかりではない。


俺の作る塾は教えているのも助祭が多いので、結局のところ教会の寺小屋の支部のようなものだ。ただし授業料を定額で取るところは異なる。


この辺は商人だから仕方がない。金持ちが余計に払う布施方式も悪くないと思うが、商人相手には余計に払わないような気がする。教師役の助祭にかってに付け届けする分には構わないけれど。




 教育に当たってはクラープ町の方で作ったテキストがあるので、それをつかいまわす。ノウハウとかテキストとか使いまわすことができればよりこちらも効率的になる。


部数がそれなりにあったので木版で印刷したが、大きくなるようなら活版印刷にしてもよいかと思う。そんな調子で塾がスタートした。


なお洗濯事業の方では徒弟が必要になったため、そちらは無料で読み書きを教えることにする。これも将来のための投資だ。


 だんだんと読み書きの必要性が増えている状況で、しかも人が流入しているためか、けっこう需要はあるようだ。これならもっと支店を増やせそうな手ごたえだった。





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クルーズン司教の執務室にて

助祭と司教が話している。


「司教様、フェリスは司教様の威厳に恐れ入っていたようですね」

「そうみたか?」

「司教様のおっしゃることにいちいちうなづいていました」

「あれはうなづいていたのかのう?」

「そうではないと?」

「うむ。なんと言うか、いちいちそうは思っていないが、そう言うことにしておこう言われているように感じられてな」

「司教様のおっしゃることに感化されて布施もしてもらえるのかと。クラープ町でも教会にずいぶん布施をしていたそうです」

「そうなんだが……。何か教会で物でも買うような様子でな。別にそれならそれで構わんが」

「はあ、そのようなものでございましょうか。あのような子どもが……」

「それがなあ、何か子どもと話した気がせんのじゃ。いやもちろん目の前にいたのは子どもだが」

「ええ、確かに子どもでした」

「それがなんというか、いちいち言葉尻をとらえられないように言い回しに気をつけているというのか、子どもらしくなくてな」

「そういえばあれでクラープ町では商会の長であるとか」

「どういうことか調べてみないといかんな」

「はあ、それではサミュエルやロレンスや助祭たちにも聞いておきましょう」

「そうしておいてくれるか」

「はい、かしこまりました」


司教は何か考え込む様子で、助祭はそんな司教に何とか話を合わせていた。

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