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シンディ(上)

何回か使ってシンディとマルコの紹介です。

 「ほんと、あまちゃんね」


シンディのいつものセリフだ。本名はシンシア・カロリス。数か月だけ俺より上でもうすぐ8歳になる女の子だが、背は俺より高い。


ロレンスの寺小屋に通い、歳が近くよく話す相手だ。父親のレナルドは剣術師範で、シンディも父親の手ほどきを受けている。


シンディには兄もいるそうだが、いまは修行中で村にはいない。髪はブラウンでショートにしている。皮膚の色は浅黒い。


目が少し吊り上がった感じもあるが、成長したら美人になりそうだ。




 剣が出世の道の一つである世の中では、剣術を習う人も多いし、男の子の遊びにもチャンバラが入ってくる。


そしてチャンバラは日本より荒っぽい。戦争もあり魔物もいて、人がたくさん生まれてたくさん死ぬ世の中では、子どもが少しくらいケガしても気にならないのだろう。


その荒っぽいチャンバラでシンディとの対戦はこちらの全敗だ。たまにいい感じになることもあるが、最後はひっくり返される。


今日も一本とれそうなところまできて、結局跳ね返されて冒頭のセリフとなった。




 シンディが勝つのも当然で、まず手数が多い。それから剣の振りが鋭い。ビュゥンと気持ちのいい音が鳴る。フェリスではこうはいかない。


さらに場数も踏んでいる。そのためか相手がどんな状況か見づらいところでも感覚でわかるらしい。


だいたい幼子のころから小さな木剣をもって、3歳のころには素振りをしていたというのである。一朝一夕についた実力ではない。


なお村で会う子どもで同じ年はシンディとマルコだけだが、ちょっと上下にはもう少しいるところ、シンディは強すぎてもはや誰も相手にしたがらず、なぜか俺ばかりが相手をさせられている。


クロなら無敵のチートがついているから対戦になればシンディ相手にも勝つだろうが、そもそもクロはシンディに近づきたがらず、対戦にもならない。




 なおもう1人よく一緒にいるマルコは俺より弱い。商人の息子だけに剣をとるつもりはないらしい。この辺は冒険者になるのもいいかなと思っている俺とは違う。


そうはいっても子どもの遊びの中でチャンバラになることは多く、マルコも付き合わされる。俺から見てもへっぴり腰がよくわかる。


シンディから見れば俺もこんな感じなんだろうけど。それでマルコの方はほどほどで切り上げてしまう。


俺のようにシンディに徹底的に付き合わされることもない。




 シンディはもちろん剣の道に生きたいらしい。将来の夢を語り合った時のことだ。いつもながら俺は不労収入と平和なスローライフを頭に置いていた。


「うーん、そこそこ働いて、いや働かなくてもいいけど、クロをなでながらそこそこの生活ができればいいや」

「まったく夢がないわね。そこらのおっさんみたいじゃない」


確かに子どもの言うことではないが、そこはまあ中身がおっさんだから仕方がない。神とやりとりするおっさんはそこらにはいそうにないけれど。


そうか夢や希望についてもこの年代の子は考えるのか、考えておかないといけないな、などと思う。


「そういうシンディは何になりたいの?」

「王国の騎士団長になる」

「騎士団は女の人はだめじゃないの?」

「だから私が圧倒的な実力を見せつけて騎士団に入るの」

「まあなかなか難しそうだよね」

「やる前からあきらめない。どうしてもだめなら冒険者になってA級パーティを率いるのもいいわね」


冒険者か。それならこちらももくろみにないわけでもない。シンディと一緒だったら率いるのはシンディだろうな。


その時までシンディといっしょにいるかわからないけれど。そう考えるのはやはり俺がおっさんだからだろう。


子どもの頃や若い頃はずっと一緒だと思っていた人があるときを境に離れてずっと会わなくなることを何度も経験している。


「そうだね。冒険者もいいね」

「あら、少しはやる気になった?」

「うん、自営業の週休3日の9時5時ホワイトのクロなでなでつきの生活をしていけたらいいなあと」

「なにかよくわからないわ」

「つまり1週間に3日は休んで、朝9時に始めて5時には終わって、きついとか危険とかなくて、おうちに毎日帰れる冒険がいいなあと」

「そんな冒険あるわけないじゃない。冒険者なら朝から晩まで、しかも旅になればずっとよ」


シンディの言うことはもっともだけど、これは譲れない。しかもチートを使えばできる目算もあるのだ。



いつも応援ありがとうございます。

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