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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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クルーズンでの拠点探し

 クルーズン進出を具体的に進めることにした。


クルーズンでは前から青果商のブリュール氏とはブドウを売る取引があった。とりあえず行く前に手紙を書く。


それから実際に馬車に乗ってクルーズンに出て、さっそくブリュール氏と話をする。


「いよいよクルーズンに進出されるとのことで、これからは商売敵ですかな?」

「いえいえ、うちは行商の何でも屋でして。むしろ仕入れをお願いしたいくらいです」

「そうですか。それはありがとうございます」


あえて言えばセレル村からブドウを持ってきたとき自分で売ることもありうるが、行商では高級品は売れそうにない。しかも売れ残れば大損だ。


そんな手間をかけるくらいならブリュール氏に売ってしまった方がおそらく儲かるように思う。


「とはいえ、拠点が増えるまではなかなか行商もしにくいので、まだしばらくは塾や洗濯のサービスをしようかと思っています」

「それではご用意が整いましたら、ぜひうちに声をおかけください」

「はい、そうします。ところで物件を探したいかと存じますが、どなたに伺えばよろしいでしょうか」

「それでしたら商業ギルドに聞くのがよいでしょう。ついでに登録もされますか?」




 またギルドか。どうしてもクラープ町での嫌な思い出がある。パストーリ氏はいろいろ便宜を図ってくれたが、パラダもマルキも散々だった。


ただこちらではしばらくは目立つほど大きな商売にはならないだろうから、小さくなっていればさほども風当たりもなさそうだ。





 ギルドに向かいブリュール氏の紹介と言う。いちおうギルドのマスターには話をしたが、通り一遍のあいさつだった。


かなり忙しいらしい。代わりに部下の人の対応となる。いやむしろその方がありがたい。その他大勢の扱いの方が楽だ。


ギルドの規定や市の状況などを一通り聞く。考える上では大雑把に東西南北地区と中心部に分ければよいようだ。


そして南の方に大河の船着き場が南東に市場があり、中心部はむしろやや政治的な街だという。西と北は住宅地のようだ。この辺もクラープ町とはやや様子が違う。


あちらは町長はいるが、領主はいなかった。クルーズン市は領主の伯爵やら懸案の司教らがいるそうだ。




 街の概況を聞き、やはり東か南の地区を考える。いちおうそこらあたりの物件の問い合わせ先などを聞いておく。地区の有力者などだ。


こういう時は不動産屋がいた方が楽だ。もちろん金はかかるけど。


どの物件にするかについては、幹部も増えてきたので独裁で決めるのもどうかと思う。


さいわいギフトが使えるので行き来することにする。やはりギフトについて話しておいてよかった。




 クラープ町に戻る。戻ればまずすることは……猫吸いだ。クロは迷惑そうにしている。もっとももっと迷惑かみがいるからと勘弁してもらう。


クロの相手はそこそこに、いやクロが相手してやったのかもしれないが、商会に戻る。




「いちおう候補地としては東か南にしようかと思う。北と西は住宅地だし、」

「それぞれどんな利点がありますか?」

「南は船着き場がそして南東にそれに付随する市場がある。東は南より少し家賃が安いのと、このクラープ町に近い。南の方が商会は多いと思う」

「中心部はどんな感じ?」

「中心部は政治的な街で、領主や教会や法律関係やそういった建物が多いし、家賃がバカ高い」

「どれくらい高いんですか?」

「この町の中心部の3倍は見ておいた方がいい」

「じゃあ、中心部はなしだな」

「うん、だいたい中心部はこの町と違ってあまり人が住んでなかった」

「北と西は?」

「そもそも住宅地なのと、商店もなく、この町からも遠いので後回しでいいと思う」

「行商するならその辺は開拓のしどころかな」


こんな感じで話し合いが進む。


 後はギフトにからむ要件も必要だ。クロは家にいてもらっているが、商会においてもいいと思う。


もっともあの暇人かみと年がら年中顔を合わせるのも苦痛だが、別の部屋なら悪くはない。仕事中にいつでも猫を触れるというのも気分が上がる。


前世のネットで見た、職場に猫がいる会社は羨ましかったな。あれこそが会社の理想だ。


一方で夜は家に連れ帰らないといけない。車でもあればともかくあまり持ち歩くのもかわいそうだ。職住が接近していればいいのだけれど。そう考えるとちょっと無理そうな気もしてきた。




 猫のことはともかく、いろいろ話しあって初めのもくろみ通り南か東かには決まったが、それ以上となると実際の物件がどれくらいかわからないと決めがたいということになった。


ギフトがあるから俺が見に行くしかない。いちおう人目につかないところにホールを残してきたし、出るときも周りを注意して人がいないことを確認してから出ることはできる。


だけど正直言うと外ではあまり使いたくない。俺だけが入れるスペースを早く確保して、安心してギフトを使いたいと思う。




 そうして南と東で候補地を探す。ギルドから紹介を受けた各地区の区長などに話を聞く。


いちおう幹部と話すのですぐに決められるわけでもない。だんだん人が多くなってくると面倒になる。前は一人で決めてしまっていたのに。


全員で向こうに行くことはないが、何人か連れて行ったこともある。そして聞いた結果や条件をノートにまとめて会議に持っていく。




 ところがみんな考えていることが違ってなかなかまとまらないのだ。


ある者がこちらがいいというと、別の者はあちらの方がいいという。もっと情報が欲しいから調べて来てくれという。


そうして3回ほど見に行ってちょっとまずい傾向だということに気づいた。いちおう言っておかないといけない。


「ギフトが使えると言っても見つかったら危険なことものだからそんなに何度も使わせないでほしい」


俺だけは同じ町に行くような感覚で見に行けるのだが、だから頼みやすいと思うらしい。ただ見つかると危険なものだからそんなに気軽に使うのはやはりまずい。




 俺がトップだったからすぐにやめたいと言えたけれど、部下だったら危なかったかもしれない。


商会は和気あいあいとしているが、それでもブラックの種はどこにでもあると思う。




 とりあえずそういうわけでギフトの使い方にも制限をすることになった。緊急時以外は月に一回程度として、しかも俺以外の意思で使うのは会議の承認が必要とする。


特に今のように先方が自分でコントロールできない場所の場合には最小限ということを確認する。そうでないと危なくて仕方ない。




 けっきょく初めの出先は東側にすることになった。これが吉と出るか凶と出るかはわからない。


ただ正直なことを言うと、しょせんとりあえずでしかないのだ。購入したわけではないので、もっといい場所があればそこに移ればいい。


あくまでもそれを探すための仮の足掛かりだと割り切ればそんなに悩む必要もなかったのだ。


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