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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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いよいよギフトを打ち明ける

 そこでまた幹部会議で話す。


「実は話していなかったが、ある秘密がある」


アランたちは戸惑っている。


「今後クルーズンに進出するとなると、それも話しておかないといけない」

「それはどんなもので?」


「実は結構危険なものなので、秘密保持魔法を使わないといけない。だから聞きたくない者は聞かないでもらってもいい。

だけど今後の商会の発展のためにもできれば魔法を受けて秘密を共有してほしい」



 秘密保持魔法についてはあらかじめ説明をまとめておいたので読んでもらう。アランたちは明らかに戸惑っている。こういう時にすぐに決めさせるのはいいとは思わない。


「1日考えてほしい。ただ秘密があることは誰にも話してはいけない。君たちだけの間で話し合って決めてほしい」


そういって、彼らにゆだねることにした。




 翌日になって改めてそのことを聞く。結局全員、魔法にかかって秘密を聞くことにしたそうだ。ただ全員というのが気になる。同調圧力がないといいのだが。


「契約すれば面倒もあるから聞きたくない者は聞かなくてもいいぞ」


アラン「ここまで来たら聞かないと気持ちが悪い」

ジラルド「店主の事業は世の中を救います」

カミロ「また面白い問題がありそうで、聞いておきたい」

リアナ「毒を食らわば皿までというからな」

エミリ「フェリスさんの秘密って何でしょう?」

アーデルベルト「この年になってまだこんなにワクワクすることがあるとは思いませんでしたな」


皆それぞれ違うが、それぞれ自分の意思で聞きたいらしい。それならよかった。午後にはロレンスが来ることになっている。


「わかった。午後に秘密保持魔法を使う聖職者が来るのでその時に打ち明ける」




 ロレンスが来る。魔法はまとめてかけるらしい。結構時間がかかる魔法なのでその方が楽だ。


「みんな、こちらロレンス・シルヴェスタ司祭だ。俺が子どものころから育ててくれた。彼が今日は秘密保持魔法をかけてくれる」


「はじめまして、ロレンス・シルヴェスタです。フェリスの事業を手伝ってくれているそうで大変感謝します。精神系の魔法で不安の方も多いかもしれませんが、経験は多いので心配なさらないでください」


そんな感じで始まる。魔法の効果についてはあらためて説明する。


「秘密保持の魔法はあなた方が秘密を洩らそうとすると警告の症状が出ます。さらに無理に漏らそうとすると記憶がなくなることもあります。

ときどきですがその際に精神に障害が起こることもあり得ます。ですから秘密のことは決して洩らさないようにしてください。何かご質問はありますか?」


質疑に入る。


「他に何か問題点はありますか?」

「いえ、秘密に触れなければ全く安全な魔法です」

「魔法が切れることはありますか?」

「そういう事例の報告はありません」


そんな感じでいくつか疑問が出る。俺も知らなかったこともある。




 一通り質疑が済んで、やめたい人はいまでも遠慮なくやめていいと伝える。誰も言い出す人はいない。


ロレンスは魔法をかけ始めるが、やはり結構時間のかかる魔法だ。一斉にかけると人によってかかり方が違うらしく、微調整している。



 いちおう準備が整ったところで、俺のギフトについて説明する。


まずクロの重要性を説く。と言ってもみんな半信半疑だ。アランは相変わらず触ろうとしてシャーシャー言われている。人が多いからかクロも警戒モードだ。


隣では神が不心得者たちがという顔で見ている。ロレンスは神の隣にいるが気づかない。ほらそこに神がいますよ、とは言いたくても言えない。言っても信じてもらえないだろうけど。


それからどこからでもクロのところに戻れること、さらに1日以内なら逆に元の場所に戻れることを説明する。そちらの方もみんな半信半疑だ。


そうなると思っていたので実演をする。実際にクロのいないところからみんなを連れてクロのところに移動する。そして逆も行う。みんな狐につままれたような顔をしていた。


「いやすげえな」

「これはいろいろ便利ですよね」

「行きたいところにも行けるし」

「クルーズンにもいき放題だ、そのうち商都や王都にも」

「夢が広がりますなあ」



 他の子たちはともかく、アーデルベルトまで浮かれている。だがあまり気軽に使ってもらっても困るのだ。ギフトは危険が多い。その辺はロレンスも説明してくれる。


「一般にギフトというものは大変に危険なものです。それで脅されたり囚われたりした人も多くいます。ですからあまり簡単に考えないでください」



「だけどこれなら離れたところの営業にはもってこいですね。遠く離れたところにも売りに行ける」

「ホールを使うことを前提に流通を最適化すると……」

「クルーズンの市場でしか手に入らない材料があるんだよな……」

「大量輸送もこれなら容易になりますな」



 少し内容がまじめになったが、相変わらず夢のようなことを言っている。そんなに何でも出来たら、今頃は商都か王都で大商会をしていると思う。


ギフトにはいろいろと制限が多いことを説明する。まず行先に行くのは自分で行かなくてはならない。それからホールを維持しようとすれば1日に1回は行き来しなくてはならない。


それから1時点ではクロのいる本拠以外の1カ所しかホールの行先にできない。最後に一番重要なことだが、見つかると危険なので絶対に見つかってはならない。この最後の点が特に危ない。


「実は子どものころにこのホールを使いすぎて、村のチンピラに見つかって脅されたことがあるんだ。そのときから使うにしても注意している」

「確かに犯罪者に見つかったら犯罪の片棒担がされるかもしれないな」

「貴族に見つかっても囚われそうだ」

「じゃあやっぱりそんなには使えないわけですね」

「そう、そうなんだ。かなりの制限があってものすごく便利というわけではない。でもクルーズンに進出するにはいろいろいいことはあると思う」



 そんなわけで進出のための重要な一歩を踏み出した。これは俺にとっても、他のメンバーにとっても心理的にも負担があったが、一つの重要な転機だったと思う。


何となく秘密にしていて後ろめたいのもなくなった。しかもお互いの結びつきが強くなったような気がする。



 実をいえば知らせたのは秘密のうちの一部だけだ。転生者であることや、猫が無上の価値を持つこと、神が出入りしていることなどはまだ誰にも言っていない。


神が猫オタで万能でもなく下僕に過ぎないなどということについては言われても誰も信じないだろうけれど。


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