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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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ギフトの打ち明けと秘密保持魔法

 ギフトを知らせるにあたっては秘密保持魔法を使う必要がある。この魔法はギフトがらみでなくても使うことは少なくない。


だからバーバラにギフトのことはおくびにも出さず、習えないか聞いてみた。だが習うにはかなりの熟練が必要らしい。


「あれはあれで結構面倒なんだよ」

「だけどロレンスは使えました」


ロレンスはそんなに魔法が得意でないと自分で言っていた。


「あれは司祭だからね。精神に働き掛ける魔法は得意なはずだよ」

「はあ、そういうものですか」

「下手な使い手だと相手の精神を壊してしまうからね」


よほどあくどい敵相手に緊急避難で使うならともかく、そういう危険な魔法は使いたくない。


「それなら、魔法を使いたい場合はどうすればいいのでしょうか」

「ロレンスに頼めないことなのかい?」

「いえ、それは全く大丈夫ですが、今後は遠く離れることもあるかもしれないので」

「おや、引っ越すのかい?」

「まだ決定ではないのですが、クルーズンに支社を作ります。そちらに行くことも多くなりそうです」

「そうかい、そうかい。まあロレンスと話してみることだね」


そんなわけで結局ロレンスに頼むことになった。




 そういえばロレンスにはクルーズン進出について話していなかった。


そこでロレンスが町に来る時にゆっくりと話すことにする。うちで話すので、もちろんクロも一緒だ。ロレンスはクロの隣に陣取り、首あたりに手を置いてさすっている。


「実はクルーズンの方に進出しようと思っています」

「それはまた大したものですね」

「ええ、もうこの町で商売を広げるのも難しそうなので」

「いろいろと苦労も多いでしょう」


確かに苦労は多い。とはいえ子ども向きではないとは思うが、前世でさせられた苦労に比べるとずんぶん気が楽だ。


「向こうに行くことも多くなると、なかなか会えなくなるかもしれません」

「そうなるかもしれませんね」

「さみしくなりますね」

「ええ。でも、あなたは夢をかなえているのでしょう。生きてさえいればいつでも会えますよ」

「はい」




 何となくしんみりしてしまった。まだ支社を作る程度だが、いずれ移る気はしている。それだけで済むかどうかもわからない。


もっと将来には商都や王都に向かうのかもしれない。かつては人々は領邦から出ること自体が難しかったらしい。


時代が進んでみんな広く移動するようになった。そのために人の精神も広がったのかもしれないが、つらい場面も増えたのだろう。


そんなことをおもいつつ、例の用件の方を頼むことにした。


「それに関してお願いがあります」

「何でしょうか?」

「商会の幹部たちにもギフトのことを知らせようかと思っています。そこでまた秘密保持魔法を使ってほしいのです」

「わかりました。それは引き受けましょう」

「ところで……、将来遠くに行ったときにこの魔法はどう使ったらいいでしょう」

「確かにこの魔法を使える人はそれなりにいますが、ギフトのことを秘密にしようとすると難しいですね」

「はい」

「どこかで信頼できる聖職者を探した方がいいでしょうね」


ロレンスに来てもらえればいいが、彼は村で必要とされている。来いとも言い難い。


「そうそういるでしょうか」

「冒険について行く聖職者はいます。あなたはずいぶん教会に寄付もしているようですし、聖職者を帯同してもいいかもしれませんね」

「はあ」

「あ、そうだ。クルーズンに行くなら、クルーズンの司教を訪ねなさい」

「もちろん、伺う予定ですが……」

「クルーズンの司教となると私やサミュエルとはずいぶん違いますよ」


何でも貴族出身で、政治的な影響力もかなりあるという。何か面倒そうだ。


「何か面倒そうですね」

「確かに面倒な人ではありますね。でも味方になれば頼もしい人です。あなたはすでに町でも貴族に絡んだことがあるでしょう」


直接絡んではいないが、マルキの事件で子爵の家宰に関わったことはある。


「商売が大きくなると、そういう付き合いも出てきますよ。行くときななったら紹介状を書きましょう。私なんかと違って簡単には会えない人ですから」


聞いているだけで面倒そうだ。とりあえず今回の秘密保持魔法のことは承諾してもらった。なおロレンスは話をしている間、ずっとクロをなでていた。クロもおとなしくしている。


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