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砂金とり(下)

 翌日目が覚めて、麦がゆと少しの焼き魚などの食事をいただく。


スコットは名主のオテロと何か話している。どうやら、この先の道についてのことらしい。食事がすんで、少しお礼を渡して、集落を後にした。




 集落までの道も人が少ないが、集落から先となると本当に人がいない。ある意味さみしい道だ。坂はますます急になり、とても馬車など入れそうにない。


少し日差しも強くなり汗ばむようになる。息も少し浅くなり、みな無口になる。


そんな道を歩いていると、途中で少し離れたところにクマがいるのが見える。シンディは闘う気満々だが、俺の方はそういう気がない。


ギフトを使ってやり過ごすか、戦うにしても陰から攻撃した方がいい。


せっかく人がいなくてギフトが使えるのだ。だいたいシンディは俺にギフトが使えないこともあるのだから剣術をしろというのだ。


だったら使えるときは遠慮なく使った方がいい。ところがシンディは剣で戦うことにこだわっているようだ。


「こんなところでけがしてもつまらないよ」


シンディの剣は王道かもしれないが、俺の剣は覇道か邪道か権道か……ではなく、寄り道か抜け道かそんなところだ。


ギフトで家に帰り、弓矢と音が鳴る太鼓のようなものを持ってきた。太鼓を鳴らしていると、クマはどこかよそに行ってしまったので安心する。


しばらくしてクマももういなくなったようなので、邪魔な弓と太鼓を家に持ち帰る。ああ、なんと便利なんだろう。これならマジックバッグを持っているも同じじゃないか。


「せっかくクマを退治できるチャンスだったのに」

「まあまあ、人里離れて平和そうに暮らしている動物を無理に退治することもないよ」



 途中でクマをよけたためか、少し道に迷ってしまった。 まさか衛星を使った地図などがあるはずもない。だいたい陸上では方角をはかることすらしないのだ。


なんで方角を測らないのか疑問だ。そこでスコットに話してみる。

「大型船では磁石を使って方位を見ているよね。あれと同じように小さい磁石を使って糸でつるせば方角がわかるはずだよ」


スコットは驚いている。考えたこともなかったらしい。この社会は地図もまだ怪しいし、それでもあるだけいいくらいで、地図がない場所も多数ある。


磁石が広がれば地図が手に入る場所が増えることも期待できるのかもしれない。




 そうして歩いてまた日が傾く前に砂金の取れる川にたどり着く。スコットの初めの予定ではここでキャンプのつもりだったらしいが、またギフトで帰る。


しかしスコットは帰りはギフトで帰るつもりだったのに、途中の泊まりでは使わない算段だったのは、変な話だ。そこまで慣れていないから思い浮かばなかったのかもしれない。



 結局その日は家で寝て翌朝にまたギフトのホールで山に向かった。


これなら3日目が日曜日になるようにしてマルコも連れて行ってもよかったかもしれない。だけど旅の楽しみはその手前もあるから、砂金とりだけじゃつまらないかな。


しかもマルコは何か疲れていそうだから、休ませておいた方がいいのか。



 スコットによると砂金をとるための皿が山の中の小屋にあるという。集落のものでオテロには使う許可を取っているとのことだった。草木で隠してあって知らないとちょっと見つけられないところにある。


さらに鍵がわかりにくいところに隠してあるという。錠を開けて中に入るといろいろと道具が投げ込んであった。


その中から同心円状の溝がついていたお盆くらいの大きさの皿を取る。この皿に砂を盛り、川で溝に引っ掛けながら少しずつ砂をこぼし、皿の上に相対的に重い金が残るようにする。




 砂金すくいはかなり腰がつらい。だいたい砂金が混じった砂を取るにしても、いらない砂を流すにしても、中腰にならないといけない。


どう考えても腰に良くないポーズだ。さいわい今の体は腰が悪くないが、脳にしみついた記憶が不安さを掻き立てる。


どうしても労働安全衛生を考えてしまう。椅子を使ってとかいっそ機械を使ってなどだ。


そんなことを考えていてもきらりとひかる小さな金を見つけるのはなんとも充実感がある。しかもこういう時の常だが、競争になってしまい、ついつい次から次にすくってしまう。




 そうこうしているうちに昼になり食事の時間となる。また家に帰ることにする。家で食事を作ってとり、少し休んでからまた川に戻る。


とはいえ、遊びなので3時ころにはやめる。皿を片付けて、今日とった砂金を集める。これはどれくらいの純度なのだろう。


集めた砂金は小さな袋に入れて持ち帰ることにする。あとは皿を片付けて、小屋に鍵をかける。




 帰りは集落は通らずに別の道で帰ったことにして、ギフトで帰る。砂金の方はまとめて3000ハルクにもならなかった。最初からわかっていたことだから特にショックでもないけれど。


そんなわけで週末の小旅行が終わった。あとは本部の方で行商の相談をする。なんとなく進めたいので先にジラルドに話して計画を立ててもらう。


向こうの名主のオテロと手紙でやり取りして、試しに行ってみることになった。



 ギフトがあって快適ではあったが、これくらいならギフトなしで試行錯誤してもいいのかもしれない。そういう苦労も後で思い出になりそうだ。


あれ、オッサンぽくないことを言っているぞ。そう考えるのがおっさんぽいのかもしれないけれど。



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