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本社を構える(上)

 それもどうかと思うが、シンディはわりとラフな格好で家の中をうろうろする。


尻や胸を丸出しというわけではないが、その一歩手前くらいのことも多い。年頃というほどではないが、ちょっとどうかと思う。




 この前、家でアランとカミロが商売について話し合いに来ていた。そこにシンディが自分の部屋からラフな格好で現れる。


「これは、また、いいところにいらっしゃいました。ぜひそのままお話に加わってください。なんなら我々2人だけでも……」

「ここの宅配拠点が少し遠い。宅配だけでも途中に拠点があれば……」


それぞれ反応が見事に違う。当のシンディがあまり気にしていないのが痛い。





 2人が帰った後にマルコも入れて3人で話す。


「シンディはそのかっこう気にならないの?」

「道場じゃ男たちは上を着てないことも多いわ。中には下もね。腰布だけでうろうろならみんなそうだし」


男でもそれもどうかと思うが、そういうことではなく女の子がそれがいいのかということだ。


「もう少し隠した方がいいんじゃないかな」

「ちゃんと隠しているわよ」

「もう少し着込んだ方がいいと思うよ」

「あら別にいいじゃない、減るものでもないし」

「そんな恰好していると襲われるかもしれないよ」

「そんなもの返り討ちよ」


まあその通りの気もする。もうたぶん何か言っても聞きそうにない。子どものころから一緒で同居しているから俺たちは家族みたいな扱いなのかもしれない。


だけどそうだとすると家族でないはずのアランやカミロへの対応がわからない。汗をかくことが多いから脱ぎたがるのがわからないわけではないけれど。


シンディの方をどうにかするのはちょっと無理そうだと気付く。もう少し年が上がれば変わってくるのかもしれない。




 そこにうまいことマルコが助け舟を出してくれる。


「ただもうこのスペースに外の人が入ってくるのがまずいのかもね」

「そうね、3人でちょうどいいくらいだし、2人よけいに入るとちょっときつい感じね」


会議などは俺たち3人が住んでいる家でしていたが、さすがに人が増えてくるとそうもいかなくなってくる。


だいたい今は元の3人に、アランとジラルドとカミロ、それに軽食部門のリアナとエミリーがいる。


全員の会議となるとうちではちょっときつすぎて、個室から顔だけ出したりして会議をすることになる。


そろそろここで会議を開くのも無理だ。そこで本部を構えることを考えた。会議室だけでなく執務室や仕入れたものを置いておくスペースも必要だ。




 他にも資料が増えてきたのも問題だ。もともと一緒に住んでいる2人とマルコの手伝いくらいでしていた商売なので資料などがあっても全部家に置いていた。


だが商売が続いて記録を取っていれば資料も増えていく。そうすると俺の部屋の置き場もだんだん浸食されてくる。


しかも資料が積み重なってくるとクロがまたやらかすのだ。おしっこなどはきちんとトイレでだけするのだが、ぴょんぴょんと飛び上がるときの踏み台にする。


きちんと積んでいても崩れることはあるし、そうでないときはなおさらだ。足を滑らせて落ちたこともある。


なお資料の山を崩すとばつの悪そうな顔をしている。逆に神は

「こんなところに置く方が悪い」

などと言っている。猫の方が上出来だと思う。初めからわかっていたことだが。




 それに正社員だけでも5名もいてさらにバイトとなるともっとはるかにいる。彼らが資料を見たいとなると、俺に頼んで持ってきてもらうしかない。


面倒で仕方ないし、すぐに資料を使えない社員の方も不満そうだ。だいたい俺は出勤しない日もあるくらいなのだ。そろそろ今の状態は限界だ。



 ここはやはり社屋を準備するべきだろう。すなわち本部だ。本部についての候補地を考える。そこで店をするつもりはないので表通りにある必要はない。


だいたい表通りは買うにしても借りるにしても高い。それはみんな欲しがるから仕方ないのだろう。




 また伝手をたどって探す。冒険者のスコットや教会それに商業ギルドにも聞いてみる。


今回はマルコの伯父のマルキはなしだ。前に家探ししたときに明らかにこちらの望みでない物件を押し付けて来たし、どうもこちらが業績を伸ばしているのが面白くないらしい。


それは向こうはブラック気味で店員が逃げ出すようではあまりうまくいっていないのだろう。きつくても払いがよければそれはそれで支持される要素もあるが、それもなさそうだ。




 中心部の方がいろいろと都合がいいが、もちろん家賃は高かったり手狭だったりする。探していると西に少し外れたところに商業ギルドで紹介された物件があった。


中心部から15分ほど歩くが、工房跡があり、けっこうな広さがある。さらに親方の家と徒弟たちのための部屋に家畜の畜舎もついている。


あまりにぎやかなところではなく、商売には向かないが、管理や倉庫に使うつもりであってここ店自体はするつもりがないので、そこを候補にする。


月に12万の賃料だが、1000万で購入することもできるという。そちらはローンでもいいという。


お金をかき集めれば全額出せないことはないが、手元にキャッシュがあった方がいろいろと安全だ。500万を頭金にあとはローンで買うことにした。

金利は年に1割だが、毎月20万は払えるので完済まで3年はかからないだろう。




 下見でわかっていたことだが、ガラクタが積み上がり、ほこりだらけの上にあちこちに汚れがあったので掃除をしないといけない。


ガラクタは古道具屋に売る。生産設備が整って修理するより新しいものを買った方が安い日本より古道具の価値が高いのだ。


スコットの冒険者ギルド支部と便利屋に掃除の応援を頼む。それからしばらく使われていたなかったので屋根などに痛みがあり、その修理もする。




 親方の家はあったがそこには住まずに元の家に住む。親方の家は執務室2つと応接室と食堂兼会議室と資料室に使う。工房の方は倉庫だ。


それに徒弟用の部屋については近いうちに徒弟も受け入れることになりそうだ。集配の子どもたちの親が10歳になったらそのまま勤めさせてほしいと希望している。

子どもを子どもである俺に預けていいのかとも思うが、まあ商売を広げているくらいなのでいいのだろう。サミュエル司祭のお墨付きもあるし。せっかく読み書きを習わせているので、来てくれるとありがたい。


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