村での配達(上)
評価といいねありがとうございます。
2章執筆の原動力になっています。
あちこち歩きまわれるようになると、配達のアルバイトを始めた。この社会では宅急便もなければ郵便制度が整っているわけでもない。
ちょっとした届け物や買い物などは本人が行くか、使いを頼むかする。使いは子どものお小遣い稼ぎにはちょうどいいものだった。
だいたいこの仕事は少し年上の先輩についてやり方を習い、先輩が10歳になり家の仕事を手伝うようになると引退するので後を引き継ぐ。
シンディの道場の門下生であと数か月で引退しそうな先輩についてこのアルバイトを始めた。
この村は中心に村本体があり、そこから子どもの足で1時間ほど歩いたところに北西・北東・東・南・西の5つの集落が点在していた。
5つの集落は村はずれの水がとれる所を開墾し、数軒から十数軒くらいの家がある。
使いはたいてい村本体の中や集落の中だけだったが、少し慣れてきた子は集落と村本体の間や集落間を運ぶこともあった。
お駄賃は交渉次第だが、相場として手紙なら村本体内や集落内で100~200ハルク程度、その間であれば500~800ハルク程度だった。
ちなみに中堅の役人で給金は月に30万ハルクくらいだ。徒弟となると住み込みで衣食住がつくので、3万とか5万ハルクくらいとなる。
荷物であればもう少し高くなる。届けた後に受け取りをもらって差出人に返すが、しばらく後でもよかった。
子どもの使いなので、あまり重いものや貴重品は持たせず、またよほど悪質でない限りなくしたり壊したりしても弁償にはならないことになっていた。
配達にあたっては、大家族暮らしが多いため不在はあまりない上に、それでもいなければ隣近所に預けることも平気で行われていて、再配達などということもなかった。
ところで貨幣は白金貨と大金貨と金貨と銀貨と銅貨と鉄貨さらに地方の貨幣が入りまじり、しかも十進法でない。銀貨4枚で金貨1枚などとなっている。
あまりにもややこしいので一番価値の低い貨幣の何倍かであらわすことにする。地方の貨幣にいたっては日によって相場が違ったりもするので、おおよその価値で換算する。
はじめは先輩についてふつうに配達の仕事をしていた。看板をもって歩き回り、呼び止められたら配達や買いものを引き受け、そのたびごとにに届ける仕事だ。
だが40男の悪い癖でいろいろ欠点が見えて効率化を考えてしまう。まずもらえるのが子どもの駄賃だけだ。
さらに言うと郵便制度はもちろん宅急便にバイク便があった日本で暮らしていたのだから、無駄しか見えない。
効率化というのもあまり子どもは考えそうにない。ただ効率化というとよいことづくめのように見えるが、そうでもないことも多い。
会社で効率的にやりますよと得意げな後輩を見て苦々しく思ったこともある。
例えば1つ目に目的を取り違えて効率化することがある。中学の時に理科の実験レポートが課されていた。俺は自分で書いたが、それを写させろと言ってくる同級生がいた。
なんとなく弱い立場だったので、唯々諾々と写させてしまった。苦労して書いても写しただけでもレポートの評価は同じだったり、写した相手の方がよいこともあった。
だがそんなろくでもないやり方はいつまでも通じない。結局写していた生徒はろくに勉強しなかったため、成績はどんどん落ち込んでいった。
中学生のレポートなどは研究者の研究成果とは異なり別にレポート自体に価値があるわけではなく目的ではない。それは学力をつけるための手段で、学力の方が目的だった。
写していた生徒はレポートを出すことを目的と勘違いして効率化して、完全に失敗していた。
2つ目に副産物を忘れて効率化してしまうことがある。職に就いたころ、ある部署にものすごくワーカホリックで有能とされる上司がいた。
ところがその上司はやたらとせっかちで新人に仕事を任せることができない。新人がのろのろたどたどしく仕事をしていると横からとって片付けてしまうのである。
その場ではすぐに仕事が終わり、効率はよかった。しかしそれを続けているうちに、新人はちっとも育たず、上司にだけ仕事が集中してますます忙しくなっていった。
会社の求めている目的は仕事の成果かもしれないが、新人の能力の向上という副産物も無視できない重要なものだったのだ。
3つ目で、明らかに効率化して副産物も含めて同じ成果を出していても、やはりうまくないこともあった。自分のある仕事を効率化しようとして、段階に分けてそれぞれ処理したことがある。
早く終わるし手間も少ないのだが、なんとなく仕事をした充実感がない。実はベルトコンベア式のライン分業も、適当な時期にパートを変えて、全体を担当させるようにする工場もあるそうだ。
どうやら人というものは一貫して全体を行わないと充実感や達成感が出ないらしく、結果の評価は難しい。
そうはいっても俺自身は効率化は好きな方だ。効率化した結果、時間の余裕ができて見えていないものが見えるようになったこともある。
ただ効率化といえばどんなことでもよいことだと考えるのが浅はかだということだ。そういうわけで、配達の仕事も効率化を考えてみる。




