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ジラルドとカミロ(上)

 ジラルドはあらゆる意味でふつうだ。身長もふつうだ。ブラウンの髪で顔もふつうだ。言うこともふつうだ。それで人との応対もごく普通で、お客さん相手にも安心していられる。


 みんなで話しているときマルコはある意味ふつうの常識人なのだが、それでも商人の視点が出がちである。ジラルドはふつうでしかも商人ではない町の人側だ。




 あるときに行商の地点を増やそうかどうかの話になった。行商をしているときに割と遠くから来ている客がいたのだ。シンディとアランはどんどん進めたがるが、マルコは慎重だ。


「ちゃんとお客さんが来て採算が取れそうなの? それにいまいる人で回るかどうかも考えないとまずいよ」


マルコの言うことはもっともだ。一方で経営する側の視点が強い。話し合いには客の視点だって必要になる。



 シンディとアランにはそれは荷が重い。ちょっと太刀打ちできない。俺なら何とかなるが、実はそれは議論としてはよくないのだ。


だいたい俺に決定権があるので突き進んでしまえば突き進める。しかも俺が決めてしまえばそこで議論が終わってしまうし、意見を言ってくれなくなるかもしれない。


それは俺の個人商店でつぶれても俺の責任だからだ。責任というはつまり俺の財産でかたをつける話になる。


シンディもアランも別の仕事を探せばいいだけだ。だから俺がしゃしゃり出すぎるとまともな議論にならない。


できれば俺は議長役をして議論が横にずれたときだけ直した方がいい。


議長が議論にしゃしゃり出るなどというのはまともな議論の仕方ではない。

プレーヤーとジャッジを両方しているようなものだ。




 それはともかくとして、あらゆる意味でふつうだと思っていたジラルドが実はマルコに対抗できるのだ。しかもジラルドは商人ではなく、ふつうの町人の方なのだ。


「マルコさんの言うことはもっともですが、需要はあるわけですし、試しに店を出してみるのもよろしいのではないでしょうか?」


「面倒なので言葉はふつうでいいよ」

それくらいの介入はする。


「需要がどれくらいあるかが問題だね。それを調べないと危ない」

「確かにお客さんが1人だけそちらから来ているというだけでは十分ではないですね。調べる方法はありませんか?」


答えがないようなので、俺が前にした方法を話す。


「来てくれた人にどこから来たか地図上で印をつけてもらったことがあるよ。それで試供品を配った」

「それならわかりそうですね」




 さっそく、次の行商のときに候補地近くで調査をしてみた。せっかくなので俺とジラルドでその行商に行く。ついでに候補地に印をつけた人には詳しく話を聞いてみた。


「重いものは町中まで買いに行きたくないから、ここまで来てくれると便利で」

「たまに珍しいアクセサリを持ってきてくれるでしょ。それが見たいのもあって」

「週に一回だから、まとめ買いしておけるものを買っておくの」


いちおう記録を取っておく。




 結果を持ち帰ってまた話をする。確かに数人は来ていたがそれほどたくさん来ているかどうかはわからない。


ただ何となく言われたことにヒントがあるようにも思うのだ。それでも俺ははじめは口出しを差し控える。マルコとジラルド中心に話が進む。


「これだといるかもしれないけど、どれくらいいるかわからないね」

「だけど収穫はありました。重いものを持ち歩きたくないとか、珍しいものを見たいとか、まとめ買いしたいとか」

「え? どういうこと?」


シンディも聞いてくる。


「まとめ買いや珍しいものなら候補地の方はあまりしょっちゅういかなくていいということです。

すでに行商に行っているところは週に1回か2回ですが、候補地は月に1回か2回でいいでしょう」


考えたらそうなのだ。どこの売り場も同じ回数でなくてもいいし、同じものを持っていく必要はない。売り場ごとに回数も品ぞろえも異なって当然なのだ。


日本のチェーン店は人口や交通量を調べて出店を決めていたし、POSを使って何が売れるか把握していたんだっけ。




「小麦粉や油や調味料など1か月くらいはおいてあっても構わないものを持っていけば、出店に合わせて買いに来てくれそうです」


ジラルドが分析する。


「もちろん生鮮品も月に1回しか売りに行かなければ売れるでしょうが、いつも持っていくのは無理でしょう」


そう売り手と買い手の妥協できる範囲で店を出せばいいのだ。


これでマルコも納得したようだ。


「それならやってみる価値はありそうだね」

「今回はジラルドの勝ちね」


勝ちか負けかという言い方はあまり適当でない。そういう視点は何かを見落とすことが多い。


「いや、マルコが初めに指摘した採算と人手の問題は確かにあったんだ。マルコが言ったからジラルドは解決に向かえたんだよ」

「なるほどそうかあ」

「いや、やっぱり問題を指摘するだけより、解決に向けて動く方が上だよ」


マルコ自身がそういうのはいいことだと思う。とはいえ、今回は良さそうな解決に向かいつつありそうだが、いつもいつもそうとは限らない。


問題の指摘自体も重要なことだし、解決しようとすればいいとも限らない。


議論がいい方向に進んだことで、俺はその候補地への出店を考える。あくまでも試しだが、定着させたいと思う。


結果が出なくてもすぐにはやめずにしばらくは続けてみよう。だいたい月に1回か2回ならさほど損害もない。



 ついでに同じやり方でさらに多くの場所に出店できるのではないかと考えつつあった。


つまり週に1回か2回行くメインの行商場所に加えて、月に1回か2回行くサブの行商場所も作ろうかと思う。だんだん商売が広がっていく。もちろん世の中の人に歓迎される形でだ。




 そうするとかなり行く場所が増えてるので手伝いを入れた方がよさそうだ。全員をフルに雇って中心部から連れていく必要もない。


大雑把に東西南北に分けて、それぞれの地区だけ商売を手伝ってくれる人を頼めばいい。


そうすると3人売り場に必要でも、手伝いが1人か2人つけば、毎回3人で行く必要はなくなる。

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>だいたち月に1回か2回ならさほど損害もない。 だいたい だいいち かな?
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