第5話 魔法少女アイシラたん、キラッ☆
村を蹂躙……もとい探索して手にいれたアイテムは以下。
30ゴールド。
《バックラー(盾)》
《かわのぼうし(頭防具)》
《きずぐすり》×3
そして土属性の初級魔導書《ストーンショット》だ。
「イベント後のアイテムまで取れちった」
アイシラは手にいれたばかりの初級魔導書をしげしげと見つめながらつぶやいた。
本来は故郷壊滅イベントの後にしか手に入らないアイテムである。
家と障害物に囲まれた宝箱の中にこの魔導書はあった。
だが障害物といっても柵とか木箱である。
身軽な十代の肉体を駆使すれば簡単に乗り越えられた。
「ウフフ……魔法かあ~」
初級とはいえ本物の魔法を使える時が来たのだ。
ゲーム好きとしてはたまらないものがある。
「さっそくやってみよっかなあ~」
脳内にあるゲームパッドで操作する。
アイテム使用。初級魔導書《ストーンショット》。
魔法のページに土属性の欄が誕生し、記念すべき一つめの魔法が登録された。
同時に魔導書は消滅する。
「結構あっけないのね」
アイシラは左右の両手をしげしげと見つめる。
何となくだが新しい力が身についたという実感があった。
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ステータス
アイシラ 15歳 女 遊牧民
HP 18/18
MP 1/1
SP 3/3
力 1
体 2
器 2
敏 3
魔 1
精 3
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うん、最低値だがMPはある。
試しにやってみよう。
アイシラは村の外へむかって右手のひらを向けた。
「《ストーンショット》!」
地面から握り拳くらいの石が浮かんできて、手でしめした方向に飛んでいった。
ドヒュゥゥゥン!
石はお空の彼方へ飛んでいった。
それを見てアイシラは目をキラキラと輝かせる。
「で、できた! できちゃった~!
マジカル美少女アイシラたん爆誕~! キラッ☆」
いちいち大げさに反応してしまうのは、動画投稿者としての悲しいサガである。
実体としては地面の石をひろって投げるのとなにも変らないわけであるが。
何はともあれ彼女は早くもゲームのお約束を無視して、まだ手に入らないはずのアイテムをちゃっかりゲットしたのだった。
少しずつ強くなってきたが、それでもまだ心もとない。
あぶないお外へ出るまえに、もう少しなにか強みがほしい。