第41話 乙女のウラオモテ
さて寝泊まりするにあたって、まずは最低限の掃除をしなくてはいけない。
一階を軽く探索して使用人の部屋を発見。清掃用具一式はそのまま用具入れに収まっていた。
さすが皇室の召使いらしく用具入れの中まで整っていて清潔。
すべて問題なく使用可能だ。
……なんだったら今この廃屋の中でもっとも清潔な空間が、この用具入れかもしれない。
「おったからは~どっこでしょか~♪」
即興のヘンな歌をうたいながら一階の家探しをするアイシラ。
新しい場所に来たらまずは宝探し。
それがRPGプレイヤーのセオリーだ。
さすがは皇族の別荘だけあって、右を向いても左を見ても高級品ばかり。
隠れたレアアイテムなどが見つかるかもしれないと、期待に胸を高まらせていた。
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事務室らしき部屋の机には紙や羽ペンなどの筆記用具にまざって、高級そうな黄金の文鎮や凝った意匠の印鑑などが入っていた。
しかしこれらは高価そうだが冒険の役に立たない。アイシラは元の場所にもどした。
こんな物を持ち出してバレでもしたら問答無用で牢屋送りだ。
もっと実用的なものがいい。
『陛下のご命令を遂行するために仕方なくお借りしちゃいましたぁ~てへぺろ☆』
みたいな言いわけのできるアイテムがベストなのだが、あいにくとそんな都合のよい物がなかなか見つからない。
飾ってあった鎧や剣・斧などはもちろん真っ先に調べたが、錆びついた一般品だったのでそのまま捨ておいた。
「ん~無いなあお宝~」
掃除のことなどすっかり忘れて、お宝探しに没頭してしまうアイシラ。
キョロキョロ視線を動かしながら廊下を歩いていると、玄関ホールのほうで大きな音がした。
ドドドドドドーッ!!
「なにごと!?」
大きな物が壊れたような音だ。
さすがに顔色をかえて急行すると、たちこめるホコリの中に、たくさんの折れた木材と尻もちをついたタカキがいた。
「どうしたの!?」
「ああ、いや……」
弟は全身のホコリを払いながら決まりの悪そうな顔を見せた。
「二階を調べようとしたら、階段が腐ってて」
言われて階段を見れば、真ん中あたりで足場や手すりがメチャクチャに崩れていて、鋭くとがったギザギザの断面がのぞいていた。
「これじゃ危なくて上には行けないよ」
「そんなことより!」
アイシラはきびしい表情で彼がケガをしていないかチェックしはじめた。
「あんたケガはないの、小さなケガでもちゃんと洗わないと」
「またかよ大げさなんだから」
土のトパーズを取りに行った時にもこんなことがあった。
かすり傷を軽視するタカキ。甘く見ないアイシラ。
「なに言ってんの、破傷風にでも罹ったら大変なんだからね!」
はたしてこのゲーム世界に破傷風菌なんてものが存在しているかどうか疑問だが。それでもアイシラは弟の身体が心配で無視できない
甲斐甲斐しく手当をするアイシラの姿を見て、リーフとベルトルトは温かい微笑みを送る。
二人の目にはさぞ素晴らしい姉に見えていることだろう。
……しかしこの優しいお姉さんがほんの数分前までコソ泥同然のおこないをしていたと知ったら、二人の笑顔はどんなことになるのやら。




