46.処罰
「もうわかったと思うが、ミリアが牢に入っているのは当然だ。
違う牢に女性騎士の二人も入れてあるが、
そちらのほうも実行犯として罪は重くなるはずだ。
これから取り調べをして、それから処罰を決める。」
「…ミリアは…どうなりますか…。」
「アンジェは公爵令嬢としてだけでなく第二王子の婚約者で、運命の乙女だ。
この国の宝ともいうべき女性を一方的な恨みで傷つけようとした。
それに…俺がまだ結婚前で子がいない以上、
先に結婚するジョーゼルとアンジェの間に生まれた子が、
次の王太子になる可能性もある。」
「…それは…まだわからないことでは…。」
「うん、わかっていないよ。
だけど、ミリアは近衛騎士の護衛を倒して、その服を奪い偽装した。
わかる?王族を守るための騎士を排除したんだ。
…その上、国母になるかもしれないアンジェを傷つけようとした。
国家反逆罪を適応してもおかしくない。」
「あ…。」
どんな言い訳をしても、近衛騎士を排除したのはまずい。
それはそのまま王家への反逆を意味するのだから。
王族の休憩室を守る護衛騎士は普通に学園にいた騎士とは扱いが違う。
あそこはいわば王宮と同じ扱いなのだ。
近衛騎士は王族を守るためなら貴族でも取り押さえることができる。
それは最後の砦ともいうべき騎士たちだからだ。
当然、貴族もそれをわかっていなければいけない。
近衛騎士を排除したことで、アンジェだけじゃない。
その場にいたジョーゼルや俺も危険にさらされたことになる。
ナイゲラ公爵だって馬鹿じゃない。
国家反逆罪を適応してもおかしくないといった意味はわかるはずだ。
ミリアだけじゃなく、ナイゲラ公爵家そのものも罪に問われているんだと。
「…普通に国家反逆罪で処罰させたら、
三人とも処刑で…家はとりつぶしが妥当なんだけど。」
「ひぃっ…!」
「父上、俺に考えがあります。」
「なんだ?」
「ナイゲラ公爵領地は、リスカーナ国になってまだ五代目です。
まだナイゲラ王族の子孫で無ければ公爵は務まらないでしょう。
かといって、王族だったものの爵位を落とすというのも…
公爵領地で暴動がおこりそうです。」
「ありえるな。」
ナイゲラ公爵領は元はナイゲラ王国という小さな国だった。
我がリスカーナ国とフランディ国に挟まれ、戦争で疲弊した結果、
リスカーナ国の公爵領として組み込まれた。
それ故に、ナイゲラ公爵領では今でもナイゲラ公爵家は王族として見られている。
ミリアがあれほどわがままに育った一因でもあると思っている。
おそらくミリアを処刑するとナイゲラ公爵領のものが復讐を考える。
今さらナイゲラ公爵領が国として独立するようなことは無いと思うが、
領民すべてを敵にまわすのは得策ではない。
「面倒になってナイゲラ公爵領を切り捨てるのもありですが、
そのあと我が国と戦争になっても困ります。
ですが、ミリアをこのままにするのは無理ですし、
これだけの罪をなかったことには当然できません。」
「そりゃ当然。
ほっといたらまたアンジェに危害を加えようとするだろう。
最低でも幽閉か生涯監視付きは避けられない。」
「ですから、ミリアを嫁がせましょう。」
「「「は?」」」