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42.準備は万端に

どう話していいのか迷ったけれど、

この二人ならば素直に話してもわかってもらえる気がした。


「嫌だったんです。

 というか、計画を知って…これ以上ないほどの怒りを感じました。

 私を傷つけて排除しようとしたことに対してではなく、

 あれほどゼル様を傷つけたというのに、

 まだやり直せるだなんて思っているミリア様の図々しさにです。」


「なるほど…怒ってたのか。

 だから実行されたのなら徹底的に調べてあげて処罰して欲しいなんて言ったのか。

 アンジェにしてはめずらしいと思ったよ。

 いつもなら、お前が怒るのは自分のことじゃないからな。

 今回はジョーゼル様のことだったわけか。」


「どこかできっちりわからせないと、ずっと続くと思ったから…。

 もう二度とゼル様は戻ってこないんだと、ミリア様にわからせたかったんです。

 そのうえで、自分がどんなにひどいことをしたのか理解してほしかった。

 それを理解できていないから、

 まだゼル様との間に希望があると思っているのでしょう?」


「そういうことか。

 では、ミリアの処罰はそういう方針で行こう。

 まずは自分が何したのかを徹底的に理解させてから。」


「できますか?」


あれだけゼル様に拒絶されて、嫌いだとまで言われたのに理解していないのだから、

そんなに簡単にはいかない気がした。


「そういうことに長けているものがいるから大丈夫だよ。

 後のことはこっちに任せて。

 …それにしても無事でよかったよ。

 奥の部屋にジョーゼルが待機していたからいいものの、

 アンジェが担ぎ上げられた時には冷や冷やした。

 あんなにも力強い女性騎士を用意するとは思ってなかった…。」


確かに…担ぎ上げられた時には本当に驚いて慌ててしまった。

振りほどこうと暴れてもびくともせず連れて行かれてしまったのだから、

見ていたハインツ様はさぞかし心配したことだろう。


「護衛騎士に担ぎ上げられるとは思っていなかったので驚きましたけど、

 ミリア様の計画通りに女性騎士に襲われることになったとしても、

 大丈夫なように対策はしてありました。」


「対策って、俺たち以外の?」


「…このドレスのスカートの中に毒針が仕込んであるんです。

 毒針というか、トゲトゲが外側に向かって縫い込んであるというか。

 もしドレスを脱がそうとか、

 スカートをめくろうとしたら刺さるようになってるんです。」


「「は?」」


「あの…キュリシュ侯爵がどこからかこの計画を知ったみたいで…。

 毒針を作ったからドレスに仕込んでいくようにと笑顔で渡されました。

 ゼル様の弟のヨーゼフ様が栽培した毒草をリオナ夫人が精製したものだそうで…。

 刺さると一時的に身体が麻痺して動けなくなるもので、後遺症はないそうです。

 まだ実験段階だそうですが…効果は抜群だからって言ってました。」


「あぁ、キュリシュ侯爵家が総出で守ってくれてたのか。

 そのことはジョーゼルは知ってるのか?」


「…侯爵が内緒にしておきなさいって。

 ゼル様は万が一毒針が刺さっても大丈夫だからって。

 スカートの外側にふれても刺さらないのでゼル様には刺さらないと思いますし、

 それなら話さなくてもいいかなって思ったんですけど…?」


話しているうちに気が付いた。

侯爵がゼル様に刺さっても平気だって笑って言ってた理由が。

私のスカートの中にゼル様が手を入れるかもしれないって思ってたってこと!?



「あぁ、うん。二人がそんな関係じゃないのはちゃんとわかった。

 大丈夫だから、落ち着いて!うん、お茶飲んで!」


「アンジェ、顔…真っ赤。

 お前たち…婚約者なんだから、そのくらいの会話で慌てるなよ。

 さっきも頬に口づけされたくらいで動揺してたけど…。」


「…だって、手を握ったり抱きしめてもらったりはするけど、

 そんな不埒なことされたりしないから!」


「そうなんだ…うちの弟って思ったよりも純情だったんだ。

 まさかくちづけもしていないのか?」


「うちのアンジェもそうだから、お似合いだよ。

 ある意味こじらせている同士で似合ってるのかもしれない。」


「ハインツ様もケイン兄様も!

 からかわないでください!」


小声でハインツ様とケイン兄様がやりとりしているけど、

目の前にいるんだから全部聞こえている。

…二人に意地悪されたってユリエルに告げ口しちゃおうかな。


「ごめん、ごめん。

 まぁ、無事に終わって良かったよ。

 そういえばアンジェ?」


「はい?」


「ケインだけじゃなく、俺のこともお兄様って呼んでよ。

 兄になるんだからさ。」


「気が早くありません?

 結婚するのは一年後ですよ?」


「早くてもいいじゃないか。

 二人が結婚するのはもう決まってるんだし。」


決まってはいるだろうけれど、だからと言って気が早いことには変わりはない。

だけど、ハインツ様の笑顔がとても優しくて、その言葉に甘えることにした。


「わかりました。ハインツ兄様。」


「うん、これからもよろしくね、アンジェ。」



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