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39.疑念

「お久しぶりですね、アンジェ様。」



「……?…っ!!」


顔を上げたそこには、学園を休学中のはずのミリア様がいた。

もともと小柄な身体が一回り小さくなるほど痩せてしまったミリア様が、

暗い表情で私の目の前に立っていた。


「…どうしてミリア様がここに…?」


制服姿のミリア様に、一瞬だけ復学したのかと思ったが、

ミリア様の休学期間はゼル様の卒業までではなく、私の卒業までだったことを思い出した。

少なくともこの時期に復学できるわけがない。

それに、もし休学期間が変更になったのであれば、私に連絡が来ているはずだった。


謹慎期間でもあるはずのミリア様は公爵家の屋敷から出られないはずなのに、

どうして学園に来ることができたのだろう?

しかも、この王族の休憩室へは近寄れないはずなのに、どうやって?


「…っ!!」


ソファに座ったまま、後ろから両腕を取られ、頭を押さえつけられる。

一瞬だけ見えた服が護衛騎士のもので、予想外のことに驚きを隠せない。

…後ろにいる二人は、さきほど休憩室の入り口にいた護衛騎士たち?

確認することができなくてもどかしい。



ふふふっと笑い声が休憩室に響いた。


「ねぇ、偽物だったんですって?アンジェ様。」


「にせ…もの?」


ミリア様は何を言ってるんだろう?

悪意をそのままぶつけられ、うまく言葉を返せない。


「収穫を祝う夜会で、ハインツ様にもフランツ様にもふれられたって聞いたわ。

 ジョーゼル様が運命の相手だなんて言って婚約したくせに…

 運命の乙女だなんて、嘘だったんじゃない。」


「そ、それは…。」


あの夜会の後、運命の乙女の真偽について噂が流れたのは知っていた。

マニヌラの根の話は近くにいたものしか聞き取れていなかったようだ。

その代わり、フランツ様とハインツ様が私にふれたというのは、

広間の端のほうにいても見えていたらしい。

王子三人が私にふれたことで、

私が運命の乙女だというのは嘘だったのではと思った貴族が多かったようだ。

フランツ様が雷で打たれたのも一瞬だったせいで、

私が強く突き飛ばしたことになっていた。


私が運命の乙女で無くなったとしても特に困ることは無いし、

そのおかげでゼル様を王太子にという声は聞かなくなった。

陛下からは謝罪されたが、私たちにとってはそのほうが都合が良かった。

そのため、噂は消えるまで放置することに決めたのだった。


まさか…その噂をミリア様が信じるとは思っていなかった。

おそらく屋敷で謹慎しているミリア様へわざと知らせたものがいる。

王族が面白くないのか、ミリア様を傷つけたかったのかは不明だが、

閉じこもっていたミリア様がそれを信じて行動してしまうとは思わなかっただろう。


「結局は王妃とフランツ様を排除して、

 ジョーゼル様を王族に戻すための嘘だったのでしょう?

 何も知らないジョーゼル様をそんな風に騙すなんて…。許せないわ。」


「それは違います。ゼル様を騙してなんて…。」


「あら。今も両腕を押さえつけられているのに、どう言い訳するの?」


「え?」


「その護衛騎士二人も運命の相手だなんていうのかしら。」


「…そんな。」


後ろから両腕と頭を押さえられているせいで、

護衛騎士を振り返って見ることができない。

痛みはないが、しっかりと押さえられていて、身動き一つできなかった。


「ねぇ、王族の休憩室には寝台も置かれているの知ってる?」


「…?」


「今すぐ、その二人が運命の相手か調べたらいいんじゃないかしら。

 …純潔じゃなくなれば、ゼル様との婚約もなくなるわよね?」


「…!!!」


私を見るミリア様の目が少しもぶれていないことで、

本気でそんなことを言っているのがわかる。

その次の瞬間、無理やり立たせるように腕を持ち上げられ、

二人がかりでそのまま担ぎ上げられそうになる。

まさか、本当にそんな真似をさせるつもり?


「ゆっくり楽しんでいらしてね?」



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