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34.悪あがき

王妃の部屋の前には衛兵が立って、王妃を部屋から出さないように監視していた。

キュリシュ侯爵を伴って部屋に入ると、中には侍女たちに囲まれた王妃がいた。

まだ呆然としているのか、侍女たちは王妃に必死に話しかけていたようだ。


「王妃はずっとそんな様子でいたのか?」


「…はい。お呼びしても…ずっとこの様子で…。」


「そうか。

 …王妃、フランツの状態だが、危なかったところだそうだ。

 マニヌラの根の毒が全身にまわってから数時間も過ぎていたし、

 その上…雷に打たれていた。

 もう少し治療が遅かったら助からなかっただろう。」


「…フランツはどうなったのですか?」


フランツの話だったからか、王妃がこちらを向いた。

その目に光が戻ったのを見て、話を続けても大丈夫だと判断する。


「キュリシュ侯爵、フランツの状態を説明してやってくれ。」


「はい。フランツ様ですが、全身に回った毒は中和させましたが、

 それまでに死滅した神経が元に戻ることはありません。

 痛覚がなくなっただけでなく、下肢に麻痺が残り、視力が低下しています。

 まだ体調が落ち着いたわけではないので、

 この後もどこかに異常が起こる可能性があります。

 数年は治療が必要でしょう。」


「…そんなに?」


やはりあの毒を甘く見ていたのか。

あれはこの国にしか咲かない花の根だから、

隣国出身の王妃がその怖さを知らないのも無理はない。

マニヌラの花は王宮の薬師園でのみ栽培することを認めている。

それを乾燥させたものも厳重に管理させていたのだが…

管理している側の薬師が盗もうとしたら止めるのは困難だ。


「マニヌラの根を盗んだ薬師からも証言が取れた。

 王妃に頼まれて盗んだと。

 あの薬師はお前が国から連れてきた薬師だったな。」


「…。」


「それと、お茶に入れて飲ませた侍女も牢に入れることになる。

 この部屋の侍女はすべて調べさせてもらう。

 衛兵、連れて行け。」


覚悟していたのか、侍女たちは黙って衛兵に連れて行かれる。

王妃の部屋付きの侍女はすべて王妃の祖国フランディ国から連れてきたものだ。

王妃に忠誠を誓っているのか、フランディ国に誓っているのかはわからないが…。

どちらにしても愚かなことをしたものだ。


「そこまでして運命の乙女の相手に選ばせたかったのか?」


「何のことですの?

 確かにマニヌラの根を飲ませたのは痛みを感じなくなると聞いたからです。

 ですが、第一王子が生きているのですから、安全な薬だと思ったからですわ。

 運命の乙女の相手に選ばせるためではありません。

 王太子として国王として生きるのに、痛みを感じないというのは有利になります。

 第一王子がそうだというのなら、フランツもそうあるべきでしょう。

 運命の乙女に求婚したのはフランツの希望です。

 フランツはずっとアンジェを妃にしたいと思っていたのですから。」


「だからといって、もうすでに婚約しているジョーゼルを無視して、

 アンジェに求婚するというのは無理があるだろう。」


「いいえ。わたくしはジョーゼルが運命の相手だと認めておりません。

 きっと、ジョーゼルだってマニヌラの根を飲んだに違いありません。

 三人ともマニヌラの根を飲んだのだとしたら、

 ジョーゼルが運命の相手だという証拠はありませんわ。」


なるほど、そうきたか。

ハインツもフランツもマニヌラの根を飲んだからアンジェにふれることができた。

だから、ジョーゼルもマニヌラの根を飲んだに違いないということにしたいのか。

たしかにそう思うものも出てくるだろう。

ジョーゼルだけが飲んでいないと証明することはできないだろうと。

だが…ジョーゼルは。



「残念だが、その話は間違っている。」


「なぜですの?」



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