2.報告しなければなりません
静かな公爵家の応接室に悲鳴のような声が響いた。
お互いに驚きを隠すことができず、目を合わせたままつぶやく。
「えぇぇぇぇええ?」
「…うそだろ…なんで…。」
「「まさか、運命の相手…?」」
もう一度ジョーゼル様の手を見るが、弾くことなくふれている。
まさか、こんな風に運命の相手が見つかるなんて思ってもみなかった。
驚きのあまり身体の力が抜けてしまうそうになる。
崩れ落ちそうになったところを、ジョーゼル様が抱き留めるように支えてくれた。
「…え?え?」
「ちょっとだけ我慢して。」
そういうと抱き上げられ近くのソファまで運ばれてゆっくりと降ろされる。
呆然としている間に座らされていた。
「大丈夫か?」
「ごめんなさい。驚きすぎて力が入らなくなってしまって…。」
「いやいい。今まで異性に近付くこともほとんどなかったんだ。
急に近づいてしまってすまない。」
「いえ、私が転びそうになったのが悪いのですから…。
助けてくださってありがとうございます。
それなのに…こんな状態になってしまってごめんなさい…。」
お互いにお詫びしあっていると、応接室の扉がバーンと開かれた。
「アンジェ様!大丈夫ですか!?」
飛び込んで来たのは長年私の家に仕えてくれている執事のシュルンだった。
さきほど私が悲鳴を上げてしまったから慌てて来たのだろうけど…
私がソファに座り、そこに跪くようにジョーゼル様がいて、
私とジョーゼル様の手はつながれている。
それを見たシュルンまでが倒れそうになってしまった。
「アンジェ様!これは!いったい!?」
「…シュルン、運命の相手が見つかったみたいなのだけど…?」
「なんですって!すぐさま陛下に報告を!
ファリオ様にも報告を…
先触れを出しますので、用意して王宮へと向かってください。」
「…今すぐ行かなきゃダメなの?」
「運命の相手が見つかった場合、
他に報告せずに一番先に報告に来いと陛下から言われているじゃないですか!
お二人で王宮へと行って謁見して来てください!
そうすればファリオ様も謁見室にいるはずですから!」
確かに宰相であるお父様も謁見室にいるとは思うけれど…。
陛下に報告に行くの…正直言ってめんどくさいわ。
お父様と同じくらい私のことを可愛がってくれているのはわかるのだけど、
運命の相手が見つかったら大騒ぎしそうな気がして…。
でも、こうなってしまった以上は報告に行かなければいけない。
第二王子のこともあるし、放置しておいていいことはない。
問題は…私一人のことではないということなのだけど…。
仕方ないとあきらめてジョーゼル様へと向き直った。
ジョーゼル様が誠実なお方だということを知っているからこそ、
巻き込んでしまったような気がして申し訳なさが募る。
「ジョーゼル様、申し訳ないのですが、一緒に王宮へ行ってもらえます?
運命の相手が見つかったら陛下に報告しなければいけないのです。
そこに父もいると思いますので…。」
「…ああ。報告はしなきゃいけないだろうな。
俺が行くのはかまわない。
アンジェ様が立てるようになってからで良ければ…。」
「…度々申し訳ありません。」