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13.友人

「昼時間は合わないだろうから、食事を一緒にするのは難しいだろう。

 帰りは迎えに来るから、教室で待っていてくれる?」


「わかりました。」


「じゃあ、また帰りに来るね。」


教室の扉の前まで私を送るとゼル様は自分の教室へと向かって行った。

離れた手の感触を惜しみながら教室へと入ると、すぐさま友人に捕まる。



「アンジェ、どういうことなの??」


「そうよ!ちゃんと聞かせてもらうわよ?」


友人の侯爵令嬢ダイアナと辺境伯令嬢のユミールだった。

いつも一緒にいる二人だから何かあった時にはすぐに話していたが、

さすがに昨日の出来事を先に知らせることは無理だった。

きっと知らなかったことを怒っているのだろうけれど、こればかりは仕方ない。


「急な知らせで驚かせてしまってごめんなさい。

 私も急なことで…まだ驚いているの。

 昼にでもゆっくり話すから、聞いてくれる?」


「え?アンジェにも急な話だったの?」


「そうなの。その辺の事情も話したいから、

 ゆっくり話を聞いてもらえるとうれしいのだけど。」


「私たちに隠していたわけじゃないのね?」


「もちろん違うわ。私が二人に隠すわけないじゃない。」


それは心外だわという表情で説明すると、二人の顔も明るくなった。

昨日まで私が第二王子のことで悩んで相談していたのだから、

いったい何があったのかと思っていただろう。


「わかった。何か事情があったのね?」


「昼はカフェテリアの半個室に行きましょう?

 あそこならゆっくり話せると思うし。」


「いいわね。そうしましょう。」


もうすぐ授業が始まる時間になる。

今すぐ事情を話すことは難しいし、

授業の合間の短い時間で話し終えるとは思えない。

それに周りの人が聞き耳を立てているこの状況で話すのは躊躇われた。

昼にゆっくりと話す約束をすると二人もそれ以上ここで話すことは止めてくれる。

聞きたい気持ちはあるだろうけれど、

二人も高位貴族として淑女教育を受けてきている令嬢だ。

心の内ではどう思っていても、私を急かすようなことはしないでいてくれる。


昼にと言ったのは私なのに、本当はすぐにでも二人に話したかった。

早く昼にならないかなと落ち着かない気持ちで午前中を終えた。

昼休みの時間になると、すぐに二人が私の席までくる。


「さぁ、行きましょう?」


「早くいきましょう?午前中ずっと気になっていたのよ。」


「ええ。」



カフェテリアの半個室の席に座ると、食事が運ばれてくる。

今日のおすすめの軽食を三人分お願いしたら、

サンドイッチとピクルス、小さなポテトグラタンとスープだった。

食後にケーキを楽しむつもりなので、食事は軽めにする。

小さめのサンドイッチを一つつまむと、

生ハムと薄切りの蒸しかぼちゃとクリームチーズがはさまっている。

甘めのかぼちゃと生ハムの塩加減がちょうどよかった。

それを二つほど食べ終えてから少しずつ話を始めた。


「昨日の昼過ぎになって、急にジョーゼル様が訪ねていらしたの。

 ほとんどお話したこともないのにうちに来られるなんて驚いたわ。

 それと同時に少し困ったことになったと思ったの。

 ゼル様は第二王子の話をしに来たのだと思ったから、人払いをして話を始めて。

 話を聞いたらやっぱりそうで…

 でも、第二王子と付き合えとかそういうのではなくて…。

 もう少し優しく断れないかって。」


「え?断っていいけれど、優しくしろってこと?」


「それは…無理じゃない?

 あれほど断っても断ってもしつこく会いに来ていたのに、

 優しく言っても効果ないでしょう?」


「そう思うでしょう?私もそう言ったの。

 優しく言っても聞いてくれないから冷たく断ってるんだって。

 で、お互いの事情を話していたら、

 ゼル様は第二王子の側近じゃないことがわかって。」


「え?違うの?

 じゃあ、どうして第二王子が来るときに一緒に来ていたの?」



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