第Y章 第一節 ー桜製作所ー
第Y章 第一節 ー桜製作所ー
「こないだのサクラの新曲PVみた?」
「見た見た!」
「めっちゃ、今、来てるんだって、サクラ!」
「所長がめっちゃ、頭おかしいの、ってサ!?」
「わたしも見たよ!」
ーーー僕はサクラです!みんなの大好きなサウンドを作る、桜製作所の所長です!
「今、日本一のサクラwだよねw」
「なんか、吸い寄せられる、っていうかw」
「本人が、自分はサクラ、って言いきってるのが草w」
「誰集めてんだよ?w」
「『みんな』なんでしょ?所長は?w」
「誰だよ?『みんな』って?」
コンビニの駐車場で、アイス食べながら一服してたら、僕の話か・・・。
何か、イメージ破壊してたら、申し訳ないな・・・。
ーーーほら、若い子はこんな時間にうろついたら、いかんぞ?はよ、帰れ、ってな?これ、おじさんからの助言だぞ?
髪、ボッサボサで、バニラバーをかじりながら、短パン、Tシャツ、サンダルで、コンビニの駐車場の灰皿の前で吊ったってるオジサン。
ただの不審者でしかない。
「じじい、きもっ。サチ、早く帰ろ。やばいよ。このおっさん・・・」
そそくさと立ち去るサチと、もう一人。
ーーーオッサンで、なにがわりー。こちとら、もう、50年近く生きてきたからな?身体は30くらいだけど。ふふーんだw
若い、っていいな。
2回生きてきたけど、もうすぐ寿命だ。
やり残しはないようにしたい。
みんな。
バンドのみんな、
コーラスのみんな、
管弦のみんな、
素敵なステージをセッティングしてくれたみんな、
チケットの販売をしてくれたみんな、
ファンのみんなのために。
僕の命日の前日に、全てやりきる
(未完)