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拝啓、廻る季節に君はいない。  作者: 日逢藍花
第四章 冬の断章 -Irony-

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舞台袖からの景色-⑦

 いよいよ、最期の時は近づきつつあった。


 私は残った理性を総動員して、永輔さんから離れることを決意した。


 心臓病が再発したことにし、入院という手段で物理的に彼から距離を取った。


 彼らの立つ舞台から、私一人だけが無様な顔をして逃げ帰ったのだ。


 彼も私が病死で消えたのであれば、いくらか心が楽になるだろう。


 そんな楽観的で短絡的な手段を取るより他、私に道は残されていなかった。


 だけど私の描いた地図は、その通りに行こうとすれば必ず道を外してしまう。


 その決断によって、またも私は永輔さんを殺しそうになってしまった。


 私の判断はつくづく裏目に出る。


 その結果、彼は自分を殺すことによって、私を病気から救おうとした。


 カンナを演じ、私を諦めさせるための方便が牙を剥いたのだ。


 日聖さんが彼を止めていなかったら、どうなっているか分からなかった。


 事実を知り、やはり私は悲しみ、そして喜んだ。


 もはや、彼の気持ちを真正面から受け止めるしか方法はない。


 そう悟った。


 私はノートの文字越しに、彼に偽らざる想いを告げた。


 彼はそれを受け止め、優しいキスで返してくれた。



 ただ幸せだった。



 そして彼は、日聖さんと共に舞台に立ち、全ての真実を彼女から知った。


 短い文章を旧式の携帯電話で打ち込み、彼に送信する。 


 この後、永輔さんはここまでやって来る。


 もう私は、誰の役も演じないでいい。


 ただの千賀燎火として、もう一度、彼と一緒の舞台へ立てるのだ。


 

 愛は呪われている。


 そして、当たり前のように祝福されている。


 その言葉の意味を、私は永輔さんと過ごす日々の中で知った。


 進むべき道の選択を、私は間違い続けた。


 ろくに学ぶことをせずに、何度も何度も間違い続けた。


 今思えば、私はいけ好かない神さまの振りも、陰気なクラスメイトの振りもせずに、最初から彼に心を開くべきだったのかもしれない。


 そうすれば、ほんの少しでも長い間、永輔さんと寄り添えたはずだ。


 彼は私を憎んだりはしなかっただろうし、私が消えてもその先の世界を強く生きていくことができたに決まっている。


 それでも振り返ってみれば、間違いだらけのその道には色とりどりの美しい花々が咲き誇っていた。


 愛する人は、それを祈りだと言っていた。



 だから、こんな愚かな女の与太話にも、きっと一抹の価値はあるのだ。

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