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拝啓、廻る季節に君はいない。  作者: 日逢藍花
第四章 冬の断章 -Irony-

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舞台袖からの景色-③

 千賀家にはある伝説があった。



 母が自殺してから、私は間もなく祖父母夫婦に引き取られた。


 彼らは代々、母の故郷である陣西町で小さな神社を経営していた。


 陣西神社の神主を務める利発で教養豊かな祖父と、気立てが良くお節介な祖母のもとで、私は人並みの愛を注がれて育った。


 まともな生活というものを初めて知ったのだ。


 しばらくの退院期間を、彼らの家で過ごしていた時に聞いた話だ。


 陣西に住んでいる人間であれば、およそ誰でも聞いたことのあるカンナ伝説。


 千賀家はそのカンナの血筋を引いた一族であり、その祝福を受けた一族であると言う。


 千賀家の人間。


 特に天女の生まれ変わりとされる長女は、最期の時を迎えるその前に一つだけ願いが叶えられるらしい。


 そんなのは与太話に過ぎないと思っていた。


 しかし、祖父はその言い伝えに関して興味深いことを言っていた。


 カンナ伝説において彼女は奇跡によって町を火事から救ってから、どこへともなく消えることになっている。


 だが実態は違う。


 彼女は火事によって焼け死ぬことによって初めて、町を救うという大願を叶えた。


 カンナが町を去ったというのは、単に彼女の亡骸が燃やされ尽くされて見つからなかったからに過ぎなかった。


 そんな身も蓋もない話が、あの昔話の実情だったのかもしれない。 



 ならば言い伝えが真実だった時に、母は一体何を願ったのか。


 永輔さんと出会って間もなく、私は彼女の願いを知ることになる。


 本来だったら、幼い頃に心臓病を患った人間が成人まで生き長らえるのは珍しい。


 私はおそらく、数年で死にゆく運命にあった。


 ならばきっと、私は母親に生かされていたのだ。


 でもそれは祝福ではありえない。


 娘がいつまでも孤独に病で苦しみ続けて、幸福を手にした束の間に無常にも死を迎える。


 彼女はそう願ったのだろう。


 確証はないが、私には分かった。



 それを呪いと呼ばずして、果たしてなんと呼べばいいのだろうか。

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