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拝啓、廻る季節に君はいない。  作者: 日逢藍花
第三章 秋の断章 -Tragedy-

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秋の断章①-5

 日聖が優等生の仮面を被り出したのは、その次の日からだった。


 元来、成績優秀で素行も悪くなかった彼女は、すんなりと教室の皆を騙すことができたのだ。


 クラスメイトには隔てなく敬語で話しかける。


 逆に話しかけられたら柔和な笑顔を浮かべて、丁寧で心地よい相槌を打つ。


 それだけで彼女は、あっという間に両手で友人を抱えることになった。


 日聖は守備良く、クラスの優等生というキャラクターに嵌まり込んだのだ。


 その建前によって、俺たちは「優等生の好意」という免罪符のもと、公然と皆の前で親しくすることができるようになった。


 皆にもそうしているのだから、俺一人に構っているのも珍しくはないという理屈だ。


 それが根本の原因かは分からないが、いつの間にか彼女はスランプから抜け出したようだった。


 あの日以降、彼女が俺に弱みを見せることは一度もなかった。


 二年生になってクラスの委員長になった彼女は、優等生としての像を盤石のものとした。


 孤高の美人として君臨する日聖愛海の姿は、もはやどこにもなかったのだ。



 それが役者である日聖の演技であること。


 俺がその片棒を担いだ共犯者であることを知る人間は、他の誰もいない。



 あのひどく暑かった、夏の日以来。


 日聖が俺のもとを去っても、二人からその思い出の温かさだけは消え去りはしなかった。


 どうか笑い飛ばして欲しい。


 いくつ年齢を重ねても、いくら喪失を経験しても、それだけは一途に信じて今日まで生きてきたのだから。


 確証なんてどこにもない。


 俺の希望的観測だらけの妄想に過ぎないだろう。



 だけどきっと、それは祈りと言い換えることだってできるはずだ。

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