夏の断章⑦-4
図書委員の業務時間を終えた俺たちは、一緒に下校することにした。
その途中で、いつか日聖と訪れたラーメン屋に寄った。
互いに、まともに友人らしいことをするのは初めてだった。
彼女はあまり食い慣れていないのか、日聖とは違って小ぶりな丼に盛られた少量の麺をぎこちない所作で啜っていた。
初めて見る彼女を横から眺めながら、俺は考える。
すでに俺は、カンナに突きつけられた選択肢に回答を与えてしまった。
幸福な世界ではなく、不条理の世界で彼女と生きる道を選んだのだ。
このまま順当にいけば、俺たちはまもなくこの世界の祝福から見放される。
いずれ俺の身の回りの人物、日聖と康太の身にまで大きな不幸が訪れるかもしれない。
やはり、そんな未来は耐えられなかった。
果たして、皆を幸せにできる方法はないだろうか。
俺は必死に考えた。
脳みそが千切れそうなほど、頭を振り絞った。
そして、与えられていた二項対立を前提から覆す選択肢に気づいた。
それは、考えてみれば実に単純な発想だった。
事象の本源である俺自身が、この世界から消えてしまえばいい。
それで全ては丸く収まる。
今さら、死ぬことへの未練などありはしなかった。
最後にこんな幸せな思いができたのだから、それだけで俺は笑って消えることができる。
もうしばらく経ったら、俺は自ら命を絶とう。
愛しい少女の横顔を眺めながら、俺は心の奥でそう決めた。
しかし、もっと大きな苦悩は別にあった。
昨晩の夏祭り。
自転車に三人乗りをしている最中のことだ。
花火が打ち上がると同時、後ろに乗っていた日聖が呟いた言葉を俺はしっかり聞いていた。
その上で、さも何も聞いていないような振りをしていたのだ。
彼女は、吹けば飛ぶような声でこう告げてきた。
「君が大好きだよ、永輔くん」
第二章 夏の断章 完。
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