夏の断章④‐2
「まどろっこしいことしてんなよ」
幼馴染は、棒つきのアイスを荒々しく齧りながら言った。
その態度には明確に苛つきが籠っていて、もどかしくて堪らないという意思がありありと示されていた。
千賀燎火と友人になれた。
意気揚々と報告した後の一言だった。
その日は珍しく、康太と一緒に下校していた。
いつもは校門の前を千賀燎火との待ち合わせ場所にしていたが(考え過ぎかもしれないが、もしかしたら彼女なりの配慮だったのかもしれない)、今日はいつまで経っても現れなかった。
そのタイミングで友人たちと別れ、たまたま一人で歩いてきた康太と遭遇したのだ。
真夏の殺人的な暑さに音を上げて、近くのコンビニでアイスを買い食いしながら、通学路を二人で歩いていた折だった。
「康太が言いたいことも分かるさ。それでも俺なりにひたすら頑張って、最大限に上手く事が運んだ成果なんだ。一気に片をつけられるほど浅い問題じゃない。一つずつ、地道に解きほぐしていくしかないんだ」
そう言ってから、俺はバニラのモナカアイスを一欠片割って口に放り込んだ。
「俺は面白そうだからお前の話に乗ったんだ。陰気臭い女のお守りをしたくて協力したんじゃない。それを忘れるなよ」
露出したアイスの先端を俺に向けながら、康太は眉を顰めて忠告してきた。
溶けた水色の液が、木の棒を伝って地面に落ちる。
彼の言い分はもっともだ。
俺の不甲斐なさに不平を漏らすのも、分からない話ではない。
俺のやり方では、まだまだ成果は不十分だ。
彼らの善意と好奇心に応えきれていない。
出資者にはそれなりの見返りがなければ、援助なんて簡単に打ち切られる。
それが社会の理というものだ。
図らずもそれを中学生に教えられる羽目になるとは、実に情けない話だ。
「……でも無理だ。過程をすっ飛ばして、今すぐ彼女と懇意になることはできない。その前に過去をすっかり精算してもらって、心から笑って欲しい。なあ、どうすればいいと思う?」
「知るかよ、そんなこと。人は笑いたい時に笑う。面白いと思ったら自然と笑いが出る。それだけだろうが」
胸の内で感嘆するほど、シンプルで的確な洞察だった。
人は自然と笑いが込み上げてくるから笑うのであって、笑いたいと欲が出るから笑うのではない。
「なあ、康太。俺はもっと中学生らしく馬鹿みたいにものを考えて、振る舞ってもいいのかな?」
「馬鹿をやって許されるのは、精々中学までだ。つまりそれまでは、やったもん勝ちだ」
涼しい顔でそう言ってから、彼は最後に残ったアイスの一欠片に齧りついた。
そういえば宮内康太は、そんな穏やかじゃないことを平気で言う男だった。




