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春の断章⑥-4
俺たちはその後、学校の登校路付近で営業している老舗の中華屋に寄った。
かつて新田たちと、よく入った記憶のある店だった。
十一年越しに思い出したが、日聖愛海という少女は見かけに反して結構食べる。
今日も、大盛りのラーメンに半チャーハンと餃子をセットで頼んでいた。
当の本人は「いつもはこんなに食べたりしないよ。でも今回は永輔くんの奢りだから、つい嬉しくなっちゃってね」なんて、弁解かどうか怪しいことを涼しい顔で言っていた。
かつて彼女は、「稽古があるからね。演技をするには、エネルギーがいるんだよ」と言い訳をしていたが、今は受験生になったのを理由に役者としての活動を停止しているはずだ。
しかし、奢る身としては堪ったものじゃない。
中学生に戻った自分の、情けなさ過ぎる懐事情を失念してしまっていた。
単に食い意地張っているだけだろ。
そんなことを言えばまたへそを曲げてしまうに決まっているので文句一つ言えず、結局所持金はほとんど底をついてしまった。
軽くなった財布を尻目に深く嘆息したのは、わざわざ語るまでもない話だろう。




