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拝啓、廻る季節に君はいない。  作者: 日逢藍花
第一章 春の断章 -Comedy-

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20/101

幕間2-③

 それから数日が経った、ある日の放課後。


 校門の前で、日聖が誰かと一緒に歩いているのを見かけた。


 思わず立ちすくんで、自分の目と正気を疑った。


 その相手は男だった。


 しかし、単に日聖が他の男と歩いていたからではない。



 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 世界が静止した。


 隣を過ぎ去っていく学生たちの足取りがひどく遅く感じられ、自分だけが別の空間に切り離されたようだった。


 何かの冗談であってくれ。


 願わずにいられなかった。

 

 俺の存在に気づいたのか、ふと日聖がこちらに目を向けた。

 

 まるで当てつけのように、日聖は小さく口角を上げて長嶋の肩に抱きついた。

 

 長嶋が笑って日聖に唇を寄せ、彼女は無抵抗にそれを受け入れた。



 いつまでもその場に立ち尽くし、俺はようやく悟った。

 

 単純な話だ。


 俺の存在は、いつからか彼女にとって重荷でしかなくなっていたのだ。


 実に傑作じゃないか。


 いつまでもお荷物である俺を、彼女は捨てきれなかった。


 あの決別の日まで、俺はずっとその好意を身勝手に利用し続けていた。


 彼女に好かれるどころか、いつからか恨まれてさえいたわけだ。


 こんな形で仇討ちをするほどに、福島永輔は彼女にとって許しがたい存在らしい。


 生を受けてからこれまで一番美しく、価値があると思われた記憶の数々は、その時から一番忌まわしい記憶へと変貌した。


 あたかもアヒルとウサギの判じ絵のように、その見え方は一瞬で切り替わったのだ。



 その日の晩、俺は布団に顔を埋めてひたすら泣いた。

 

 嗚咽の声が部屋の外に漏れるのも気にせず、みっともなく泣きじゃくった。



 気づけば手元には、もう何も残されていない。

 

 俺は、いよいよの無一物だった。

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