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終章-②
高校に入学するまでの長い休みを利用して、俺は千賀燎火が確かに生きた証拠を残そうと思った。
今までこの世界で生きていて、起きた出来事や感じたことを日記にまとめる習慣ができていた。
それを編集して物語という形で残そうとしたのだ。
物語を書き上げるのは、文化祭用にあり物の台本を編集することや手紙を書くといった仕事とは比べ物にならないほど、並大抵の努力では成せない作業だ。
それでも俺は春休みの間中、ずっと筆を進ませ続けた。
誰よりも不器用で、誰よりも優しかった、何の変哲もない千賀燎火という名の女の子。
彼女が生きていたという証拠を、この世界からなくさないために。
もうどこにもいない彼女に、どうか届きますように。
かくあれかしと祈りながら、俺は言葉を紡ぎ続ける。
もう数行だけ言葉を書き入れるだけで、この物語は完成する。