89日目「めでたしめでたし」
89日目「めでたしめでたし」
やっと…やっと、言えた。
包み隠さず、詰まる事無く…俺の気持ち全てを…君に伝えることができた。
大好きだフィアちゃん。
結婚しよう。
たった二行で…文字に表せば、ほんの数文字に収まる言葉…。
だけど、それが俺にとっての精一杯の言葉で…全力を尽くしてまで伝えたかった事だ。
他に何もいらない。
…なーんて言ってるけど、本当は色んな言葉を考えたさ。
そりゃそうだろ…?
だって、初めてのプロポーズだし…絶対に成功させたいじゃん???
え?その考えていた言葉の候補を書けって?
絶対にお断りします。断固としてお断りします。
全ての思いついた言葉は、俺の心の中で次第に忘却されていくまで封印しておきます。
思い出にはならないさ…ってコト!!!
そして、思い出の中でじっとしててくれッ!!!!!!
…ハハ、カッコが付かないよなぁ…。
まるでプロポーズ後の日記だとは思えないだろ?
でも…これが俺なんだな。
勇者を辞めて、気づけたよ。
俺はエレ・アルタイル。
たった一人を愛する為に今を生きている、お調子者で…時々カッコを付けるような、ごく普通の人間だ!
だから…
この旅も、日記も、辞める事にするよ。
もう俺には、フィアちゃんが居る。
そして…大切な仲間達もできた。
自分の想いを日記に記録して消化するよりも…その想いを、みんなで分かち合ったり…共有したりしていきたいんだ。
どんな些細な事だって…フィアちゃんと言葉を交わして、仲間達と話し合って何事も解決していきたい。
そうして…また少しづつ心の距離を埋めていきたいって…思う。
だから…俺にはもう、日記なんて必要無いんだ。
ここで俺の英雄譚は終わる。
でもきっと、これからの未来で大切な出来事が起きた時は…その都度日記に記して、大切な思い出として残していくかもな。
まぁ…今の俺には、まだどうなるか分からないけどね。
あと…旅は、またいずれやりたいと思ってるよ。
でも、その時は。
勇者とか関係なく…キャンプの感覚で遠出できると良いな。
まだ行けてない国とかある訳だし。
知ってるか?
この世界には…王様が居ない国ってのがあるらしいんだぜ?
まだまだこの世界にも、俺たちの知らないことが盛り沢山あるって訳だ!
そう考えたら、これからの将来が楽しみになってくるな…!!!
よーし、それなら…こうしちゃいられないッッ!
さて、出発しようか。
いや…帰ろうか。
全てが始まった国…
エレイズ王国へ!!!!
日記のページは閉ざされる。
そして彼は、その本を大切そうに懐へと仕舞った。
次回 最終章
≪エレイズ王国≫