79日目「誰が為に」
79日目「誰が為に」
俺だ、勇者だ。
‥‥フィアちゃん、機嫌直してくれたかなぁ…直してくれる訳無いよなぁ…。
本当はさ…この異なる世界を、フィアちゃんとも一緒に歩きたかったんだ。
此処には、見たことが無いような未知なる物が沢山あって、二度とできないかもしれないような貴重な体験ばかりでさ?
建前はそりゃあ生存者の救出だが…どれもこれも気になって仕方ないんだよ。
その度…思うんだ…。
これを見たら、フィアちゃんがどんな反応をするのかって…。
どんな顔を、どんな行動を…俺に見せてくれるんだろうってな。
でも、今の俺の傍に…フィアちゃんは居ない、、、。
手を握る事も、顔を見る事さえも、、できない。
今の俺には、フィアちゃんを触れれる権利なんて無いんだ。
拠点を出発する際に、アヴァローグさんに預けて来たからさ…ずっと心配に思いながら歩いてるんだよ。
アヴァローグさんから
「ワイにぃ…任せとけぇ!!!」って食い気味に言われたから、きっと上手くやってくれてると思うけど…。
…いや、違うな。
アヴァローグさんを信じよう、上手くやってくれてるんだって。
いつだって仲間を信じて進むのは、勇者としての基本だからな!!
…でも…
本当は、俺が対処しなきゃダメな事の筈なんだ…。
この問題を何度も先送りにし続けていたら、、いずれ俺は、絶対に後悔する。
そろそろ…俺は、フィアちゃんとの関係をハッキリさせないといけない。
勇者として誰かの力になりたい
自分の世界を脅威から救いたい…救わなくちゃいけないのに…。
でも今は、、大切な人の為に生きていきたい…
この力で大切な人だけを守っていたいって思ってしまうんだ…。
俺は、どうすれば良いんだ、、。
、、考えながら進もう。
その葛藤は、誰が為に。
それでも進み続ける彼の足は
とある場所で、突如として静止する事となる。