74日目「勇者らしさ」
74日目「勇者らしさ」
俺だ、勇者だ。
今、落ちていた大きな瓦礫に座って休憩中だ。
この世界に来てからと言うもの、、初めて見るような物や事を目の当たりにするから…凄く俺にとって刺激的な時間になってるよ。
何にせよ…こんな場所、早く立ち去った方が良いかもしれないなぁ…。
モンスターが一匹たりとも怖いくらい出てこないし、、転がってる死体の量も、壊された建造物の数も、進んでいくごとに増えているような気がするんだ…。
しかも…これは、単なる憶測なんだけどさ…。
この世界も、俺たちの世界と同じように、、誰もが平和に暮らせるような場所だったんじゃないかなって…そう思うんだ。
だってさ…今倒れている人を見たら、変な袋を持ってるけど…でも、俺たちの世界にもあるような野菜らしき物が入ってるんだぜ…?
ほら、あそこの人は、彩り豊で綺麗なご飯が入った箱を持ってるし…。
あの子は…大きなお人形を抱えてる…。
きっとこの場所は…
滅んだんだ。
…誰が…こんな事を…。
俺たちの世界じゃ無いのかもしれない…だとしても…これは…あまりにも酷い。
モンスターの仕業か…?
でも…こんな世界が滅びるような事を引き起こす程に凶悪な奴なんて…。
‥‥魔王‥‥。
王様からしか聞いた情報しか持っていなくて、何も確信が無い……だけど。
モンスターを統率する奴が一人いるとするなら…そいつだけなのかもしれない。
何者かの正体も、どんな人間かも、目的も分からない…
なんなら、ここまで殆ど忘れてた…!!
でも…もし、この場所が滅んだ元凶であるならば…
俺は、、絶対に許せない。
俺たちの世界が、此処に生きていた人たちが受けた傷を
全て返してやらないと、気が済まないかもしれない…。
でも…何でだろうな
少しだけ 晴れやかな気分だ。
まるで、この光景を…。
やめよう。
少しだけ周りの瘴気にやられてるんだ。
こんな気分…俺らしくも無い…。
名ばかりだろうが、、一応勇者なんだ。
…休憩もここら辺にして、少し散策した後に一度戻ろうか。
で、、さ?
俺、この状況でどうすれば良いと思う…?
何って…。
フィアちゃんが俺の膝枕で寝てる状況の事…。
な…撫でたい…。
でも…起こしたら悪いしな…。
えと…耳掃除とか…どう?
でもなぁ、やったこと無いから自信無いし…。
そりゃ…キスする間柄になったんだから、そろそろ俺だって積極的になりたいぞ…!?
でも…いざやるとなると…変に心臓がバクバクするし、、呼吸も、荒くなるしでさ、、パニックになるんだよ…。
いや、キスした時はさ?
あの時は…その…少しだけ、、フィアちゃんを求めたって言うか…欲しがったって言うか…ゾーンに入ってたというか…
とにかく!!!!!!
大好きだって事は変わりないんだよ!!!!!!!
偽る。
そして、口元を隠す。
何故か定かで無い心情に、剣を突き立てる。
それが彼にとっての
≪勇者らしさ≫だから。