67日目「おやすみ。」
67日目「おやすみ。」
よう、勇者だ。
元アジトの2階に上ったところだ。
残酷な惨劇が広がっていた1階とは違って、2階はそれほど被害を受けている箇所は見当たらない。
…だが、脳髄まで矢を貫かれたまま倒れている者が数人居るけどな…。
とは言え…目を開けたまま死に絶えているのを見るのは、流石に心が痛くなる。
はぁ…敵であろうと、こんな残酷な死に方はして欲しく無いもんだ…。
目を閉じてやろう。
もう、こんな惨劇なんて見続けたくないだろ。
ゆっくり休めよ。
お前の人生、どんな道を歩んだのか俺には分からない…
だけど、お前だって一人の人間だ。
きっと大切な家族が居て、友人が居て、恋人が居たかもしれない。
でも何より…自分という存在がこの世界にあって…お前を必要としてくれる人が居たんだろ?
このアジトを見回るだけで伝わってくるよ。
床に散乱した皿やタンスに仕舞われている数々の料理道具…散らかったベッド…ボロボロの剣や防具の数々。
そして。
団員メンバーの人たちが笑顔で写っている写真。
楽しそうじゃねぇか、酒樽蹴ってたり酌み交わしたりしててさ。
それだけでも良い。それだけでも…この世界でお前が生きたという証になるんだ。
ならもう良いじゃねぇか。
これからは地獄だろうが天国だろうが、死んだ後なんだから…楽しく過ごしてくれよ。
ここで死を共にした元アジト団員と一緒に、な…。
もう寝ろ、おやすみ。
…なんでだろうな
目を閉じてやった時、不意に笑ったように見えたんだ。
気のせいだよな…?
あ、フィアちゃんが階段を上ってきた。
…さっきな、俺が目を閉じてやった団員をフィアちゃんが担いで1階に降りて行ったよ。
どうやら無残にも倒れた団員の遺体を外の土に埋めて供養してあげてるらしい。
手伝おうか?…なんて言ったけど
「これは…私がやらなきゃいけない事だから…」
って返されてしまったよ…。
でも流石に頷く他無かった。
ここは俺の介入するところでは無いと思ったから。
何せ…
目が…訴えかけてくれたんだよ。
きっと…此処にいる彼らもフィアちゃんの仲間だったから、自分の手で供養してあげたいんだと思う。
なら尚更俺が踏み込む世界では無い。
【未練】を断ち切って…自分を変えようと、強くなろうとフィアちゃんも必死に頑張っているんだ。
それを邪魔なんてしたくない。無下にはしたくない。
確かに目元は震えてて、今にも涙を流しそうな程に苦しそうだったさ。
だけどな…
俺は一人の男として
フィアちゃんを信じて待ってるよ。
だ!か!ら!…今の俺にできる事は元アジト内の調査しか無いって事だ。
今、2階の奥の部屋に来ているんだが…
…おいおい
この一つのドアだけ何一つ傷が付いてないじゃねぇか…!?
怪しすぎだろ!?
3,2,1、で突入するぞ?
3,2,1,2,3,141592653589793238…
はい、真面目にやります。
てかカウントダウンを日記で書くってなんだよ。
はい失礼しまーす!!!
その部屋に入った後の勇者だ。
…さっきまで、悲劇のような元アジトに居たというのを忘れさせてくれるような部屋があった。
真ん中に大きなソファが机を間に挟んで2つ、出入口のドアと反対側には何やら大きな机が一つ。
その大きな机の後ろにあるのは…隅から隅まで本で埋め尽くされている棚…。
ここは本当に…宝奪団が使用していた部屋なのか…?
それすらも疑問になるような綺麗で紳士的な色合いで、ゴミ一つ無い綺麗で整った部屋。
後でフィアちゃんに聞くと、この部屋は【宝奪団長】が以前使っていて、誰一人として立ち入りを許されていなかった場所らしい…。
でも、フィアちゃんは特例で入れていたらしいけど…何で他の部屋と違って傷ついていないのかは、フィアちゃんにも分からないらしいぞ…。
謎は深まる一方だなぁ
でも、もっと謎なのはな?
本棚の本が全て、俺の持っている日記と同じような見た目をしてるんだよ。
な?不思議だろ?
この手帳ってそんな人気の品物なのか…?
まぁでも…特に他で調べられそうなものは無さそうだ。
机にも鍵が掛かってるようで開かないしな!
他にも部屋が無いか見て周る事にするぜ。
失礼しましたー。
敵でも味方でも
一人の人間というのには変わりない。
再び彼は剣を握りしめる。
???まで残り
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こんみか、神果みかんです!
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では♪