46日目「悪女」
46日目「悪女」
でも…こうして、あんたの隣に居るのも最期かもしれないわね。
私、聞いてしまったのよ。
キッチンで料理していると、エルフ長の話声が聞こえてきたの。
エルフの館に、ノートリアス王国の軍勢が攻めてきているんだって。
‥‥その話を聞いた時に
きっと、その原因は私にあるのだと察した。
いや、そうにしか思えないわ。
何せ奴らの目的は
たった一つ
【私を取り返し、処刑する事】
なのだから…。
だから、これは私の問題。
私が解決しなくちゃいけないの。
私…ノートリアス王国の兵と戦うわ。
だけど‥‥勇者、あんたには眠っててもらうわ。
そうよ…私って、どこまで行っても悪い女なのよ。
さっきのご飯に睡眠導入剤を入れておいたわ。
これで、当分は目を覚まさない筈よ‥‥。
…本当はこんな事…したくなかった!
私が今、生きていられるのは勇者、あんたのお陰だって言うのに…
これじゃあ、恩を仇で返してるようなもんじゃない…
だけど、こうしなくちゃいけないの!
戦場に行くと言ったら、きっとあんたは付いてきちゃうから‥‥。
何を言っても、私を守ろうとしちゃうから…
バカなあんたは、目を覚ましちゃうかもしれない。
だから、これだけは書いておくわ。
私を信じて…勇者。
そして、こんなバカな私を…愛して…。
もしも私が死んでも、これだけは覚えておいて
貴方を愛した…世界で誰よりも貴方だけを愛した、悪女が居たんだって。
私の名前は、ディアノ・フィア。
ディアノ家、最後の少女であり
元ディアノ王国、次期皇女。
貴方になら…いや
貴方だから知って欲しい。
私の、過去の話を…
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47日目「ディアノ・フィア」