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38日目「黒と白」

38日目「黒と白」

どうしよう…


私…私…ドラゴンを倒しちゃったわ…


そんなつもりじゃなかったの…


ただ、追い返そうとしただけで…


ただ、ドラゴンが立ち去ってくれればいいと、そう思ってたのよ?


一度ドラゴンの技をかわして、膝を剣で斬ってみたの…


すると、「スパンッ」って音が聞こえたの。


その音が、元気なドラゴンの最期だった…


片膝が…まさに一刀両断。


身体と片膝が、いともたやすく分断されてしまったのよ…


大きな音を立てながら、頭から崩れ落ちていくドラゴン…


そして、前のドラゴンと同じように


「イタイ…イタイ…モウ…コロジテ…」


と、悲痛な声を残していたわ…


だけど、私はすぐに斬ることはできなかった…


これじゃまるで、弱いものイジメしてるみたいじゃない…


罪悪感ばかりが、私の胸に積もっていった…


だけど、このまま痛いのを我慢させてる方がよっぽど苦しいだろうとも思ったわ…


生憎この世には、どんな傷も完璧に癒えるような魔法も無ければ、その知識もない。


この世界には「魔法は限られた者のみが使える」


なんて、ファンタジーみたいな逸話も確かにある。


だけど、現実はそうもいかない。


だから私は…ドラゴンを殺したわ。


…あの世で、どうか幸せになって欲しい…


そう願うわ。



死んだドラゴンを見ていると、宝奪団に居た頃を思い出すわ…


犯罪を遂行する為には、どんな手段だって使う非人道集団…


時には、子供を


時には、ご老人も


時には、困窮者も


時には、王族も…


犯罪の為に平気で人を痛めつけて、性的欲求を満たして


最終的には、使い物にならなくなれば捨てる。


私はそれを、見ている事しかできなかった…


ただ、言われた仕事をこなして


時々、拷問されて


仕事して


拷問されて


仕事して


拷問され…て…



私は、弱い立場の人間だ。


生き抜くために必死だった。


呻き声も


喘ぎ声も


叫び声も


喚き声も


私は、耳を閉じているしかできなかった…



そんなどうしようもない私を救ってくれた、バカでどうしようもない勇者。


彼の優しさに触れて、知ってしまったのよ…


人を好きになる感情を…


だけど


私は、犯罪者。


貴方は、勇者。


貴方の寝顔に触れたいのに


それは叶わない。


違う。叶えてはならないのよ…。


だって、黒と白は相容れない色なのだから…。



だけど、今だけ


今だけは、貴方の傍に居たい。


貴方の寝息が、とても心地いいの…


聞かせてよ…


あなたの寝息も…



あなたの本心も…。

…(ノД`)・゜・。

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