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30日目前編「バカ」

30日目前編「バカ」

…なんで


何で私なんかを助けに来たの…!?


私は助けてなんて一言も言ってないのに…!!


私は勇者、あんたの事を利用したのよ!?


…ええそうよ、私があんたの防具を盗った犯人よ


売ったら高値が付きそうだし、生きていけるだけの金が手に入ると思ってね。


あんたが借金をしていると知っておきながら、私は盗るしか選択肢が無かった…


なのに…


なのに!


何で、私なんかを助けたの!?


あんたの盗るべき物は防具の筈でしょ…?


なのに…私なんかを…


このバカ勇者!!!!


あんたは、どこまでバカなの!?


こんな罪人の女を助けるよりも、あんたには大切で守るべき物がある筈でしょ!?


こんな外道の道を歩む事しかできない女よりも、あんたは善人を貫ける筈でしょ…!?


こんなゴミで…どうしようもなくて…死んだほうがいい女よりも…あんたは…輝ける筈…でしょ…?


こんな…


こんな…。



…あんたは一体、何を考えてるの…?


…そうよ、きっと私に罪を償わせる気なんだわ!


防具を盗られた腹いせに、私の事を奴隷にして


家畜にして


酷いことをして


恥辱を与えて抹殺する気なんだわ‥‥!


私に居場所なんてないのよ!


いつだってそうだった!


あいつだって、私で弄ぶ気なんだわ…!!!


やっぱりあいつは、変態クズ勇者ね!


私と同じ外道よ!!


…でも


あいつの笑顔はいつだって純粋だった。


子供のようにキラキラした目で…


表裏の無い、そんな真っ直ぐな…奴で…


‥‥そんな事、あいつにできっこない


できる筈がないのよ


ねぇ、教えてよ…勇者…


私なんかを助けて、どうしたいの…?


…そうよ、私と別れた後の日記に書いてるかもしれないわね


少し、読んでみるわ…





…日記、読んで来たわ


勇者が…こんなに、私の事を想っててくれていたなんて…


…ねえ勇者


…私って、生きても良いの…?


こんなゴミみたいな私でも…やり直せるの…?


もう、私って…一人じゃないの…?


…そっか。


これじゃあ、塞ぎこんでる私の方がバカらしいじゃない。


はぁ…バカ


いいわ、私も教えてあげる。


私ね、最初は誰よりも自由で、誰よりも生き生きしているあんたことを憎んでいたわ。


こんな奴が勇者である事にも失望していた。


勇者はもっと、白馬の王子様みたいに


かっこよくて、正義を掲げて、誰よりも頑張り屋


そんな想像ばかりしていた…


そして、毎日のように私を助けにきてくれる…


叶う筈のない妄想ばかりして、そのたびに涙を流していたわ…


だから私はあんたの事が嫌いだった。


その理想を壊されたこと。


助からないと絶望したこと。


幻想が潰えたこと。


その全てに私は…怒りを感じるようになった。


防具を盗ったのも、あんたが地獄に落ちればいいと


そんな事ばかりを思ってやったのよ。


全ては、あんたを嫌ってたからよ…




だけど、あなたは助けに来てくれた…


私の涙に気づいてくれた…


助けに来てくれた時…


あの時のあなたは王子様だった。


あなたが私だけの白馬の王子様だったのよ。


‥‥ふふっ、私を助けたこと、後悔しても遅いわよ。


これで、私もあんたも同罪ね♪


だから、覚悟してよね





バカな勇者さん…♡

きゅんです(*'ω'*)

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