エビチリ
昼過ぎ、ちょっと一服して、
窓から空を見ていたときだった。
飛行機雲が二本、交差するように
東西に伸びていた。
箸が転がっているようにも見えるし、
麺が伸びているようにも見える。
お昼はしっかり、エビチリを
食べたというのに、どうしてだろう。
食欲があるということは、
健康なことだし、幸せなことだ。
それを満たせるとしたら、
もっと、幸せなことだ。
おまけに、空を見ていられるなら、
これ以上、何を望もうか。
飛行機雲の先には、飛行機がある。
飛行機の先には、空港がある。
そこで、見知らぬ人々が呼吸して、
笑って、怯えて、前を向いて、
何かを食べて、でも、私のことを
思うことはない。
行ってみようか。あなたは遠い。
行ってみようか。砂漠の町へ。
いくらでも、飛行機雲の先へ、
いくらでも、行けるよ。
エビチリの幸せに、麻痺するのが、
また、怖くなってきた。
ああ、甘い物が食べたくなってきた。
ああ、やっぱり、幸せに麻痺している。