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追放

ステータスが頭上に表示された。


もちろん魔法適性は『無』スキルは『鑑定』だけ。


別に長時間掛けて見るほどの内容では無いのだが老人や周りの人は未だに信じられないと言う表情でステータス画面を何回も見直している。


魔法適性『無』とはそんなに凄い物なのか?

それとも・・・・・


「アオハラ殿、これは本当に言いづらい事なのだが・・・」


「ん?何ですか?」


「魔法適性が『無』というのは魔法が使えないという事なのだ」


「っ!」


そうか、改めて言われるとキツいが、まぁそんな予感はしてたんだ。


「そうですか・・・・」


「その上にスキルが一つだけとなると戦力においては市民と同等なのです」


市民と同等・・・魔法が使えないだけで無く、素の強さでさえこの場にいる誰より劣っているというのか。


「何だ、青原は市民程度のカスなのか?」


すかさず強田が占めたと俺の弱みにつけ込んできた。


「市民なんかがここにいる意味はないよな?早くここから出て行ったらどうーー」


しかし、続く金田の追い打ちを、俺は遮った。


「出ていきます」


 俺の言葉に、そいつらは顔を歪め絶句した。


「ここに居ても仕方ないと思うので。一応聞いておきますけど僕を元の世界に戻すことは出来ないんですよね。あなたも市民と何ら変わりない人間を城に置いておきたくないでしょう。今は魔王軍との戦争で忙しいみたいですし、僕程度を匿う余裕はないみたいなので、出ていきます」


 預言者と名乗った老爺へと、俺は自虐を含めて確認の質問を投げかけた。


しかし本音はあいつらと一緒に居たくないというものだった。

 

これから先の生活なんて知らない。


 だが少なくともあいつらにいじめられて苦しむよりは、街のどこかで野垂れ死んだほうがずっとマシだという確信が心の中にあった。


「う、うぅむ、こっちで呼び出しておいて申し訳ないのですが、もとの世界に戻すことは出来ません。これは神の意志であって私がどうこうできる問題では無いので。しかしアオハラ殿が出ていきたいと言われるのであれば、せめてこの先の生活の資金を受け取ってください」


老人、預言者ジンは、俺の予想道理の返事をした。しかし資金をくれるのは嬉しい、これで野垂れ死ぬ可能性も減っただろう。


「わかりました、では、さようなら」


いつも運命とは残酷だ。そう俺は思った。


俺の様な弱い奴の見方をせず、他人を踏みにじる様なクズに肩入れをする。


でも、これを機にあいつらと離れられるならそれはそれで良いのかもしれない。


「じゃあ、俺は行くよ」


俺は大人しくこの場から立ち去ろうと足を進めた。もちろん元の世界で他人と関係を持とうとしなかった俺を引き止める奴は居ない。しかし


「青原が行くなら俺たちも行く」


俺に同行しようとするものが四人いた。

オタク組のみんなだ。


その提案に預言者ジンは少し考え込むと


「岡村殿と志村殿は良いが回復魔法が使える川村殿と三つのスキルを持つ木村殿はここに残ってもらう」


「なっ?」


川村は残れと言われた事に反対しようとしたが俺は止めた。


「川村、向こう側は資金もくれた上で二人も勇者を諦めてくれたんだ。お前はこっちで魔王討伐を頑張ってくれ」


俺の言葉に川村は何か言いたげだったが今はこの選択が一番良いと思ってる。川村まで追放される必要は無い。


「じゃ、」


岡村と志村も一緒に、今度こそ俺たちはその場を立ち去った。


   □


城門までは女騎士が連れて行ってくれた。とても美しく少し閉じた目からは幻想感が漂ってくるお淑やかな人だったが今の俺には何も感じなかった。


「どうか行く先も御無事で」


女騎士はそう言いながらお金の入った袋を渡した。


「ありがとうございます」


俺は袋を受け取り、城外に足を踏み進めた。

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