提案
「Cランク、ですか?」
Cランクといえば今の俺のランクがFランクだから・・・・三つもランクが上がるってことか!?
「そんなに軽いノリでランクを上げても良いんですか?」
「あぁ、本来は倒した魔物の数などの功績でランクを上げるのだが、ギルドマスターである私の判断だ。問題無い」
そうか、ついに俺もCランクか、倒せるか分からないけどさらに強い魔物を狩ることで報酬も上がるだろうし、レッドゴブリン戦で真一と玄太のレベルも上がっただろうから生活が安定しそうだな。
俺が一人歓喜しているとクラインさんが続けた。
「だが、たった今君の話を聞いて気持ちが変わった」
しばらくの沈黙が場を包んだ後、クラインさんは言った。
「君の冒険者ランクをBに上げようと思う」
「Bランク!?」
更に予想の上を行く様な発言に驚きを隠せないでいると、クラインさんは遺憾な表情で続けた。
「しかしBランクにランクアップする際は試験を受ける必要があってね、こればかりは私にもどうしようもないので、君には試験を受ける権利を与えようと思う」
試験・・・響きの悪い言葉だ。まず元の世界で出来損ないだった俺は入試にしろ定期テストにしろ試される事が嫌いだった。失敗するって分かっているのに身体中を蝕むあの何とも言えない緊張感。まだ先の事だと分かっていても自然と顔が硬ってしまう。
そんな俺を見兼ねたのかクラインさんが励ましの言葉をかけてくれた。
「何、試験といっても指定の場所で三日間サバイバルするだけだ。命の危険、が無いわけでは無いがレベル20相当の魔物を倒せる君なら問題無いだろう。」
「そう、ですか」
確かにそうだな。あの変異種を倒したんだ。もっと自信を持て。
「そうですね。頑張らせていただきます!」
俺が元気になった姿を見てクラインさんは満足そうに頷くと時計をチラッと見てからある話を持ち出して来た。
「ところで、試験を受ける資格があるか試すわけでは無いのだが、一つ頼まれて欲しいことがある」
「何ですか?」
「数日前からの事らしいが、ここの酒場で冒険者から金を巻き上げる輩が現れたらしいのだ」
冒険者から金を巻き上げる!?良くそんな度胸を持っている奴がいるもんだ。陰キャの俺には到底無理だな。
「では、僕にその強盗を撃退して欲しいと言う事ですか?」
クラインさんはそうだと頷くと言った。
「現場に立ち会った冒険者からの報告によると丁度昼頃、つまり今の時間帯にそいつが現れるらしい。以前にCランクの冒険者が撃退を試みたそうだが返り討ちにされたそうだ。今後もそいつが現れる様なら私が動こうと思っていたのだが、そこに丁度よく君が現れた、と言う事だ」
「なるほど、分かりました。・・・早速酒場の様子を見て来ます!」
「あぁ、よろしく頼むよ」
俺は頼みごとをこなす為、部屋を出た。
途端に酒場から喧騒が鳴り響いてくる。
「ったくよぉ~あのジジィ、俺は魔王討伐を手伝ってやってるっつーのに1円も寄越さないなんてよぉ~あり得ると思うかぁ?」
ん?この声、何か聞き覚えが・・・
俺は胸の中に渦巻く嫌な予感を押し殺して酒場に駆けつけた。
その瞬間、「嫌な予感大当たりぃ~」と頭の中でファンファーレが鳴り響いた。
「強田・・・龍!?」