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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

今日から学校と仕事、始まります。②莞

爪切り

作者: 孤独

爪が伸びる、髪が伸びる、血が流れ、電気信号が体内を駆け巡る。

人はたったそれだけでも失うモノが出てくるものだ。

だから、どんな状況であろうと。


「失うモノはない」


そんな言葉を発する事、実証する事ができない。

自らを意思や精神ココロの放棄を叫び、自称した異種生物となって、人間達に牙を剥く。

後生まれの者、老いたる者、近くにいた者を無差別に襲い。かつて自分がそうだった生命体を屠ったという後戻りできない、狂気と変貌に酔いしれていても。

人はその数と武器、知識、たった一つの存在を残酷に苦しめる事に長け、生命体の頂点などと思い上がりを世界に提唱するほどの群衆。

変わった異種生物を捕え、人のように扱いを改める。


「失うモノはない」

「……その言葉は、正しいでしょうか?君は何も知らなかっただけでは?」


それでも異種生物は己が人とされる事を否定する。

構わないとそいつを任された、伊賀吉峰はその言葉がホントに正しいか。


パチンっ


伸びた足の爪を切っている時だった。

1週間以内に彼を人間である事を本人含め証明させ、自称させること。

とても簡単なことだった。


「失った事がない生き方で、死にましょうか」


◇       ◇


刑罰というあまりに温い規則。

伊賀は部下共に檻の中に入り、ご用意していたある物を錠をつけられ座り込む異種生物に見せる。


「あなたが殺した人達の肉片、血液……ようは遺体です」

「だからなんだ?」

「あ」


思い出したように、異種生物が見上げる姿勢がとても人らしかったため。


「顎を地面に着けてください。それでは人を語るようです」


部下達が異種生物をひっ捉え、床に抑え込むようにし、顎をつけさせてそのらしさにさせ。


「私、人と語ってないんで。で、これがあなたの殺した人達の死体の部分でして、生物とは他の生物を喰らって生きてきた。遺伝子に組み込まれてるわけです」


大きめなスプーンで腐臭漂う遺体を掬って、


「食事はこれと自給自足でいきましょう。猛禽類らしく、生でいきましょ」


腹が減っていないと嫌がる異種生物の口へと運んでいく。


「飲み物は極上な血液です」


私って優しい。そう伝えるような笑顔で、彼の中に含んでいく。殺された者達の怨念は体内で暴れ狂うだろう。そんな他者が思うムゴさなんて、稚拙なものだった。むしろ、同時に終わらせると語りたい。


「丸坊主にしていますが……スネ毛とワキ毛、○○毛も濃いですね。生やしてちゃダメじゃないですか。あなたは失うモノがないんですから」


どーいう意図か分からないが、暴れる異種生物を薬で動けなくさせてまで、その生物にある毛を削ぎ落した。


「まるで草ですね。食べさせてあげますね」


掃除機で吸い取ったゴミそのものを、捨て場所を間違えたかのように異種生物の


「あ、やっぱり鼻から入れてあげますよ。蠅が鼻の穴に入るくらいに思ってください」


身体の中に詰め込んでいく。

吐き気、嫌悪、嘔吐の、それら全てを合わせても足りない事。人ではないという事、失うモノがないという事を自ら血を流し、立証しなければならない。一瞬にして、外道だなんだと思えど、それらには異種生物が意識的だろうが、無意識的だろうが関与していること。


身震いでは足りぬ恐怖に失禁。


「あー、ダメダメ。これからの自分の飲み物を合図無しに垂れながしちゃ、採取できないんですよ~。計画性とか理性ないのは織り込み済みですが……」


伊賀はその間、異種生物の全ての爪を切りつつ。


「爪の垢を煎じて飲ませるとか言うんですけど……やっぱり面倒なんで、剥がしておきますね」


生えてくる事ができるモノを全て取り除き、生み出すモノがないように身体に戻させる。


「爪は両耳から詰め込みましょう。糞尿はケツの穴からいきますか」


ほざいた、失うモノは何もないって奴を、身体に叩き込ませる。たったそれだけの事なはずなのに、異種生物の全身は青ざめ、恐怖と黴菌によって蝕まれ、


「に、人間に戻らせてぇぇっ!失いたくないいぃぃっ!!」

「?失ったモノは返ってこないと知ってるでしょ」


息耐える。

生物が本当に生物を失う瞬間は、死。それだけである。



◇       ◇



心臓が止まり、脳が止まった。しかし、それらは別の身体があれば稀に動き出す事ができる。

生きている人間で試すにはこれからの事が残酷過ぎる故、止めた者のみを預かって使う。


「はーはははははっ!良いモルモットじゃのぅっ!」


ポココココココ


培養液の水槽に入れられた異種生物の心臓、脳は。人間という機能を失い、五感の多くを奪われても意識だけは存在していた。本当に彼は異種生物と言える姿となり、人間に飼われるという人間を頂点とした世界にあるべき生物の地位にした。


「伊賀、見てみよ!」

「見てますよ、フレッシュマン博士」


爪を切りながら、新しい玩具の概要を聞く伊賀であったが、自慢話が大半な辺りロクでもないと察していた。


「儂って天才過ぎるじゃろ!生きてる心臓と脳の意識を拾える液体作るとか、マジで天才じゃわい!」

「自分で言いますか。あなたの知識はともかく、知恵は皆無ですよ」


雑に水槽を揺らす辺り、その程度の生物としか認識されていない。

脳が発する電気信号をキャッチし、信号の内容を読み取ってしまうというもの。

モニターに映るものは、信号を読み取り意識に近い言葉にするのがやっとのものである。


【痛い、痛い、揺らさないでぇ、死なせてくれっ……】


「儂って凄くね?これを使えば何度でも、お前の好きな拷問ができるんじゃぞ!!感謝せぃ!」

「記憶とかを抜き取れないなら、そんなの不要な拷問器具ですよ。捨ててください」


自分の身体が作ってしまう爪とか垢のように捨てられ、流されるべきもの。

人であるなら、捨てるものを知っておくべきことだ。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 『読解力が無い者』vs「語彙力の無い者」による【生温いコント】ですねぇ。(笑) 私なら『相手に人間だと認めさせる』なんて【生温い真似】をせず、 「お前が人間じゃないなら、殺しても殺人には…
2019/09/26 23:00 退会済み
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