表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私のとなりに姫がきた  作者: さへ
第2章
31/32

忘勉会

簡単な登場人物紹介を0話に挟みました

 火曜日から金曜日までの四日間に渡りテストが行われた。

 テストは特に失敗することもなく順調に進んだけど、それとは別に私には一つ懸念があった。

 唯が泊まったあの夜から、どことなく距離が離れているような、そんな気がするのだ。

 身体的な距離でなく、精神的な距離で。

 こんなの気にしてるのは私だけで、唯はなんとも感じてないかもしれないけど、それでもどうでもよくすることができずにいた。


 そんな中でもテストは恙無く進み、金曜日の昼下がりとなった。

 テスト後は授業がないため早めの下校時刻だ。



「ではみなさん、参りましょうか」



 眼鏡を掛けた玲ちゃんが、普段とは違った口調でそう言った。

 普段はコンタクトらしいけど、今日はインテリな感じに見せるために持ってきたらしい。



「ええ、行きましょうか玲子さん」



 こちらも眼鏡をかけた春ちゃんが、玲ちゃんと同じように、いつもとは全く違う口調で言った。

 いつものおっとりはどこ行ったんだろう。それに伊達眼鏡なんてどこで用意したんだ。



「お待ちなさい玲子さん、春さん。あちらを見てごらんなさい、まだ赤城さんがお支度の途中でございますわ」



 そう言ったのはなんと杏ちゃんだ。伊達眼鏡はしっかりつけてある。

 それにしても、杏ちゃんこんなに長く話すんだ、なんて変に感心してしまった。

 だって杏ちゃんいつも話すとしても一言とか二言だけだから。

 何が起こってるのかはよく分からないけど、とりあえずレアだってことは理解した。



「あら本当ね。私としたことが見落としてしまうなんて」


「ふふ、玲子さんたらおっちょこちょいなんだから」



 玲ちゃんと春ちゃんが、腕を組み、片手で髪をいじりながら話す。

 おほほほほ、なんて言っちゃってるけど、ほんとになんなのか理解できないからついていけない。

 転校してきてこんなの初めてだ。



「あら姫子さん、こんなところで会うなんて偶然ね。これも神のお導きかしら」


「あらほんと。玲子さんいいこと言うわね。ではそんな神のお導きに感謝して姫子さん、赤城さんを呼んできてもらえないかしら?」


「あら! それはいい考えね。私たちはここで待っているから、姫子さんお願いね?」


「え、えぇと……と、とりあえず呼んでくるね」



 私が普通にそういうと、3人から一斉に変な目で見られた。変な目なんだけど、なんか私のことを責めてるような、そんな目。

 え、もしかして……



「それ、私もやらなきゃダメなやつ?」



 3人が揃って首肯した。

 面白い光景だったけど、ほんとに息ピッタリすぎて逆に怖かった。



「わ、わかりましたわ。ちょっと呼んできますわね」


「ええ、頼みましたよ姫子さん」







「それじゃあみなさん、かんぱーい!」


「「「「かんぱーい!」」」」



 よくわからないまま3人についていくと、場所は移ろいなんと春ちゃんの家へとやってきた。

 春ちゃんの部屋へと行き、どこからか持ってきたお菓子を机の上へと広げ、紙コップにジュースを注ぎ、玲ちゃんが音頭をとった。

 とりあえず音頭に合わせて乾杯って言っておいたけど正解だったみたい。

 私の隣では唯も、小さくだけど合わせてちゃんと言ってた。かわいい。



「そういえば、姫子ちゃんと赤城さんはこれが初めてだっだっけ」


「そうだよ! だからほんと、何が何だかわからないんだけど」


「それはそれは、すみませんでした。では春さん、説明をお願いします」


「はい、承りました玲子さん」



 いつのまにか、春ちゃんがまた眼鏡をつけてキリッとした感じになってた。



「では説明いたします。よく聞いてくださいね。これは、忘勉会。テスト終わりのその日に私の家で毎回開かれています」


「忘勉会……? 初めて聞いたんだけど……」


「それもその通り。なぜならこの会は私たちが発案したものですから。1年の疲れを忘れて騒ぐ忘年会があるなら、テストの勉強の疲れを忘れて騒ぐ忘勉会があってもいいじゃないか! ということで始まったのです」



 そう言い切って春ちゃんは、片手で眼鏡をクイっとあげた。それだけで本当に博識で賢いように見えてしまうのだから、眼鏡ってすごい。



「というわけで! 今日はパーっと楽しみましょーう!」



 そう言いながら玲ちゃんが抱きついてきた。

 おうおう、今日は一段とテンション高いな、なんて思いながらあしらっていると、何やら唯の方から、なにか冷たいものを感じた。

 背筋が冷えるような、鳥肌が立つような、そんななんとも言えない冷たいなにか。



「う、うん……。それは分かったんだけどさ、お昼は?」



 そう言いながら私は玲ちゃんを引き剥がす。

 よくわからないけど、このままだと唯に嫌われてしまいそうだと、なんとなく思った。



「それなら大丈夫! 私が作るから!」



 そう言いながら、玲ちゃんは立ち上がる。

 それと同時に変な寒気も収まり、私はホッと一息ついた。


 怖くて唯の方を向けなくてどんな表情をしてたのかは分からないけど、もしかして嫉妬してたんだろうか。

 私と玲ちゃんがくっついてることに。

 もしそうだとしたら、嫉妬してくれたことは嬉しいけど少し面倒だ。

 今の玲ちゃんのもそうだけど、女の子同士でのスキンシップなんて、コミュニケーションのうちのひとつだ。まあ、私にとっての唯とのスキンシップは少し違う意味になってきちゃうけど。

 そのコミュニケーションを制限されちゃうってのは、少し窮屈だ。私の世界が、狭くなってしまうような、そんな気がするから。


 私の世界は多くの人で構成されている。

 自分、家族、唯、そして友達。

 家族だけでも4人いるし、友達なんて数えきれないほどたくさんいる。

 そしてそのどれもが切り取って捨てることはできないものだ。少なくとも私には。

 でもきっと唯は、私のとは違うんだろう。

 元々、唯の世界はごく少数で構成されていた。唯自身と、親と、それくらいだ。

 そこにたまたま、私が入り込んだ。

 玲ちゃんたち3人も少しは含まれてるかもしれないけど、多分本当に少しだ。

 だから唯はきっと、それ以外いらないんだ。


 私もそんな生き方が出来るようになるのだろうか。そこまで唯を特別に思えるようになるんだろうか。

 先の見えない未来は真っ暗で、私は漠然とした不安を感じた。




 玲ちゃんの料理は普通に美味しかったけど、唯の方が上手だな、なんて思ってしまった。

 なんであそこで唯も作れるってことを言わなかったのか、自分でもよく分からないけど。

 その後は普通にホラー映画を見て叫んで、流した音楽に合わせて歌って、トランプして笑って。今日やったテストのことなんて忘れちゃうくらいに楽しんだ。

 こんな楽しい忘勉会がテストの後には待ってるんだって思えば、憂鬱なテストも頑張れそうだなって思った。

不定期に更新します。


遅くなりすみません!でも来週も週末しか更新できなさそう……つらい……

書くの久しぶりすぎて全然上手くかけた気がしませんでした。頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ