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私のとなりに姫がきた  作者: さへ
第2章
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玲ちゃん相談

ふと見てみたらブクマ160超えてました。驚きです。ありがとうございます。

 もしかしたら私以外の誰かと遊びに行くんじゃないかとか、ちょっと唯を疑うようなことを聞いてしまった罰だろうか。

 お墓参りという言葉が出た瞬間、寸前まで私たちの間に漂っていた甘い空気はどこかへ行き、どこか寒さを感じるような気まずい空気へと一転した。



「……お墓って、おばあちゃんとか?」



 当たり障りのない、そんな言葉を放つ。

 確かに仲の良かったおばあちゃんの命日がたまたま休日だったら、他の予定よりも優先してお墓参りに行くんだろう。

 私のおばあちゃんはまだ生きてるし、そこまで仲良くはないからそれがあってるのかは分からないけど。



「……いえ、お母さんです」



 今度こそ、空気が凍った。

 どう反応すればいいのかもわからない。

 唯からお父さんの話は出るけどお母さんの話は出ないし、一人暮らしをしてるって言ってたから、なんとなくお母さんがいないことは察してたけど。



「……時間も時間ですし、そろそろ寝ますか?」


「……え? あ、ああ、そうだね。もう寝よっか。私も眠いし」



 そう言って私はネックレスを外して机の上に置き、壁のスイッチで部屋の電気を消した。

 慣れない暗闇の中、感覚で自分の布団へと足を運ぶ。



「……白崎さん、そっちの布団に行ってもいいですか?」


「……え? ああ、もちろんいいよ」



 私の布団の中に、もう一つ体温が追加される。

 自然に手が繋がって指が絡み合う。

 その心地の良い温もりと暖かさに、段々と眠気に誘われる。

 眠りに落ちるその瞬間に感じた、布団の隙間から入り込む外の空気は、ただただ冷たかった。







 私と唯は付き合っている。

 私がちゃんと唯のことが好きなのかっていうのはまだよくわからないけど、付き合ってるんだ。

 カップル、リア充、恋人同士。

 外面的には強く結ばれてそうだけど、内面的にはまだ全然結ばれてないのかもしれない。


 思えば、私は唯のことをそんなに知らない気がする。

 それに、私もまだ唯に自分のことを多くは話していない気がする。

 いや、聞かれないから話していない、聞いてないから話してもらえてないっていうのはあるだろうけど、それでも。


 昨晩だって、唯のお母さんの話をもっと聞かせて欲しかった。

 いや、唯のお母さんの事実を聞かせてくれただけでも大きな一歩だったのかもしれないけど、もっと知りたかった。

 もっと唯と、いろんなことを話したい。私からも、色んなことを話したい。


 玲ちゃんからLINKが届いたのは、そんなことを考えていた日曜日の夜のことだった。




「ごめんね、テスト前日の放課後の時間もらっちゃって」


「いいのいいの、私だって前に相談乗ってもらったんだしさ。それに明日の教科の対策はほぼやってあるから」



 月曜の放課後、駅前のファストフード店に玲ちゃんと2人訪れて。



「ありがとう。それで、率直に言うけどさ……私、須東君が好きみたいで……」


「ほう、ほうほう」



 1人ひとつずつ、一番小さいサイズのポテトを摘みながらお話をしていた。

 いわゆるコイバナというやつだ。


 須東くんは確か、同じクラスの男子の1人だ。関わったことはなく、顔と名前を知って

 るだけだけど。

 たしかすごくカッコいいわけじゃないし、結構おとなしめな感じの子だった気がする。

 結構イケイケな玲ちゃんとは真反対、とまではいかないけどあまり共通するところがない人だ。

 なんとも珍しい。私は素直にそう思った。



「でもまだ数回しか喋ったことないんだよねー。もっと話しかけてみたいんだけど、タイミングがなくてさー。ねえ、どうすればいいと思う?」



 玲ちゃんはこう聞いてくるけど、正直私にはアドバイス出来るほどの経験はない。

 彼氏……じゃなくて彼女ならいるけど、それだってまだ私がちゃんと唯のことを好きなのかどうかってのもよくわかっていないし。



「やっぱまずは挨拶からじゃない? 毎日挨拶してればさ、こいつ俺に気があるのかも? みたいに思って気にしてくれるようになると思うよ」


「おーなるほど」



 とりあえずありきたりであろうことを返した。私も、唯との初めての会話は挨拶だったし。



「それじゃあ早速明日から実践してみるよ」


「うん、頑張って。応援してるからさ」


「ふふ、姫子ちゃんに応援されたら何となく上手くいく気がする」


「はは、なにそれー、買いかぶりすぎだよ」



 本当に買いかぶりすぎだ。

 恋愛経験ほぼゼロのような私が応援したところでどうにもならないだろうに。



「そういえばさ、玲ちゃんってなんで須東くんのこと好きになったの?」


「ふぇえ!? そ、それ聞いちゃう?」


「うん、めっちゃ気になるもん。ほらほら、私たちの仲でしょ? それにさ、いつか私も好きな人ができたら言うからさ、言ってみなって」


「ええー…………、うん、わかった。あのね、初めて意識するようになったのはモールで須東くんのことを見かけてからなんだけどね」


「ほえー、モールで会ったんだ。すごい偶然だね」


「そうなんだよね。それでね、須東くんモールで、めちゃくちゃ真剣に女の子用のアクセサリー見てたの。え! 須東くんに彼女いるの!? ってびっくりして声をかけちゃって。そしたら妹へのプレゼントだって」


「へー、須東くん妹いたんだ。意外だ」


「本当意外だよね。その妹への誕生日プレゼントめっちゃ真剣に選んでて、妹思いなんだなって思って一緒に選んであげたの。その時なんか、話してて心地いいなーとか、なんかそんな風に思って……それで、はい……」



 そう言った玲ちゃんの顔は赤く染まっていた。



「もー! 私ばっか恥ずかしいじゃん! 姫子ちゃんもなんか恥ずかしいこと言って!」


「えー、そんな急に言われても思いつかないしー。あ、でもそれにしてもよく話しかけたよね」


「ん? あーね、私でも意外だったというか。でも気になっちゃったんだし仕方ないかな? みたいな」



 玲ちゃんのことで少し盛り上がった後は、学校での些細なこととか、最近のテレビの話とか普通に雑談して、ポテトが無くなって少し経った頃私たちは帰った。


 私は素直に、玲ちゃんの恋は成就してほしいと思っている。

 その点から言うと、やっぱり私にとって唯は特別な存在なんだろう。

 玲ちゃんと違って、唯が付き合ってるかもしれないって話を聞いただけで私はショックを受けたほどだし。

 でもその特別は、好きと同じなんだろうか。

 唯は私のことが本当に好きなんだと思う。日々の反応からも見えてくるし、気持ちを伝えてきたのも唯からだ。


 なら私はどうなんだろうって、最近同じようなことばかり考えてるけど、仕方ない。

 唯が私を好きなのに、私は唯を好きじゃない、そんな一方通行のような関係で付き合ってるなんて嫌だから。

 でも生憎この問いに対する答えを私は持ち合わせていない。だから私は、考え続けるしかないんだ。


 私の目の前にいた、須東くんの好きなところを話す玲ちゃんの姿が、周りに漂う幸せそうなオーラが、その時ばかりは眩しすぎて直視していられなかった。

不定期に更新します。

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