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私のとなりに姫がきた  作者: さへ
第1章
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コミュニケーション

 私は、クラスというか、学校の人間とコミュニケーションを取るのが苦手だ。いや、苦手というかもはや無理だ。


 中学の時の経験から、私は人に話しかけるのが怖くなってしまった。

 でも、人と言ってもそれは学校の人や近隣の人だけで、赤の他人であれば私は普通に話すことができる。


 赤の他人なら、もう2度と会うこともないような人なら、自分が何か言ってもその関係が揺らぐことは無いし、そもそも揺らぐ程の会話をしたり、揺らぐような関係性があったりしないのだから何も心配することは無いのだ。

 でも学校の人間はそうじゃない。なにか間違ったことを言ってしまえば関係性は悪化するだろうし、何か言わなくてもコミュニケーションの取り方次第ではどうにでもなってしまう。

 例えば、先輩に言った冗談がどうしてか同級生に伝わり曲解され仲が壊れてしまったり。例えば、空気を壊さないためノリで言った陰口が何故かクラスに広まり、自分が悪いもの扱いされたり。


 けどそれは考えすぎだとは思う。自分で言っといてなんだが、それは私にも理解できるのだ。

 カウンセラーの先生に「言葉の使い方を間違えなければ関係はそうそう崩れない。コミュニケーションは楽しいものだ」と言われ、確かにそうだとだいぶ心が楽になった。

 確かに父と話すのは楽しい。赤の他人との数少ないコミュニケーションだって楽しいとは思う。

 でも、心ではそう思うことができても、体が、脳がそれを拒んでしまうのだ。

 良かれと思って取っていたコミュニケーションが、全てを壊してしまうことだってあるのだから。





「いらっしゃいませ。何名様でお待ちでしょうか?」



 私は今、営業スマイルを向けながら接客をしている。

 長い前髪は横に流し、メガネを外し、腰までかかる後ろ髪は一つに結んである。



「ご注文の品でございます。以上でよろしいでしょうか?」



 こんな姿を学校の人間に見られたらと思うと恐ろしいが、それは絶対にないので安心して営業スマイルを顔に貼り付けることができる。


 ここは、父が経営する居酒屋だ。

 まだ開店から1年ほどしか経っていないが、父の出す料理が美味しいからか毎日繁盛している。

 私も父に料理を習い美味しい物を作れるようになったが、それでも全然父の物には勝てる気がしない。


 居酒屋での仕事はかなり楽しい。

 商品を覚えることこそ大変だったが、酔っ払ってる人の対応をしたり、料理を出した時に一言二言会話をしたりするのは、私の日常のいい刺激となっている。

 会話をする人の中には、常連さんもいて一度きりの関係というわけではないけど、何故かここでは普通に喋れる。

 なら学校でも……と思っても、何故かあっちだと喋れない。

 正直私自身もよく分からないけど、まああんまり不自由してないし楽しいからいっか、なんて思ってる。

 ……でも転校生とは喋ってみたい、かな。

 喋ってみたいけど喋れない。そんな葛藤を抱きながら私は接客を続けた。





「はふー」



 お風呂を考えた人は天才だと思う。なんで熱々のお湯に入ろうだなんて考えられたんだろう。

 しかも昔は人が入れるほどのお湯を沸かすことすら大変なはずだ。まず人が入れるほどの容器に水をためて、そして火を使ってお湯を沸かさなければならない。

 それに昔は火を起こすのだって大変だっただろうし、それに湯加減だって熱すぎたりしてしまうかもしれない。絶対昔はお湯のお風呂に入るのも一苦労だったはずだ。

 なのにお風呂を作ってくれた、考えてくれたどこかのだれか……ありがとう……。


 お風呂はいいものだ。1日の疲れが驚くほどに抜けていく気がする。

 となりに美少女が来た衝撃だって、話しかけられなかった鬱憤だって全部お湯に流せる気がする。


 それにしても、あの転校生は本当に可愛いと思う。どんな両親から生まれたのか非常に気になるところだ。

 今頃クラスにいる男子たちはチャットアプリなんかで盛り上がってるのかもしれない。

 でもその気持ちは十分わかる。私だってあんな芸能人のような可愛い子を見たら、そしてそういったことを話せる人がいたらそうしたいと思うだろう。

 ……あ、明後日お父さんに話してみようかな。





 明日はちゃんと何か話そう。あ、消しゴム落としてみるのはどうだろう。結構いい感じかもしれない。拾ってくれてありがとう、って言ってそこから会話を広げていって、そしてあの転校生と友達に……

 あの、転校生と……


 


 ……あれ、あの転校生の名前、なんだっけ。

文字数が少ない気がするので次回からは増やしていきたいです。

不定期更新です。

そのうち転校生視点の話も出てきます。

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