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私のとなりに姫がきた  作者: さへ
第1章
22/32

取り調べ

今日は1話しか更新しないと言いましたけど、あれは嘘です。

玲ちゃん視点です。

 平凡な毎日を送っていた。

 勉強して、運動して、友達と遊んで。

 何か刺激のある出来事が起こることもなく、ただなんとなくといった感じで毎日を過ごしていた。


 夏休みが終わり、また学校が始まるのかーだるいなーってそんなことを考えていた日だった。

 あの、目を引きすぎるような転校生がやってきたのは。


 最初はどこかのモデルさんか女優さんがやってきたのかと思った。

 顔は可愛すぎるし、スタイルもいいし、髪の毛もノリで染めたような私とはわけが違うほど明るい色で綺麗だった。

 背丈はそこまで大きく無いけど、なんだか大きく見えるような風格があった。



「初めまして! XX県から転校してきた白崎姫子です!」



 絶対友達になろう。瞬時にそう思ったことを、私は今でも覚えている。


 それからの日々は楽しいものだった。


 姫子ちゃんは結構ノリが良くて、話し上手で、そして聞き上手で。

 コミュニケーションの才能でもあるのだろうか、と疑うほどだった。

 だってあの、赤城さんとも打ち解けてしまったのだ。


 赤城さんはクラスで孤立していた。

 いや、孤立というより独立と言ったほうがいいかもしれない。

 髪が長く、眼鏡もしていて顔もあまり見えない。休み時間はいつも本を読んでいて、話しかけるなオーラがすごい。


 最初見たときは暗い人だなと思ったけど、ずっと崩すことないその姿勢を次第にかっこいいと思い始めた。

 地味だけど、めっちゃ背筋伸びてるし、少し見える手はめっちゃ綺麗だし、どこか高潔といった感じがあった。

 だから私は赤城さんのことをクールで無口な赤城さん、なんて呼んでた。

 そしたらそれが、いつのまにかクラス中に広まってたけど、おそらくみんな同じことを考えてたってことだろう。


 そんな赤城さんさえも、姫子ちゃんの才能には敵わなかったようだ。

 そしていつのまにか赤城さんは私たちのグループに入っていた。

 最初はお互いぎこちなかったけど、今ではすっかり打ち解けて普通に話せるようになった。

 主に話すのは私たちで赤城さんはあまり喋らないけど。

 けどその分赤城さんは聞き上手で一緒にいると落ち着く感じがする。

 そういった雰囲気にも才能があるのかなって考えたこともある。


 それに、赤城さんの声って実はめちゃくちゃすごかった。可愛いのに美しくて、喋らないのがもったいないほど。

 だからその分私たちが喋ってその声を引き出そうとしちゃうんだけど。


 いつしか赤城さんの私たちの中での呼び方は、クールで可愛い赤城さんに変わっていた。







 そんな赤城さんは、姫子ちゃんには特別心を許している感じがする。

 赤城さんと友達になった初めての人だからだろうか。そこのところは私たちには分からないけど。


 それなのに昨日、姫子ちゃんから電話で赤城さんに避けられている気がするなんていう電話がきた。

 いやいや、あんためちゃくちゃ愛されてるやろ! なんて言ってあげたかったけど、本人がそう感じるのだからそうなんだろう。


 詳しいことは分からないけど、とにかくその原因を聞いて欲しいと頼まれたため、私は協力してあげることにしたのだった。






 約束の昼休みがやってきた。

 べつに卑しいことを聞くわけでもないのに、計画的であることを周りに隠しているからか少しだけ緊張した。

 そんな動揺を隠すように、挙動不審にならないように意識しながらお弁当を食べた。

 ちらっと赤城さんを見る。

 目はよく見えないけど、いつもと変わらない感じだ。

 食べる仕草が小動物のようで可愛らしい。



「ちょっとトイレ行ってくるね」



 そういって姫子ちゃんが席を立った。

 ついに作戦決行の時が来てしまったみたいだ。

 昼休みが始まった時から動画は撮り始めているため心配はいらない。

 あとは話しかけるだけだ。


 姫子ちゃんが席を立って少し経ってから、私は話しかけた。



「……ねえ、赤城さんってさ最近姫子ちゃんと何かあった?」



 会話の流れなんて完全に無視して私は聞いた。

 春も杏香も突然のことにぽかんとしちゃってる。赤城さんも箸が止まっている。



「……えっと、なんでですか?」



 赤城さんがそう返してきた。

 やはり今の質問は不自然過ぎたみたいだけど、もちろんそれも想定済みだ。



「なんか最近、赤城さんが姫子ちゃんのこと避けてるように見えたから」


「えーそうー?」



 春がそう言ってくる。けどいま貴女はお呼びじゃないのよ御免あそばせ。

 春の言葉には反応せず、私は赤城さんを見つめ続けた。



「……白崎さん、木村くんと付き合い始めたらしいんです」


「……へぇ、でもそれでなんで避け始めたの?」



 初耳だ。姫子ちゃんが木村と付き合ってたなんて。一体どこ情報だろうか。

 めちゃくちゃ問いただしたいところだが、私には勤めなければならない任務がある。

 動揺を隠し、話を続けた。



「……私、好きだったんです。というかまだ、今も好きなんです。……だから、近づいたら迷惑だと思って」


「なるほどねえ」



 木村のことが好きだったから、なんとなく避けてしまうってことだろうか。

 正直、その木村と姫子ちゃんの諸事情を問いただしたいところだけど。



「まあそこまで気にしなくても大丈夫だと思うよ。なんか姫子ちゃんも落ち込んでるように見えたし」


「……そうですね、気をつけます」


「まあ仕方ないことだと思うけどねー。あ、そういえばさ――」



 これで私の任務完了だろう。私は音に気をつけながら動画の撮影を終え話題を変えた。

 動画を見せる時に絶対姫子ちゃんを問いただしてあげよう。

 そう決め私は残りの時間を過ごした。

不定期に更新します。

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