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私のとなりに姫がきた  作者: さへ
第1章
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他力本願

早めの更新で、しかも短めですけど今日の更新は1話だけです。

おそらく明日も更新は1話だけになるかもしれません。

月曜日は2話出したいと思ってます。

 その瞬間、最近頭の中でふわふわと浮かんでいたパズルのピースが、全てがうまく組み合わさったような感じがした。

 少し目があって手を振ってくれたけど、私はそれに反応することはできなかった。

 目はちゃんと見えてるのに、全てが真っ暗になったように思えてしまい私は次の授業に集中できなかった。


 けど1時間あれば大体の感情や考えの整理はついて。私のこの気持ちはあってはならないものだと理解して。

 いや、もともとあってはならないものだったのかもしれない。

 だって私とあの人は同性だ。同性を好きになるなんて普通じゃない。

 普通じゃない事態に悩まされたことだってあったのに、まったく私は進歩してないようだ。

 でも好きになってしまったのは仕方ない。好きになっちゃったんだから。


 けどその気持ちも今日でお別れだ。

 すぐに忘れることはできないかもしれないけど、そのうちきっと泡のように消えて無くなってくれるだろう。


 この気持ちがちゃんとなくなるまで、あまり近づかないようにしよう。週末誘われたお泊まりも行かないにしよう。

 だって彼女が私を誘う理由はただ友達として仲良くするだけだけど、私がその誘いに乗る理由は不純なものだから。

 木村くんともあまり話さないようにしよう。

 私がいると邪魔だろうから。


 心の中で2人に祝辞を捧げ、そして心の中で静かに泣いた。

 涙が出そうになったけどなんとか堪えた。


 なんで私は、女の私が想いを成就させることができると本気で思ってたんだろう。

 最後にそれだけ考えて、私は思考をやめた。







「……おかしい」



 夕食中の一家団欒の時間。

 いつかのように、私はつぶやいた。

 木村くんに告白されてから数日経ち、今日はもう木曜日だ。

 あれから私ら唯にたくさん話しかけてたくさんスキンシップを取ろうとした。あの日突然呟かれた好きの意味を吐かせるために。


 でも結果は散々だった。

 話していてもまったくいいリアクションはくれないし、スキンシップを取ってもすぐ離れていってしまう。

 あまりリアクションをくれないのは前からだったし、最近ではそこがまたいいなんて思えるようになってきたけど、触れると離れられるのは流石に意味がわからない。


 挨拶の時にさりげなく肩に手を置いたり、話してる最中に少しだけ二の腕に触れたり。

 唯にだけそうして他の人と扱いが違う、みたいな感じで気づかせて想いを言わせようって考えてたけど甘かったのだろうか。

 でもそれにしても、離れすぎな気がする。

 お昼休みのとき、私と唯はいつも隣同士で座るんだけど、前は肩が触れ合うくらいの距離だったのに、この1週間は見るからに間が生まれている。


 私が何かしてしまったのだろうか。

 そう考えてみても、なんら思いつくことはない。今まで通り、変わらぬ日々を過ごしていたはずだ。



「姫ちゃんのからあげもーらい」



 箸をまったく動かさず考え込んでしまっていた私の唐揚げを妹がひとつ奪っていった。

 でも今はそんなこと気にならないくらいこの謎を考えてしまっている。



「冷めちゃうわよー。早く食べなさい?」



 お母さんにもそう言われたため、私は無言で食べ始める。しかし料理の味はよくわからない。この1週間のことで頭がいっぱいだったからだ。

 私が少し距離を置いたことはあったけど、唯がこうして距離を置いてくるのは初めてのことだ。

 そもそも、友達から距離を置かれること自体初めてかもしれない。


 私は黙々とご飯を食べ進めた。

 様子を心配されてるような、そんな視線を感じたけど反応することはなくご飯を食べ終え私は自室へ戻った。

 2つの唐揚げを私に取られた妹が何やら喚いていたけどそれも気にせず私は階段を上がった。






 それから1時間弱、原因や改善策を考えて、ついに思いついたのが唯に直接聞くことだった。

 我ながら安直だと思う。完全なる思考停止だ。でもそんなことは言ってられない事態なのだ。



「もしもし玲ちゃん? あ、突然電話してごめんね?」



 私はLINKの無料通話機能を使い、玲ちゃんこと古谷玲子に電話をかけた。

 連絡した理由? それはもちろん



「大丈夫だよ。それでどうしたの?」


「ちょっと頼みがあるんだけど聞いてくれない?」


「内容によるけどいいよ、言ってみん」


「なんか最近私唯に避けられてるような気がして……。明日私がなんかしたか、唯に聞いてほしいの」



 玲ちゃんにコトの真相を唯から聞いてもらうためだ。

 他力本願すぎるって? でも仕方ないことなんだ。だって私はチキンなのだから!

 面倒くさい女だと思われそうな、そんな質問をできるほど私のメンタルは強くない。



「えっ……? 姫子ちゃんが赤城さんに避けられてる……? え、全然そんな風には見えないんだけど」


「いやーまあ、避けられてるというか距離を取られてるっていうか……。私がそう感じてるだけなのかもしれないけど、でも気になっちゃって」


「本当に全然そんな風には見えないんだけど……。まあ気になるなら仕方ないし、頼られてあげるよ」


「玲ちゃんありがとう!」



 そうして私は玲ちゃんに頼むことに成功した。

 私は玲ちゃんと、いつ聞くかだとかどう聞くかだとかを話した後に電話を切った。


 作戦決行はお昼休みだ。

 みんなでお昼ご飯を食べてる途中、私がひとりでトイレに立ち、その間に玲ちゃんが聞いてくれることになった。

 そしてそこでの会話をなんと動画に撮って聞かせてくれるらしい。

 そこまでしてくれる玲ちゃんに感謝しながら、私はお風呂やらなんやらの寝る支度を始めた。


 ちなみに春ちゃんと杏ちゃんには話さないことにした。

 話したら話したで無駄に意識されて、唯に演技っぽいとバレてしまいそうだと思ったからだ。


 とにかく明日。

 明日できっと解決して、また仲良くなるための計画を再始動させて好きの意味を聞き出してやろう。

 遠足前日のような妙な緊張と興奮を覚えながら、私はベッドに入った。

 ドキドキして眠れない、なんてことはなく、気づけば私はすぐに意識を手放していた。

不定期に更新します。


本当は次の日の話もこの回に入れちゃおうかと思ったんですが、視点も変えたいしめちゃ長くなりそうだったんでやめました。


次はなんと、初めての玲ちゃん視点です。

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