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私のとなりに姫がきた  作者: さへ
第1章
19/32

お見舞い

 白崎さんが学校を休んで今日で3日目だ。


 3日前、いつもなら途中まで一緒に帰るのに何故か白崎さんは一人で先に帰ってしまった。

 昼から具合が悪そうだったし尚更一緒に帰ろうと思ってたのに。


 追いかけるために早く荷物をまとめて帰る支度をして下に降りたけど、その時にはすでに雨が降っていて急いで後を追うにも追えなかった。

 白崎さんはあの日傘を持ってきてたんだろうか。予報では午後から雨だと言ってたけど、もしかしたら忘れちゃって雨の中濡れて帰ったのかもしれない。

 それで風邪をひいてしまったのかも。


 学校を休んだ白崎さんが心配で、一昨日も昨日もLINKでメッセージを送ってみたけど既読はつかない。

 今までは遅くとも1時間以内には返してくれていた。

 それだけ寝込んでしまっているのだろうか。

 私はとても心配に、そして不安になった。

 白崎さんのいない学校は酷く味気なく感じた。


 なので私は今日、白崎さんの家へとお見舞いに行くことにした。

 以前泊まりに行ったため、白崎さんの家の場所は分かる。

 何を買って行こうかな、なんて考えながら、その日の授業をこなした。






 帰り際、私はコンビニに寄った。

 辺りにコンビニは少ないため、最寄りのコンビニでも10分はかかる。

 それに家の方向とは逆のためかなりの遠回りとなる。 でも白崎さんのため、と考えればその道のりも全然苦ではなかった。


 ゼリーと、プリンと、何種類かのお菓子と飲み物を買ってコンビニを出た。

 片手に持った買い物袋の重みが、白崎さんのためのものであると考えるとなんだか嬉しかった。


 そこから歩いて30分ほどで、白崎さんの家に着いた。

 人の家のチャイムを押すなんていつぶりだろう。

 覚えてる限りでは小学生の時に回覧板を回しにいった時以外覚えていない。いやその時チャイムを押したのかすら覚えてない。

 ドキドキしながらチャイムへと指を伸ばす。



「はーい」



 中から白崎さんのお母さんの声が聞こえ、ドアが開いた。



「あら唯ちゃん、久しぶりね。今日はどうしたのかしら?」


「……お久しぶりです。今日はあの、白崎さ――いや、姫子さんの様子を見にきたんです」



 そう言いながら私は手に提げたコンビニの袋を持ち上げた。



「まあそうなの! ありがとね唯ちゃん。きっと姫ちゃんも喜ぶわ。さ、あがって」


「はい、失礼します」



 久しぶりの白崎さんの家。なんだか久しぶりに心臓がうるさくなった。






 白崎さんの家は前に来た時と変わってなかった。前はそんなこと気にする余裕はなかったけど、改めて見てみると全体的にさらに揃えられていて外国の家みたいだ。

 私の家はどちらかというと黒が多いためかなり新鮮だ。



「改めて今日はありがとね、早速姫ちゃんの部屋行ってあげて」


「はい、ありがとうございます」



 そう言って私は二階に上がっていった。

 一段一段登って行くごとに緊張が高まって行く。


 突然来ちゃったけど、白崎さんは嫌がらないだろうか。

 結構仲良くなったつもりだったけど、向こうはそんなこと思ってなくて有難迷惑になったりしないだろうか。

 そういった不安がどんどん募っていく。


 ついに白崎さんの部屋の前へとついてしまった。私はコンビニの袋を持つ手に痛いくらいに力をいれながら、もう片方の手でドアをノックした。



「……白崎さん、私です。唯です。お見舞いに来ました」



 ドアの前に佇みながら、私はそう声をかけた。

 しかし中から返答はない。

 それどころか物音が少しも聞こえない。

 おそらく寝ているのだろう。私は思い切って、しかし静かにゆっくりと扉を開けた。


 部屋はカーテンが閉められており、それに加えて夕方となっているため中はかなり薄暗くなっていた。

 私はドアの付近にコンビニの袋を置き、手ぶらでベッドに近づいた。

 盛り上がった布団がゆっくりと上下しているのが見える。

 私は白崎さんを起こさないようにゆっくりとベッドの上に腰掛けた。


 目はしっかりと閉じられていて、安らかな寝息が聞こえる。

 白崎さんの、口が少し開いているその無防備な寝顔はいつも以上に可愛く見えて、私は体温が急激に上昇するのをはたと感じた。

 私は少しだけ顔を近づけその顔をまじまじと観察した。


 肌はつるつるとしていて、触ればマシュマロのように柔らかい。鼻も耳も唇も、どれもが彫刻のように綺麗で美しくて。

 今は閉じられてしまっている目だってぱっちりとしていて可愛らしい。

 そしてそのどれもがバランスが取れていて、美しさの集大成、なんて言いたくなる。

 見てるだけで顔が、体が熱くなって、心臓の音もうるさくなる。

 この距離で聞こえていないだろうか。少し心配だ。


 白崎さんは私の顔を可愛いって言ってくれたけど、白崎さんの方が何倍も可愛くて。

 それに性格だって私とは真逆ですごく明るくて友達も多くて、人間としても私より何倍もできていて。



「……好き」



 心を満たしすぎて溢れ出てしまったその感情が、言葉として口から出てしまった。

 私は慌てて頬を触っていた手を離し、自らの口を手で塞いで十数秒間、息を殺した。

 今更静かにしたってどうにかなるはずないのに。

 白崎さんが起きてないことを確認した私はホッとひとつ息をついて、静かに立ち上がった。


 起こすのも何だか悪いと思った私は、白崎さんの勉強机の上に置いてあったシャーペンとノートを拝借し、書き置きを残して部屋を出た。



『白崎さん


 体調はいかがでしょうか。今日は突然ですがお見舞いにお伺いしました。

 白崎さんが気持ちよさそうに眠っていたため起こすことはしませんでしたけど。

 コンビニで色々買ってきたので食べてください。学校早くきてくださいね。待ってます。


 PS.机の上のノートとシャーペン借りました 赤城 唯』



 無難……かどうかは分からないけど、当たり障りのないことを書いて、すぐ目に留まるように部屋の中央に置いた。

 私は白崎さんを起こさないよう注意しながら、静かに部屋を出た。






「あら、もう帰っちゃうの? 夜ご飯くらい一緒に食べていけばいいのに」


「お誘い嬉しいですけど、風邪がうつっちゃったら困るので。それに今日は家に父もいるのでもう帰ります」


「たしかにそうね、残念だわ。また来てちょうだいね?」


「はい、ありがとうございます。また今度、お邪魔させていただきます」


「ええ、ぜひいらっしゃい」



 少しだけ白崎さんのお母さんと話をしてから、私は家を出た。

 外はいつかのように雲一つなく晴れていて、またあの河川敷に行けば夕日が綺麗に見えそうだなって思った。

 今日はもう時間も遅いので行くことはできないけど。


 明日は白崎さん来てくれるといいな、なんて考えながら私は歩いた。

不定期に更新します。


この話の展開の候補が3つあり、どれにしようか迷ってたら遅くなっちゃいました。

それに寝不足の中うとうとしながら書いたので、見直したけど誤字とかありそう……。


誤字報告ありがとうございます……。

恥ずかしいけど助かってます!

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