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私のとなりに姫がきた  作者: さへ
第1章
11/32

お泊り

評価・ブクマありがとうございます!

100pt達成、ブクマも20超えて本当に嬉しいです!ありがとうございます。

「へー!唯ちゃん一人暮らししてるの!」


「……はい、一応父も同じ家に住んでますけど、一人暮らしのようなものです」


「じゃあお父さんは、どこか遠くで働いてるってこと?」


「いえ、地元の居酒屋を経営してて、昼に休んでるんです。だからすれ違いになって、実質一人暮らし、というか……」


「そーなのー!凄いわねぇその歳で!じゃあ料理もできちゃうの?」


「まあ、一通りは……」


「すごいー!うちの姫ちゃんとは大違いね〜」


「うーるーさーいーでーすー」



 唯と楽しそうに話すのは私の母親。

 自分の車の中で息苦しさを感じたのは今まで初めてのことだ。

 おかしい。今日唯と遊んでたのは私なのに。そしてこれからもお泊まり会をして、さらに仲を縮める予定だったのに。



「もー!お母さんばっかり唯と話してるのさ!唯と遊んでるのは私だから私が唯と話すのー!」


「姫ちゃんは今日たくさん唯ちゃんと遊んでたくさん話したんでしょ?なら次は私の番よ」


「そんなわけないでしょ!今までもこれからも私の番ですー!」


「あら、姫ちゃんたらいつからこんなにわがままになっちゃったの。誰がこんな風に育てちゃったのかしら」


「あなたでしょー!」



 私の母は結構まったりしてて、ゆるふわな感じ、例えるなら春ちゃんみたいな感じがするんだけど、すごい的確な、話の核心を突いてくる感じがする。

 侮れない存在だ。自分の母だけど。


 この後は一度唯の家へ向かう事になっている。泊まるための道具を色々持ってくるためだ。

 本当にこの後唯がうちに泊まるんだ……。

 今更ながらその実感が湧いてきて、何故だか無性に緊張してきた。






「姫ちゃんのことだから、もっと派手な子を連れてくると思ってたわー」



 唯が荷物を取りに行っている間に、母がそんなことを言ってきた。



「確かに、私もあんな地味な子に興味持つなんて思わなかったし」


「あら、じゃあなんで唯ちゃんに興味もったの?」


「……別に、ただ席が隣だっただけだし」



 やましい理由があって唯に興味を持ったわけではない。でもその理由をちゃんと言葉にして口にするのは、なんだか恥ずかしかった。



「ふふっ、そういう事にしときましょうか」


「むぅ……」



 母はかなり頼りになるところがあるが、こうゆう掴み所がないのに掴んでくるような、そんなところが私は苦手だ。



「それにしても、姫ちゃんが突然友達をお泊りに誘うなんて珍しいこともあるのね」


「……別に、普通でしょ」


「うふふっ、そうね、普通よね。それにしても、姫ちゃんがすぐに友達を作れたみたいでよかったわ」



 やっぱり苦手だ。私のお母さんだけど。


 そして、母に言われ今更ながら唯が泊りに来るってことを実感した私は、なんだか無性に緊張してきたのだった。

 別に、友達が泊まりに来るなんて珍しいことでもないのに。





 唯が料理ができると聞いた母は、唯をキッチンへと連れ出してしまった。唯と一緒に夕食を作るらしい。

 はぁ……。せっかく唯が泊まりにきたっていうのに、まだそんな感じのことを何にもしていない。

 まだ唯が家に来てから時間がそんなに経ってないというのもあるけど、なんだか仲良くなるための時間を無駄にしている気がしてならないのだ。

 母と唯が一緒に料理しているこの時間があればもっと仲良くなって、もしかしたらあの前髪をはだけさせ、メガネを外させることができたのではないか、なんて考えてしまう。

 それでも、唯の料理がどんなものなのか気になる気持ちもあってなんだかよくわかない、変な気持ちになった。






 正直に言うと、唯の料理はめちゃくちゃ美味しかった。

 味付けが私好みだった、というのもあるかもしれないけど、何もかもが美味しかった。

 家にいつもあるただの白米ですら、何故か美味しく感じた。

 ちなみに献立は、肉と野菜の炒め物、ほうれん草のお浸し、そして味噌汁に白米とシンプルだが、どれも新鮮でめちゃくちゃ美味しかった。







「……唯、料理上手かったんだね」



 夕食後、唯を私の部屋に招いた。普段から綺麗にしてるので突然招いても何も問題はなかったが、なんだか気恥ずかしかった。



「……うん。お父さんが料理上手で、教えてもらいましたから」


「へー、お父さんが料理上手ってなんかいいね」


「……うん」



 なんかやっぱり、今日だけで唯はかなり私に心を開いてくれたと思う。

 昨日まではうんしか言わなかった唯が、今ではこんなに喋ってくれている。



「あ、そうだ。うちのワイファイのパスワード教えるからさ、LINK入れて交換しようよ!」


「……うん、ありがとうございます」



 唯のケータイをワイファイにつなぎ、LINKをインストールしてもらった。

 アカウント設定を手伝って、互いのケータイを振って連絡先を交換した。唯のケータイに映る連絡先には、私の名前のみが表示されている。

 クールで無口な赤城さんと言われていた彼女の、初めての友達。よくわからないけど、妙な達成感と優越感で心がいっぱいになった。



「これからもよろしくね、唯」


「……うん、よろしく」



 当面の目標であった連絡先の交換を達成した私だけど、お泊りの醍醐味はこれからでもある。まだまだ夜は長いのだ。

不定期に更新していきます。


よければ、こちらは更新遅めとなりますが2作目の「白の慟哭 https://ncode.syosetu.com/n9636fs/」もよろしくお願いします。


評価・感想お待ちしてます。

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