②レイジ
今回も短いですが、楽しんで頂けたら嬉しいです。
「こんにちは〜!【ペーガ】のレイジで〜す」
すこし間延びした口調のレイジは、収録用のカメラに向かって深くお辞儀をした。
それはもう、頭と膝がくっついてしまうんじゃないかってくらい深々と……。
(……ん? あっ、カメラから外れてんじゃないかレイジの奴……)
ミズキがそう気付いたのと、トウヤがフォローに入ったのはほぼ同時だった。
「レイジ〜、カメラ! カメラ意識してっ!」
苦笑いを浮かべたトウヤは、さらに声音を変えて「もぉ〜困った子なんだからっ」と言いながら、自分の頰に手を当てる。
その仕草がおかしくて、周りからは笑いが起こった。
────鷹橋レイジ。
ペーガソスで一番カッコイイ男。王子様感あふれるイケメン男子。
もしペーガソスにレイジがいなかったら、ビジュアル的にとても物足りないグループだっただろう。
(本当……日本人離れした格好良さだよな)
今ではもう慣れてしまったが、はじめてレイジと対面したとき、ミズキはその隙のない美形ぶりに見惚れてしまった。
ミズキの身長は174センチ。対してレイジの身長は184センチ。
しかも趣味が筋トレなだけあって、いいカラダつきをしている。
顔だって、目鼻立ちがくっきりしているうえに整っていて……なんていうか「華」がある。
一部のファンからは「王子様」と呼ばれ心酔されていた。
だがレイジは「王子様感」はあっても「王子様キャラ」では無い……。
(なんつーか、喋ると子供みたいなんだよな。そのギャップがまた面白いっていうか……)
ニカっと笑って顔を上げたレイジが、間延び口調で喋り出す。
「この前さ〜アイトとお花見に行ったんだぁ。そしたらさぁ、隣にいたジイちゃんバアちゃん達と仲良くなってぇ。ついでに歌ったら、おひねりくれたんだ〜」
お、おひねり……⁉︎
どうやらレイジのイケメンぶりは、老若男女問わず発揮されるらしい。
「ひゅ〜! さっすが王子さま!」
横からミズキが声を掛けると、他のメンバー達ものっかってくる。
トウヤは「さっすが、うちのメインボーカル!」とか「よっ! センター!」と言って、レイジを褒めそやす。
すると彼は「ありがとっ!」と返事をして、嬉しそうに破顔した。
────そう、レイジの真価は「歌」にあった。
メンバーの誰もが、その実力を認めている。
ミズキもレイジと一緒に歌えることを心から楽しんでいた。
(だって上手い奴と歌うと、自分まで上手くなった気がするんだもんな……)
レイジは学生時代、バンドを組んで精力的に活動していたらしい。
けれどデビューできるほど、バンドは成長しなかった。
歌うこと……そして歌える場所をずっと探していたレイジ。
これはミズキが後から聞いた話だが、今いる事務所のオーディションに合格したレイジは、契約に際して、とんでもない条件を提示したのだという。
『オレ、アイトと一緒じゃなきゃ、やだ……』
当然、事務所は悩んだ。本来であれば、すぐに突っぱねるところだ。
しかしレイジの歌声には魅力がある。
こんな弱小事務所に縋らなくとも、他にも引く手数多に違いない。だからきっと「アイトと一緒」という条件のせいで、他では受け入れてもらえなかったのだと確信した。
では「アイト」とは一体何者なのか……?
事務所は急遽、アイトのオーディションをすることにした。
────隼アイト。
容姿も歌も普通。本人のやる気も、至って普通。
特技は作曲。レイジと共にバンド活動をしていた経歴があった。
音楽の才能は人並み以上にはあるのだろう。
事務所は、レイジの歌声欲しさに、条件をのむことにした。
『オレの声、一番知ってるのは、アイトだから……』
レイジとアイトは、ペーガソスとして活動するようになってからも、特別仲が良さそうだ。
オフの日も一緒に花見に行くくらいだ。
「ボクも行きたかったな。お花見……」
ミズキの隣で同じくメンバーのひとり、ルカがぽつりと呟いた。
「じゃあ、来年はみんなで行くか?」
ミズキがそっと囁いた提案に、ルカは「いいね」とすぐに頷く。
ペーガソスは一人一人が全く違う個性を持った者が集まっているが、特に仲が悪いわけではない。
都合があえば、きっと集まってくれるはずだ。
カメラは次に、アイトを映していた。
読んで頂き有難うございます!
次回は、アイトというキャラのお話になります。
よろしくお願いします!




