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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

SMな彼ら

試しに書いてみました。ギャグは慣れないのですが、頑張りました。

「クインズ・サディスティック!」


 マゾール王国に存在する王立学園の卒業式。その卒業式が行われている会場で、この国の王子であるウィップ・マゾールが声を張り上げた。


「ここにいるノーマ・ルナッコー男爵令嬢に対する数々の暴言、とてもではないが許容できない! 即刻謝罪せよ!!」


 端整な顔を怒りで歪め、ウィップは目の前にいる己の婚約者であるクインズ・サディスティック侯爵令嬢を見据える。

 当のクインズは口元を扇で隠して切れ長の目をウィップを見て、そして彼の陰に隠れるように立つ少女……ノーマ・ルナッコー男爵令嬢を見た。


「あら、そう……で?」


 そう言ってクインズは馬鹿馬鹿しいものを見たかのように肩を竦めてやれやれと首を振る。

 そして一歩、カッと靴のヒールを鳴らして前に出る。

 それが二人に何かをする前兆に見えたのか、二人の前に三人の青年が庇うように立った。


「姉上。何をしようとしているのですか?」

 

 そう言うのはクインズの弟である、ヒルグリー・サディスティックである。ウィップに負けず劣らずの美形の持ち主であり、次期侯爵である。


「王子に危害を加えるなら、黙ってはいられないっ」


 そう言うのは騎士団長子息のソークロ・タラシである。身長190cmになる長身と、鍛え抜かれた肉体。そしてクインズの倍はあろう肩幅を持っている。


「……許さない。ダメ……」


 ボソリとそう言うのは魔法師団長子息のロープ・K・ウコイサである。垂れている瞳と、若干色素の抜けた髪が特徴である。


 そんな彼らを一瞥した後、クインズは軽くため息を吐き―――


「セバス」

「はっ」


 そう一言言って左手を差し出せば、彼女の専属執事のセバスがその手に手渡した。


 ―――ヒュンッ、パーンッ!!


 長い、調教用の鞭を。


 それを見たノーマは、ひぃ、と小さく悲鳴を上げる。


「ウ、ウィップ……」


 彼女とてバカじゃない。鞭なんてものに叩かれれば痛いなんて話じゃ済まないこと位分かる。

 それ故に、彼女は思わず隣にいるウィップに守ってもらおうと、無意識にウィップの手を握ろうとして――


「あれ?」


 その手は空を切った。

 そしてそれと同時にその場に響くスパーンッ! という鞭の音。

 彼女が再び鞭を手に持っていたクインズの方を向けばそこには、いや、そこにウィップはいた。

 

 膝をつき、痛みに悶え、耐えているかのような表情で。


「ねぇ、王子? 貴方は何をしたのかしら?」


 目の前の状況に呆然となるノーマを放って、クインズは底冷えする様な目をウィップに向けている。

 しかし、ウィップはそれに答えない。いや、答えられない。鞭で叩かれた痛みがまだ続いているからだ。


「答えろと、言ったのよ――私は!?」


 そして三度振るわれた鞭は、そのままウィップの背中を叩く。

 スパーンッ! と痛々しい音が響き、それと同時に――


「あ、あぁ……、い、いい! 気持ちいい!!」


 そんなことをウィップは言い出した。


「ウ、ウィッ「誰が感想を言えと命じたのかしら、豚ァッ!!」


 そして振るわれる鞭。そして――


「ブヒィィイイイイイ!!」


 響く、ウィップの嬌声。

 それをノーマは予想だにしていないモノを見るかのような目で見ていた。無理もない。誰がこんなこと予想できようか。


「ヒ、ヒルグリー! お願い、貴方のお姉さんを止めて!」


 ウィップを救うため、ノーマはクインズの弟であるヒルグリーに助けを求める。

 それに対して、ヒルグリーは任せておけと言わんばかしの顔でクインズの方に向かい――


「姉上! 何という事をしているのですか! まずは――」

 

 そう言って流れるように四つん這いになり尻をクインズに向け――


「――まずは、僕を踏んでからにしてください!!」


 そう、言った。

 そして間髪入れず、クインズが靴のヒールでヒルグリーの背中を踏み抜くかのような勢いで踏みつける。


「あぁ~~! じょ、女お、姉上ぇ~~!!」


 そして響くヒルグリーの嬌声。お前もか。


「まっっったく。あら、何かしら? 今度は貴方?」


 グリグリとヒルグリーを踏みながら鞭を振るうクインズ。二人の嬌声をBGMにクインズは目の前にいる男――ソークロを見る。


「ふん。私はそんなものに屈しはしない。観念するのだな」


 キリッとそう言うソークロは凛々しい瞳をクインズに向ける。それは正しく悪に立ち向かう騎士のそれである。


「あぁ、ソークロ! お願い、ウィップを助けて! ついでにヒルグリーも!」


 何気に酷いことを言いつつ、ソークロに期待の目を向けるノーマ。それに対してソークロは任せておけ、と返す。

 それを聞いて、ノーマは安心して思わず目を閉じ、ホッとする。これで大丈夫。そう思って再び目を開けると―――


「しゅごいぃぃぃいいいい!! ローソクしゅごいのぉおおおおお!!」


 目の前にはブーメランパンツ一丁になりポタポタとローソクの蝋を垂らされ嬌声を上げるソークロがいた。


「ふん。こんなのが将来の近衛騎士ですか。なんとだらしのない」


 他愛の無い。まさにそう言うかのような口調でクインズはそう言った。


「」


 ノーマはもう、声が出なかった。それでも…それでも何かに縋るモノを探すかのように周囲を見回す。


「ふごぉおお……!」


 その間に、ロープが体を亀甲縛りで縛られ、ギャグボールに目隠しをされて転がされていたが、もうその程度では動じなかった。動じようが無かった。



「―――何をしているのです」



 と、そこで凛とした声が響く。その声にノーマはもとより、クインズや涎を垂らしながらアへ顔をだらしなく浮かべている四人や周囲の野次馬も声のした方を向く。

 凛とした声の主はマゾール王国の王妃であった。


 こうなったら王妃にクインズを止めてもらおう。いくらなんでも王妃相手に鞭だのヒールだの蝋燭だの亀甲縛りだのするまい。

 そうノーマは考える。普通なら。

 しかし、王妃は普通ではなかった。いや正確には――


「全く。こんな日に騒々しい。そう思いませんか、貴方?」

「ブヒ。ブヒブヒブヒ」


 王妃がまるで当然のように乗っている存在―――四つん這いで平然と豚の鳴き声を上げる、王が。しかも恍惚の表情とかではない、凄まじく真面目そうな表情で。まるで周囲が三等身のギャグテイストなのに、こいつだけ八等身のリアルキャラのような違和感。


「何言ってんのか分かんねぇんだよ豚ァ!!」 


 そして当然のように振るわれる王妃専用高級鞭。クインズのより高い、まるで乙女のソプラノボイスを彷彿させる音が響く。


「ヴヒィイイイイイイイ!!」


 そしてそれから間もなく響く王の無駄のダンディーな嬌声。本当に無駄にダンディーボイスである。


「な、なんて素晴らしい鞭の振るい方…! 私でもあぁはなりませんわ!」


 何故か戦慄しているクインズ。本当に何故だ。


「クインズ。恥じることはありません私が導いてあげますわ」

「王妃様……!」


 謎の無駄な感動。


「さぁクインズ。私に続きなさい」

「はい」


 そう言って二人は目の前に並んで四つん這いになる五人にタイミングを合わせ鞭を振るう。


 ――ズパァンッ!!!


『『『『『ブヒィイイイイイイイイいいいいいいいいいいいい!!!!!』』』』』


 そして響く二つの鞭と、男達の嬌声五重奏。


「………」


 それを見て、ノーマはフラフラと覚束ない足取りでその場を後にする。だが、それに気が付く者はいなかった。

 



どうでもいい設定

マゾール王国

世界随一の強大国。代々ドMな王とドSな王妃の存在で成り立ってきた。これは初代の王と王妃が『王が暴走しない様に王妃がちゃんと手綱を握っておくこと』という言葉を二代目の王と王妃が『王妃は王を尻に敷いて調教せよ』という謎解釈をしたため。しかし、結果的に王は虐げられる悦びを得るため政を頑張り、王妃は普段のストレスをご褒美という体で王に発散するという奇跡の調和が起き、その結果マゾール王国は強大国に成長した。なお、二代目の遺伝子が強いのか、二代目以降王家では何故か男しか生まれないばかりかみんなドMである。


どうでもいい人物紹介

クインズ・サディスティック

侯爵令嬢。ドS。鞭、ヒール、蝋燭、緊縛、罵倒なんでもござれな未来の王妃であり未来の女王様。一応明記しておくが彼女自身は優秀である。ノーマに対してついつい強く罵と……注意をし過ぎてしまい、それがウィップの耳に入ったのが今回の発端。


ウィップ・マゾール

王子。ドM。特に鞭との相性が良い。容姿も成績も優れた正にザ・王子様である。…ドMでなければ。ただし、彼の名誉のために明記するが、彼は将来有望で期待されているし、本人もちゃんとそれに応えている。今回やらかしたのは最近叩いてもらえてなかったのでついやってしまった。それだけ。なお、本文をよく見ると分かるが彼は別にノーマに対して恋愛感情を抱いていない。クインズを糾弾したのは一応ノーマを悪く言っていたためである。こう見えてクインズ一筋である。

名前は鞭+マゾ


ヒルグリー・サディスティック

侯爵家長男。ドM。踏まれることに悦びを感じる。ドMなのに家名がSとはこれ如何に。クインズの弟。ドMになったのは王妃教育の一環でウィップを踏んで虐げていたクインズを偶々見て性的興奮を覚えた為。これ以降、彼は抜け出せぬ泥沼に嵌まることに。なに? 抜け出す気なんてないだろう? 知るか。念のため表記しておくが普段は優秀である。普段は。

名前はヒールグリの並べ替え。


ソークロ・タラシ

騎士団長子息。ドM。ローソクが至上であり至高でありジャスティス。彼がこうなったのは将来ウィップが王になった時に近衛騎士になることが決まった際、王となるウィップを理解すべきと考えその手の本を手に取った。そしてその内容がローソクものだったため、あまりの衝撃に新世界の扉を開けてしまった。本人曰く、尻から腰、背中、首の順に焦らす様に垂らされるのが良いらしい。それが無ければとても真面目でストイックな人物なのだが、まぁ、運命ってことで。

名前はローソク垂らしの並べ替え。


ロープ・K・ウコイサ

魔法師団長子息。ドM。根暗気味。縛られるのが最高な子。実は彼のドMは天性の物。ミドルネームのKはキクバン。

名前はロープ、緊縛(Kinbaku)、最高。


ノーマ・ルナッコー

男爵令嬢。ノーマル。別にウィップを狙っていたわけではない。少し夢見たりしたが、流石に現実が見えないほどではない。今回の件も、普通に仲良くなっただけのウィップにちょっと注意してもらえたら、と思って言ったに過ぎなかったりする。

なお、彼女はあの後自分の家に戻り、普通の人と普通に結婚し、普通の子供を三人産んで普通の人生を普通に歩んだ。ある意味一番幸せな子。

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