表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
172/227

実験的短編企画 榊の顛末書(三)

――――――――――――――――――――――――――――――――

                   十一月一二日

鷹司霧姫殿


                   氏名 榊平蔵

                 処理番号 二一六

        顛 末 書



 十一月十一日に発生した、日桜第一皇女殿下との無断外出の件につきまして以下の通りご報告いたします。


        記

1.状況や内容

 日時:十一月十一日二〇時頃

 場所:千代田区麹町四丁目



2.経緯

 夕食後にテレビをご観賞されていたところ、同日は製菓会社が定めた特定商品のキャンペーンの日でした。

 テレビCMをご覧になった日桜殿下が特定商品をご希望なされたため、購入のため外出しようとしたところ同行を希望されました。辞退を強くお願いしたのですが聞き入れていただけませんでした。



3.原因

 特定商品は日桜殿下にとり陛下、皇后陛下との思い出の品であったようです。

 両陛下のことをお想いになられたことで自らの手に取りたいというお考えが生まれたものと推察されます。


4.再発防止策

 今回の件で日桜殿下の好みについて知ることができました。

 今後もヒアリングを続け、日桜殿下の個人的なお考え、趣味嗜好を知ることで特定品を事前に用意し、軽率な外出をお控えいただけるよう努力いたします。


                       以上

――――――――――――――――――――――――――――――――



――――――――――――――――――――――――――――――――

                   十一月一二日

鷹司霧姫殿


                   氏名 榊平蔵

                 処理番号 二一七

        顛 末 書



 十一月十一日に発生した、日桜第一皇女殿下の密着の件につきまして以下の通りご報告いたします。


        記

1.状況や内容

 日時:十一月十一日二〇時三〇頃

 場所:千代田区麹町四丁目付近のコンビニエンスストア



2.経緯

 ※処理番号二一六の顛末書を参照のこと。

 特定商品を購入するべく御所より最も近く、また人目の少ないコンビニエンスストアを目指していました。



3.原因

 外出を希望された日桜殿下に同行していただいたところ、風が強くなり気温が低下していました。上着をお貸ししたのですが、それだけでは体調を崩される懸念があったので早急に御所へ戻るべく、やむを得ずお抱えした次第です。



4.再発防止策

 快晴ではありましたが気温が低く、風が強かったことが挙げられます。

 日桜殿下の体調、体力も考慮して外出を極力控えていただくよう具申いたします。

 それがかなわない場合はコートの着用やマフラーの使用など季節に配慮したものを選択いたします。


                       以上

――――――――――――――――――――――――――――――――




 コンビニの監視カメラには不鮮明ながら日桜と榊平蔵を映しだされている。

 店舗内のカメラが買い物を終え、外に出た二人のやり取りを記録していた。

 私服にだぶだぶの大人用コートを羽織った日桜と、スラックスに白いシャツという季節的には肌寒い装いをした榊が言葉を交わしている。

 

 白いビニール袋を掲げてみせる日桜に、榊は苦笑いのまま嘆息し、小さな体を抱きかかえた。

 そこまではいい。状況的にはあまり問題にならない光景なのだが、日桜はごそごそとコンビニの袋から赤と黒のパッケージを取り出し、包装を破いて細長いプレッツェルにチョコレートをコーティングしたお菓子の端、その片一方を口に咥えて榊へと突き出した。


 榊は苦笑いを渋面に変え、少し考えた様子から日桜の鼻を摘まみ、プレッツェルを口に咥えるという行為をやめさせた。


「殿下あの……これは?」

「……〇っきーげーむ、です。なかむつまじいものがやると、ききました」

「で、殿下」


 事情聴取を買って出た鷹司は空を仰ぐ。

 まさか、日桜殿下の口からその言葉が出てくるとは思いもしない。


「……でも、ことわられ、ました」

「そ、そうですか」

 

 しゅん、とする日桜に鷹司は安堵の息を漏らす。

 現状唯一の救いは榊平蔵が幼女性愛者ではないことだ。


「いったい誰だ……」


 日桜に聞こえないように小さく愚痴る。

 いかがわしいゲームを教えた人間にも顛末書を書かせてやる、と心に誓うのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ