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エピローグ

 

 白が見える。

 

 重い頭、憂鬱になりそうな倦怠感、それに動かない体。

 視界に入るのは何本も伸びる透明な管と、樹脂製の容器に満たされた液体。

 

 思考が定まらず 眼だけが泳ぐ。この天井は近衛の医務室だろうか。今に至るまでが雑然と過っては消える。

 自分がどうしてこうなったのか、記憶が次第に呼び起こされた。


「そうか……俺は……」


 最後に見た光景はノーラの顔か、あるいは騎士王が振り下ろした風の剣か。

 あの状況から勝てたとは到底思えない。自分がこうして生きていることは騎士王の加減ということになる。

 いや、苦しめというメッセージなのかもしれない。


「……すまな……い」


 自分の中で何かが崩れ、心に空虚が広がっていくように思えた。

 小さな後姿を追い求める様に手が伸びる。戻らないと分かってはいても指が動いてしまった。


 あれからどれだけの時間が経過したのか。

 彼女はもう遠い異国の、かつて故郷だった地へといってしまったのだろうか。


「うっ……」


 起き上がろうと腹筋に力を入れたところで強烈な吐き気と、左腕に激痛が走る。

 眩暈に胃の蠕動、天地がひっくり返ってしまうかのような錯覚に陥り、意識が消える。


 また、どれくらいの時間が経ったのだろう。

 顔を触るなにかを感じ、目を開ける。


「なんだ、もうお目覚めか?」


 覗き込んでいたのは鷹司。手にはタオルと点滴の樹脂バッグがある。


「ふ……く、ちょう」

「水か? せっかちな奴だな。ほら……」


 動かない体を鷹司が引っ張り、ようやく上半身を起こしたところで吸い飲みを差し出してくれる。


「慌てるな。ゆっくりだ」


 ぬるま湯が喉を通って胃に落ちる。

 乾いた地面を潤す様に、水分が体に染み渡る。


「ありがとうございます」


 十分に飲んだところで声が戻ってくる。眩暈も吐き気もない。

 体を見れば包帯と医療用のテープでぐるぐる巻きにされている。

 特に左胸と腕は引き攣ってうまく動かせない。


「さて問題児、事の顛末を聞く元気はあるか?」


 点滴の樹脂バッグを交換しながら鷹司が目を向けてくる。

 元気なんてない。

 しかし、聞かなければならなかった。


「……申し訳ありません」

「なんだ、私はまだ何も言ってないぞ」

「それは……失礼しました。手間が省けるかと思いまして」


 どう取り繕ってみようもない。

 自分がしたことの重大さは知っている。

 もとよりその覚悟だったはずなのに、今は苦しくて仕方がない。


「榊、貴様がしでかしたことは二つの重要事項に該当する。一つは外交上の重要人物へ危害を加えたこと。二つ目は皇室経済法への抵触だ。近衛副長として裁きを下さねばならん」

「覚悟はできています。如何様にも処分を」


 騎士王と戦い、生きていることが問題。

 こんな治療などせず、その場で殺してくれた方が後腐れがない。

 そう考えていたのに、


「謹慎処分だ」


 鷹司の口からでたのは意外なものだった。

 なぜ、そう聞き返す前に言葉を続ける。


「今回の独断専行は近衛全体としても看過できるものではない。だが、それを知り得るのは一部だけ。どこの阿呆かは知らんが、入念な下準備が功を奏した。無暗に取り沙汰することもあるまい」

「そ、それは……それでは……!」


「騎士王殿からの嘆願もある。無下にはできまいよ」

「くっ!」


 鷹司の言葉に歯噛みをする。結局はそれだ。

 勝てないばかりか、情けまで与えられてしまう。


「加えて貴様のために殿下は書状をお書きになった」

「……えっ?」


 思わぬことに目が点になる。

 殿下、それに書状のことなんて知らない。


「ふっ、貴様の驚いた顔は見ものだな。普段の小生意気な面よりは幾分マシだ」

「どういうことですか? 書状? 俺のため?」


「そうだ。殿下は次の渡欧の際、欧州連合代表と会談をされる。貴様の助命を条件にな」

「……殿下が、どうして」


 混乱に拍車がかかる。

 騎士王との件は殿下が知り得るはずがない。


「上手くやったつもりだろうが存外に脇が見えていない。貴様の動向は殿下と優呼に筒抜けだったぞ。それに、私にもな」

「ちょっと待ってください」


 頭を振る。

 鷹司はともかく殿下と裂海にも……バレていたということが信じられない。

 どこで、どうしてという疑問と一緒に、あの間延びした笑顔が浮かぶ。


「貴様を心配する奇特な人間も、世の中にはいるということだ。治療をしてくれた伊舞さんや直虎に礼を言っておけよ。ああ、血を提供した宗忠にもな」


「……ですが、どうやって」


「貴様が策謀をするときは露骨に行動が変化する。妙に優しくなり、我儘を許すそうだな。罪悪感か、贖罪なのか。どちらにせよ分かりやすいということだ。教えてやる、貴様が気を失ったそのあとを……」


 鷹司の言葉に耳を疑う。

 優呼の乱入、殿下の書状。


「心配されているということだ。これまで貴様が成し遂げてきたことの証でもある。殿下のことは、私も驚いたがな」

「どうして止めてくださらなかったのですか?」


「できればしている。しかし、事前であっても難しかっただろうとも思う。こればかりは私でもお止めできない」

「……ご冗談を」


「冗談でこのようなことは言わん。禊までしたのだぞ?」

「禊って……あの、水を被るやつですか?」

「ほかに何がある」


 季節はもう師走。こんな中で冷たい水を被れば風邪を引いてしまう。

 禊なんて前時代的で意味のないことを、それも俺のためにするなんて――――。

 身を切る様な、言い知れない憤懣や焦燥が胸にこみ上げてくる。


「ふっ、これにはなぜ……と聞かないのだな?」

「聞いてほしいのですか?」


「いや、貴様のことだ。気付いてはいても目を逸らし続けてきたのだろう。まったく、卑怯な奴だ」

「副長はご自分の初恋を覚えていらっしゃいますか?」


「またそれか……」

「ご存じの通り、私の初恋は小学校の担任でした。ですが、今となっては過去形であり思い出話でしかありません。担任がどのような顔をしていたのか、なぜ好きになったのかすら覚えていません」


「殿下もそうなると考えているわけだな」

「前にもお話ししたかもしれませんが、私などその程度で良いのです。殿下に恩返しさえできれば……」


 今でも思い出す。

 欲を欲として肯定してくれた、あの瞬間を。

 後ろ暗さを取り去り、そのままで良いといってくれたあのちび殿下に報いたかったからだ。


「しかしだ。その想いが、殿下を動かした。決して他者ではたどり着けない場所に貴様はいる」

「分不相応な上に軽率です。副長もそうお思いでしょう?」


「そうだな。しかし、殿下にも人としての幸せを得てほしいとも思う。誰かを想うことも許されないのならば、悲しいではないか」

「とても副長のものとは思えないお言葉です」


「近衛に来てから約半年、貴様が成したことは他人が真似できることではなかった。だからこそ、こうした結果となった。その身にある信、努々忘れるな」

「……分かりました」


「それからな……」

「はい?」


 鷹司にしては珍しく迷うような、躊躇うような仕草をする。

 訝しんでいると懐から小さな紙袋を取り出した。


「殿下は禊のお陰で臥せっていらっしゃる。薬を届けろ」

「私でよろしいのですか?」


「心配するな。皇族と近衛では問題がありすぎて現実にならん。あと一年もすれば貴様にも見合い話がくるだろう。どこぞの武家の娘と一緒になれば殿下も諦めてくださる」

「承知しました」


 袋を受け取り、そっぽを向く上司に少しだけ笑った。


「榊……」

「まだなにか?」

「あまり心配をかけるな」


 鷹司の背中を見送ってから紙袋を振ってみても、なにも音なんてしない。

 予想通りではあるものの副長殿は甘い。いや、副長だけではなくみんなが甘過ぎた。


「どんな顔をして会いに行こうか……」

 

 心残りは一つ。

 それでも俺の口から言わなければならない。

 

 点滴の管を引き抜き、ベッドの脇にあった上着を引っ掛けて立ち上がる。

 力の入らない体でも、足は御所を向いていた。

 


     ◆



「――――以上が今件の顛末となります」


 ベルギーの首都、ブリュッセルにある欧州連合の本部で騎士王ジョルジオ・エミリウス・ニールセンは深々と頭を下げる。


「ご苦労でした。面倒をかけましたね」

「勿体ないお言葉です……」


 迎えるのは欧州連合理事にして現議長、金髪翠眼、やや枯れた印象はあるものの枯葉色のスーツを身に纏ったオットーハイム伯爵。

 今回の騎士王派遣の責任者であり、ルーマニアにおける共和国暗躍を見抜いた張本人が直接労いの言葉を口にした。


「ルーマニアから提示された条件は守ったわけですから、問題はありません。旧トランシルヴァニアの遺産さえあればエレオノーレの身柄も必須という訳ではないでしょう。現に金を渡してからは何の音沙汰もありません」


「いえ、それについては私の力が及ばず、申し訳ありませんでした」


「これでも十分です。ルーマニアへ与えても共和国へ吸収されるだけですから。それに、私にとってはこちらの方が重要です」


 オットーハイムの手にあるのは日桜からの書状。

 そこには日桜が現帝の名代として会談に応じることが記されていた。


「欧州連合と日本、いえ、極東の経済問題は深刻です。これを是正しなければ欧州に、大英帝国に生き残る術は残されていません。このような小細工一つを見逃すだけならば、安いものです」


 オットーハイムが指先で突っついたのは乳白色の陶器。

 中からこぼれた白い粉がテーブルに広がる。


「誰の策かは知りませんが、人骨を燃やせば不純物を含んで変色します。このように真っ白にはなりません」

「……」


「聖ジョージ卿も、まさかこれが本物の人骨とお考えではないでしょう。エレオノーレの身柄だけで日桜殿下、朋友の愛娘が筆をとるとは思えません。一体何と取引をなさったのですか?」


 オットーハイムから向けられた視線に寒気を覚える。

 騎士王をして策謀では彼に及ばない。

 それでも口には出来なかった。まだ見ぬ幼子を世界の波の中へ落とすわけにはいかない。


「如何にオットーハイム伯爵とはいえ、私も約束がございます」

「顔の傷……刀ではなさそうですね」


 オットーハイムの指摘に騎士王はわずかに顔を背ける。

 彼の頬には一度は顎が砕けた痕が残っていた。


「いいでしょう、今回は不問とします」

「失礼します」


 敬礼をし、議長室を出る。

 美丈夫の口から洩れる溜息は安堵か、あるいは保身か。


「私には荷が重い……」


 騎士王の二つ名など本当の権力の前では意味がない。

 オットーハイムが見据えているのは世界の構図そのもの。

 自分など駒に過ぎないことは分かり切っていた。


「ジョルジオ様!」

「よぉ、ジョージ」


 嘆息をしながら長い長い回廊を歩いていると、見知った影が出迎える。


「ロメロティア、ナイアンテール。二人ともこんなところでどうしたんだ?」

「日本からお戻りになったと伺いましたので、お迎えに……」

「オレはコイツの御守り。毎日毎日ジョージジョージって煩くてよ」

「心配をかけたね。仕事は終わったよ」


 感涙に咽ぶ副官ロメロティア・イクタリアと護衛役を自称するナイアンテール・ダウケントに、騎士王も頬を緩めた。


「っ! ジョルジオ様、御顔に傷が」

「ああ、これかい? 少し、ね」


 隠す様に顎を撫でる騎士王にロメロティアが手を伸ばす。


「へぇ、ジョージの顔に当てるなんざ相当だ。鷹司とやったのか?」

「いや……」


 興味津々といった様子のナイアンテールに騎士王は極東で出会った青年を思い出す。

 策を巡らせ、劣る力を懸命に補い、あまつさえ左腕を犠牲に迫ってみせた姿は敬服に値する。

 同じことができるかと問われたら怪しいものだ。


「青年だ。年の頃は……ロメロティアよりは上だろう。ナイアンテールと同じくらいに見えたな」


 その言葉に副官と護衛役は眉を顰める

 片方は不満を、もう片方は好奇心を覗かせ、


「名をお教えください。ジョルジオ様に代わり、私が天誅を!」

「止めとけよ。ジョージに一発食らわせる奴だとしたら、オレの出番だろ?」


 案の定、騒ぎ始めた。


「ここでは勿体ない。食事をしながらゆっくりと話そう」

「ジョルジオ様と一緒なら喜んで!」

「んだよ、勿体ぶるなって」


 懐かしいやり取りに破顔しながら、娘にも等しい二人を連れて騎士王は歩く。

 彼と、再び相対しないことを祈らずにはいられない。



     ◆



 重たい体を引きずりながら御所、殿下の私室へとたどり着いたのは東の空が明るくなり始めた頃。

 歩いている間にノーラのことをどう説明しようか悩んでいたのに、考えは定まらないまま至ってしまった。


「取り繕うものなんてないんだが……」


 どう説明したらダメージが少ないのか、そればかりに気を取られている。

 翻っては、それが自分への言い訳なのだと気付き、自己嫌悪に陥ってしまう。


「ありのままを話すしかない」


 自分へと言い聞かせ、静かに襖を開ければ行燈に照らされて眠る殿下の姿があった。

 病人への配慮もできず来てしまったことを悔いながら、起こすわけにもいかず、枕もとへと座る。

 上掛けからでていた手をとれば、少し熱かった。


「申し訳ありません」


 今は快復するようにと祈ることしかできない。

 歩いた疲れもあって、そのままウトウトしてしまう。


「……さかき、さかき」

「うっ……」

「……だいじょうぶ、ですか?」


 体を揺すられ、起きてみれば白い襦袢姿の殿下がいる。

 心配そうにのぞき込まれるとは、役割が逆になってしまった。


「し、失礼しました。殿下こそ、お身体は如何ですか?」

「……はい」


 いつもの様に頷いてくれる。

 首に手を当てれば、まだ少し熱っぽく感じた。


「殿下、ひとまず床へ。まだ本調子ではないようです」

「……しんぱい、いりません。さかきこそ、むりはだめ、です」


 殿下はあろうことか俺を床へと入れようとする。

 そんなことをしては一大事どころか、せっかく拾った命がなくなるので丁重にお断りしたい。


「分かりました。せめてこれをどうぞ」


 寒くないようにと近衛服の上着を掛ける。

 話しをしようと正座をすれば、殿下もなぜか同じ姿勢をとった。


「殿下にお話しがあります」

「……なんですか?」


 意気込み、先ほど考えていたことを口にしようとするのだが、なかなか出てこない。

 殿下の瞳に映る自分が、ひどく情けなく思えて躊躇われた。


「……」

「……さかき?」


 首を傾げる。

 ダメだ。これではいけないと、意を決する。


「殿下、ご迷惑をお掛けしました」

「……めいわく、ですか?」


「私のために筆をとられたと伺っています。独断専行までしてこの体たらく、申し開きもできません」

「……」


「それに、ノーラまで……」


 事実を言葉にすることがこんなにも苦しいとは思わない。

 今まではどんな形であれ、事を成してきた自負があった。

 

 なのに、今回はそれがない。策は破られ、ノーラも奪われた。

 残ったのは苦いものだけで、今の俺にはそれを受け入れるだけの余裕がなかった。


「……さかき」


 ふわり、と柔らかいものが顔を撫でる。

 それが殿下の手であり、身体。

 抱きしめられているのだと気付いたのはしばらくしてからだった。


「申し訳……ありません」

「……くいることは、ありません」


「ですが、私のために……書状を……」

「……よいのです」


 背中をさする手に堪えていた涙が出る。

 自分が情けなく、不甲斐ない。無力感を噛み締めることしかできない。


「ノーラも助けることができませんでした。俺は、何一つ……」

「……だいじょうぶ、です。あなたは、なにもうしなっていません」


「殿下」

「……ときには、ちからおよばぬことも、あるでしょう」


「ですが、それでは……」

「……わたしが、まもります。ですから、そんなかお、しないでください」


 ひざを折った殿下の顔が目の前にある。

 吸い込まれそうな瞳、色素の薄い唇。

 柔らかい頬の下には細い首と、真っ白な素肌がある。


「……さかき……いえ、へいぞう。わたしを……」

「日桜殿下」


 のけぞる様に押し倒され、艶やかな髪が顔にかかる。

 擽るような息遣いが顔にかかる。


「お二人とも」


 声が聞こえた。

 それも、聞き知ったもの。


「盛り上がっているところ申し訳ありませんがこれ以上は私、看過できません」

「えっ?」


 横を向けば、そこには近衛服の白髪の少女がいる。


「ノーラ?」

「はい。貴方が命を懸けて救ってくださったエレオノーレです。お忘れですか?」


 引きつった笑みを浮かべたノーラがそこにいた。

 幻覚、ではない。その証拠に殿下にも見えている。


「……のーらちゃん、はやくないですか?」

「日桜殿下こそやり過ぎです。キスまでならと思いましたが、それ以上はダメです」

「……まだ、してません。さかき、つづきです」


 ちび殿下が再び迫ってくる。

 雰囲気という魔法が無くなった今、ちび殿下の唇などタラコ以下だ。


「ストップです」

「……むぐ?」


 顔を手で押し返し、


「ノーラ、手伝ってくれ」

「はい」


 なぜか喜々とするノーラに手伝ってもらい、ちび殿下を引きはがす。

 ふう、今のは危なかった。


「……のーらちゃん、もうすこしでした!」

「はい。ですから止めました」


「……せんざいいちぐうの、ちゃんすでした!」

「だって、ヘイゾウさんは私のために傷付いてくださったのです。それを横取りするのは皇族にあるまじき行為ではありませんか?」


 今にも掴みかからんばかりの二人に理解が追い付かない。

 騎士王に負けた。

 命があるのは殿下の書状があったから。ならば、彼女はどうして。

 俺の視線に気づいたのか、二人は頷き合ってこちらへ来る。


「私がここにいられるのはヘイゾウさんと日桜殿下のおかげです。貴方が道を示してくれなければ、私は騎士王と一緒に行ったことでしょう。そして、殿下の書状がなければ選択肢すらありませんでした」

「……ふたりぶん、おねがいしました」


 左右の腕を引っ張られ、起こされた。

 両手には違った二つの柔らかさと温もりがある。


「私はどこにもいきません。この国で生きていきます」

「そう……か。そうなのか」

「はい」

「……よかったです。さかきも、のーらちゃんも」


 色々な感情が綯交ぜとなって言葉が出てこなかった。


 それでも、二人の姿に想わずにはいられない。

 このままではいられない。

 今のままではいられない、と。



 

 了


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[一言] この二人を守るためにも強くならないと…ってこと?
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