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戦闘

 霧の奥から姿を現したのは、大型の爬虫類だった。

 頭から尻尾の先まで二メートルほどもあるトカゲ型のモンスターで、表皮はまがまがしい紫色に黄色の斑点が混じったまだら模様である。


 その大トカゲが、周囲から全部で十体ほど、包囲してにじり寄るように冒険者たちに近付いてくる。


「ポイズンリザードだね。結構数多いよ~?」


 そう言うアディーラは、どこか楽しそうだ。

 二振りの剣を構え、うち一振りの刀身をぺろりと舐める。


「引きずり倒されたら、群がられて終わりだ。油断はするなよ」


 大盾と剣を構えたウィンディは、慎重に、しかし冷静に言葉を発する。


「ああ、こいつら見た目以上に、動き速いし──な!」


 リザレットが、引き絞った大弓から矢を放った。

 矢は瞬く間に、彼女らを取り囲んでいた大トカゲのうちの、一体を貫く。


 トカゲの片目に命中した矢は、矢じり付近までが深々と突き刺さった。

 その途中に脳があったため、そのトカゲは即座に動かなくなった。


 それまで慎重に包囲を狭めてきていたトカゲたちは、飛び道具で仲間が倒されたのを見てか、みな一斉に足並みを早めた。

 その大きな図体からは想像できないような驚くべき速度で、冒険者たちに向かって這い寄ってくる。


 だがさらに、そのトカゲの一体が、リザレットが素早く放った二の矢ではね飛ばされる。

 矢はトカゲの頭部を深々と貫いており、この一体もただちに絶命した。


「フェルトは見てていいぜ。お前にばっかり活躍されたんじゃ、オレたちの沽券こけんに関わる」


 リザレットは三の矢を背の矢筒から引き抜き、剛弓ごうきゅうにつがえながら、そう口にする。

 彼女の一連の射撃動作は、半ば芸術的なほどに洗練されていて、流麗であった。


 しかしそうであっても、大弓における射撃は、連射と呼べるほどの速度で矢を放てるものでもない。

 三射目を放つ前に、大トカゲのうちの三体が、リザレットの間近まで迫っていた。


 それでもリザレットは焦らない。

 正確無比な動きで三射目を放ち、迫るトカゲのうちの一体を、前までの二体と同様に即死させた。


 だが残る二体への攻撃は、間に合わない。

 トカゲたちは、少女の足へ食いつかんと大口を開け──


 ──そのとき、トカゲと射手との間に、白い城壁のごとく割り込んだ者がいた。


「させるものか!」


 白の大盾とプレートアーマーに身を包んだ金髪の少女が、トカゲたちの突進を受け止めた。


 そしてその少女──ウィンディはそのまま、トカゲのうちの一体に剣を突き立てる。

 剣はトカゲの背中に突き刺さり、その一撃で絶命させることはなかったが、ウィンディがさらに鋼鉄製のブーツでトカゲの頭部を踏み潰したことで、その一体もすぐに動かなくなった。


「おー、怖え女」


「リザには言われたくないな。ともあれ、残る一体も私が片付ける。リザはアディの援護を」


「オーライ。──ただ、アレに援護がいるかね」


 そう言ってリザレットが視線を向けた先──そこでは、獣人の少女が二振りの剣を巧みに操りながら、多数の大トカゲを相手に大活劇を繰り広げていた。


「あははっ、遅い遅い! そんなんじゃ、ボクには噛みつけないよ」


 アディーラは踊りを踊るようにステップを踏み、前後左右から迫るトカゲの牙をかわしながら、両手の二振りの剣を縦横無尽に振るっていた。


 アディーラの周囲には、全部で五体の大トカゲがいる。

 しかしそのうちの一体はすでに、地面に血だまりを作って動かなくなっており、残る四体も多かれ少なかれ体に傷を負っていた。


 アディーラの剣は、必ずしも、一撃で致命傷を与えるような強力なものではなかった。

 しかしその尋常でない手数で、次から次とトカゲの血しぶきを舞わせてゆく。

 トカゲたちは徐々に、しかし確実に生命力を奪われていった。


 そして、そのうちの一体の胴を、横合いから矢が貫く。

 そのトカゲは悲鳴をあげ横転し、しばらくして動かなくなった。


「あーっ! 横取りすんなよリザぁ! そういうことしてると乳揉むよ!?」


「別にいいだろ、誰が倒したって。あと、やらなくたって揉むだろお前」


「まあね~、よく分かってるじゃん」


「遊びじゃないんだぞお前ら! 少しは真面目にやれ!」


 そうお互いにキャンキャン言いながらも、あっという間の勢いでモンスターたちを蹴散らしてゆく三人の少女たち。


 今度はフェルトのほうが、ぽかーんとする番であった。


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