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2

 香との出会いは、小学四年生の頃。香が徳島から転校してきたことから始まる。転校してきた当時、香は、私のいる「仲良しグループ」には入らなかった。だから、最初の頃はほとんど話はしなかった。でも、私の通った小学校は、小規模だったから、毎日、顔は合わせていた。「おはよー」と言い合う位の仲ではあった。好きでも嫌いでもない。そんな「知り合い」の関係だった。

 小学校卒業近くになると、グループも変わってきて、私は、時々香の家に遊びに行くようになった。「仲良し四人グループ」の一人として。いつから私と香を含む、四人グループができたのかは覚えてない。分からないと言った方がいいかな。「仲良しグループ」っていうのは、本当に、いつのまにか、流れでできていくモノだと思う。

 中学校に入学して、初めて香と同じクラスになった。そして、同じ陸上部に入った。香と二人で話すようになったのは、この頃からだ―

 今日はここまでだった。

 面会終了時刻がきたので、私は、名残惜しい気持ちを抱いたまま、病室を出た。

「また、来るから」そう言ってから、病室のドアを静かに閉めた。閉めて、私は額を、こつんとドアに当てた。そのまま数秒、ドアの向こうの香を思った。他の人に見られないうちに、ドアから離れて、私は下の階に降りようと、エレベーターの方に向かった。一階に着く前に、【2】のランプが点灯した。もうすぐ誰かが乗り込んでくるのが分かった。乗ってきたのは石詰先生だった。

「先生」

「お、敬ちゃん!」石詰先生は、たくさんのカルテを片手に持って、私を見て笑った。

「ちょっと、これを出してこなくちゃいけないんだ」石詰先生は忙しそう。苦笑いをして、疲れを隠した。

「私はもう帰りますし。先生、お疲れ様です」エレベーターから出て、廊下で少し話した。先生がきいた。

「今日は布瀬さんに会いに来たの?」

「ええ」私は微笑んで答えた。

「お昼の一時から四時の間。あんなことしたのに、香のおばさんが話し、つけてくれて、会えるようにしてくれたんです」

「そっかぁ」石詰先生の顔がほころんだ。「良かったなぁ。まあ、ここだけの話、婚約者も、どうかと思ったし、俺もね」

 私は何とも言えなくて、下を向いて少し笑った。

「評判悪いですねぇ、見多さん」

「まあ、隠し事は、あんまり好い気はしないのは、当然だろう」私は、話がくい違っていることに気付いた。

「何のこと?」先生は、あれ? という顔をして、「いらぬことを言っちゃったかな」という感じで、目線を泳がせて、む〜っと顔を曲げた。「これ以上きかないでくれ」というサイン。問い詰めるのは、かわいそうだと思ったけれど、私はしつこい性格だ。きかずには帰れない。

  


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